【完結】ままならぬ僕らのアオハルは。~嫌われていると思っていた幼馴染の不器用な執着愛は、ほんのり苦くて極上に甘い~

Tubling@書籍化&コミカライズ決定

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すれ違い

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 内科検診があった日の翌週、午前授業が終わり、雫と僕は歓喜の声を上げる。


 「終わった――」

 「午前授業は嬉しいね。真司はこれから部活?」
 

 隣で鞄に色々と詰めている友人に話しかけると、パッと顔を上げて少しはにかみながら「ああ、試合が近いからな」と返ってきた。

 野球が凄く好きなんだな……あまり表情が動かない真司だけど、嬉しい時、楽しい時なんかはほんの少し頬を赤らめてはにかむ、というのが観察していて分かった。

 そういうところは可愛いんだよね。

 好きな事に夢中になれるのは素敵な事だ。

 僕も乙女ゲームをプレイしている時は本当に楽しくて幸せだし。


 「頑張れ!」

 「ああ、サンキュ」

 「あぁああああ!!」

 「「?!」」


 僕と真司がそんな話をしていると、雫が突然発狂し始め、目には薄っすら涙を浮かべていた。

 
 「ど、どうした、雫?!」

 「見ろ、亮…………せっかく午前授業なのに、乙春がぁ……ッ」

 「?」

 「公式HPに……システムメンテナンスって…………」


 なんてことだ…………帰ったらやりたいと思っていたのに……僕は雫と共にショックを受け、机に突っ伏した。

 時間のある時に限ってこういう事が起こるんだよね。

 隣りで真司が立ち上がったので挨拶しようと顔を上げると、真司が僕の頭をポンポンとしてきたのだった。


 「亮、ドンマイ」

 「む……慰めになってない」

 「ふはっ」


 いじける僕の顔を見て、真司が吹き出す。

 滅多に見られない笑顔に、思わず心臓がドキリとしてしまう……そんな顔も出来るんだ。

 こういうギャップに女子は弱いんだろうな。

 真司は身長も185cm以上はあるし、鍛えられた肉体に目も切れ長でキリリとしているから、黙っていてもモテそうなものだ。

 165cmもないちんちくりんな僕とは雲泥の差――――僕の成長期はもう終わってしまったのだろうか……。

 そういや、結人も大きくなっていたもんな。
 
 この前階段で駆けつけてくれた時は、眼鏡をかけ直してくれた手がとても大きくなっていて驚いたものだけど。

 小学生の時は体つきも同じくらいだったのに。


 「そうだ、雫。ちょっと付き合ってほしいんだ」

 「亮の頼みを断るわけないだろ」

 
 真司に挨拶を済ませて立ち上がると、雫に付き合ってもらい、急いで生徒玄関口へと行く事にしたのだった。

 皆が帰っていく姿を眺めながら、結人がやってくるのを雫と2人で待っていた。

 階段で助けてくれた時のお礼を言いたかったけど、なかなか顔を合わせる機会がない。

 今日は登校していたし、ここなら絶対にアイツが通るはずだから、ここで待っていたら確実に会えるはず。


 「わざわざお礼を言う為に待たなくても……今度会った時でいいんじゃね?」

 「そうしたかったんだけど、全然会わないし、このままだと一カ月とか余裕で経っちゃいそうで。それになんだっていいんだ、話せるキッカケがあれば」

 「そこまでして前みたいに仲良くなりたいん?」

 「うん……中学受験したのは夢の為なんだけど、そのキッカケをくれたのもアイツだから」


 僕は雫ならいいかなと思い、自分の夢について話す事にしたのだった。

 僕の母親と結人の母親は親友同士で、生まれた時から一緒に育ってきた僕たち――――しかし幸せな日々は突然終わりを迎える。

 結人のお母さんに癌が見つかったのだ。
 
 発見が遅かったのもあり、おばさんはあっという間に儚い命を散らせて逝ってしまった。

 それが結人が小学5年生の時……ずっと泣いてばかりの結人を見て、自分の無力さを痛感した僕は、母さんに医療の道に進みたいと宣言する。

 そして母さんは、僕に1つ条件を出した。

 中学は受験し、勉学に励む事。

 僕は結人のように悲しむ人を少しでも救いたくて決意をし、彼と別の中学校へ行く事を決めた。

 その間、結人と学校は離れなければならなかったけれど……もしアイツの家族に何かあっても、今度は僕が助けたい。

 もちろん結人のことも。

 もう絶対あんな悲しい想いはさせたくないんだって、胸に誓ったんだ。

 どんなに自分の顔で揶揄われ、いじめられても通い続け、母さんは偏差値が高い高校なら自分で選んでいいと言ってくれたので、結人が受験する高校をおじさんに聞き、この高校に来た。

 こんな話、アイツには出来ないけど……雫は僕の話をひとしきり聞いて、黙り込んでしまう。


 「雫?」

 「…………亮~~~おっまえ、めちゃくちゃいいヤツだな!!俺、すっげー応援してるから!」

 「そ、そう?ありがとう」


 雫が僕の両肩を掴みながら、半泣きでそう伝えてくる。

 絶対バカにするような人間じゃないって思ってたけど、やっぱり雫には話して良かった。

 自分の夢を共有出来る友達がいて、それを応援してくれるなんて幸せだなぁ。

 そんな事を思っていると、僕の頭上から低くてほんの少し不機嫌な感じがする幼馴染の声がしてきたのだった。


 「おい……イチャつくならよそでやれ」


 頭上を見上げると、結人がこちらをジロリと睨んでいる。

 
 「あ、結人の幼馴染ちゃんじゃーん!お友達とイチャついてたの?僕も交ぜてほしいな~~」


 結人のすぐ後ろからやってきた駆流と呼ばれていた友人が軽めに話に入ってきたので、思わず「違います!!」と全力で否定してしまう。

 結人の友人は真ん中分けで全体的に髪が長く、薄い茶色の綺麗なサラサラヘア……よく見たら物凄く女子にモテそうだった。

 背も高いし結人と二人で並んでいるとモデルが歩いている感じで、思わず目を引いてしまう。

 凄いなーと見惚れていて、気付けば結人はズンズン進んで行ってしまい、校門の外まで慌てて追いかけた。
 
 
 「結人、待って!」


 声をかけても全く止まってくれる気配がなかったので、何とか止まってもらおうと彼の腕を握った瞬間。

 ――――パシッ!――――

 鈍い音と共に僕の腕は払い退けられ、結人はゆっくりとこちらを振り向き、吐き捨てるように乱暴な言葉を投げつけてきた。


 「気安く俺に触るな……!」

 「ごめッ」

 「…………チッ」


 苦々しい表情を見せながら舌打ちし、背中を向けて去っていく――――せっかく距離が縮まってきたように感じた存在は、またも振り出しに戻ってしまったかのように遠ざかっていった。

 触られたのが嫌だったのかな。

 仲良くない人間に触られるなんて嫌だよね……それとも僕だったからなのかは分からない。

 でもどこか浮かれていた気持ちが木っ端微塵に砕け散ってしまい、そこから動けなくなってしまう。

 そこへ先ほどの駆流という友人と雫がやってきた。


 「あれ――結人は?何かあった?」

 「僕が怒らせてしまったみたいで……」


 なんだか結人に関しては何をどうやっても上手くいかない。

 自分が情けなくなってしまい、涙が溢れてきてしまう。


 「亮……」

 
 僕は校門近くだというのに、一目もはばからず雫の肩に顔を埋めて泣いてしまい、声を殺して泣く僕の背中を雫はずっと摩ってくれていた。

 ようやく涙がおさまった頃には結人の友人は姿を消していて、僕は雫に励まされながらなんとか帰宅の途に着いたのだった。
 
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