【完結】ままならぬ僕らのアオハルは。~嫌われていると思っていた幼馴染の不器用な執着愛は、ほんのり苦くて極上に甘い~

Tubling@書籍化&コミカライズ決定

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初めての気持ち ~駆流Side~

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 生まれた時からお金持ちで生まれた時から独り――――財前財閥家の次男として駆流という名を付けられた僕は、三人兄弟の中間子として生を受けた。

 兄は跡取りとして家の期待を一身に受け、文武両道を地でいく天才。

 末の弟は両親の愛情を独り占めし、一年のほとんどを海外で暮らす両親と、常に衣食住を共にしている。

 僕は常に二番手で兄のように期待される事もなく、弟が生まれると両親の愛情はそちらに全振り、いてもいなくても分からない存在だった。
 
 僕が中学生の時に兄は留学し、両親と弟はずっと海外なので家には使用人と僕だけ――――

 独りなんて慣れてるし、どうという事はない。

 そんな僕の生活に突如入り込んできたのが、中学一年生の時に仲良くなった久楽結人だった。

 財閥家の人間なのに中学受験する事もなく、普通の地元の中学へと進学した僕。

 たまたま出席番号が前後で話す事になった結人は、初めは取っつきにくい印象で、話しかけると物凄く嫌そうな顔をする珍しい人間だった。

 だいたい僕がお金持ちだというのはすぐに伝わるし、それを知ると皆態度を変えてくる。

 結人も絶対そうだと思っていた。

 でも、彼だけは全く変わらない。


 「僕の家って超お金持ちなんだよね~~」


 知らないのかなと思ってわざと言ってみたけれど、結人から返ってきたのは、


 「あっそ」


 それだけ。

 あまりにも素っ気ない反応に気にならないのかって聞き返すと、なんでそんな事を聞いてくるのかと逆に聞き返されてしまう。


 「なんでって……たいていの人間は財閥家の人間とお近づきになりたいって思うだろう?」

 「ふーん。変なの」


 変って……変なのはお前じゃん?

 喉まで出かかった言葉を飲み込み、この変わってる目の前の人間と友達になりたいと思った僕は、結人を自分の家に呼んだのだった。

 家を見せればさすがの結人もビックリして僕にゴマをすってくるに違いない。

 でもここでも僕の予想は外れてしまう。

 結人は僕の大きな家には全く興味がなく、それよりも部屋に置いてあったフィギュアとかゲームの方が気になっていて、僕は呆気に取られた。

 本当にこんな奴がいるなんて――――

 僕は結人を気に入り、彼をちょくちょく家に呼んで遊ぶ事が増えた。

 色褪せた日常にほんの少し色が着いた瞬間だ。

 そして結人と一緒にいる時間が増えると、彼には大事な幼馴染がいるという事が分かる。

 名前は”亮クン”。

 一年生の最初の方は彼の名前ばかり聞く事になる。

 亮クンの話をしている時の結人は信じられないほど饒舌で幸せそうな顔をしていた……僕が経験した事のない感情。

 そう、恋する人間の顔だ。

 そんな結人を見て僕が思うのは、「いいなぁ」という気持ちだけだった。

 そして面白い。

 恋ってこんな風に人を変えるものなんだ……いつか自分もしてみたいな。

 でも僕は愛された事もないし、正直人を愛すると言う気持ちが全く理解出来ない。

 恋なんて夢のまた夢だな。

 いつからか結人が”亮クン”の話をしなくなり、二人の間に何かあった事は明らかだったけれど、話したがらない人間にあれこれ聞く気も起きなかったのでそのまま”亮クン”は僕の記憶の奥底に消えていったのだった。

 結人は中学生の間、ずっと僕の家に入り浸り、中学生時代の三分のニは二人で過ごしていた気がする。

 マブダチって感じじゃないけど、あまり口数が多くないから余計な事を聞いてこないし、居心地が良かった。

 だんだんと荒れてきて髪の色が変わったりクラブに行くようになったりしたけど、女の子をお持ち帰りしたりはしない……きっと”亮クン”が関係しているんだろうな。

 そんな”亮クン”に高校で出会う事になるとは、思ってもいなかったのだった。

 ~・~・~・~・~

 結人からずっと聞かされていた”亮クン”は小さくて、見た目はちょっとオタクっぽい。

 分厚い眼鏡に目深に切り揃えた前髪、白い肌……いかにも引きこもりオタクって感じ。

 こんなのが結人の好きな人?

 正直最初に見た時は本当にあの”亮クン”なのか信じられなかった。

 でも亮クンと言葉を交わした後の結人は明らかに動揺していて、僕が見た事のないほど感情が動き、自分から拒絶してるくせに顔は赤くなっていたりして――――

 物凄く面白い。

 めちゃくちゃ好きじゃん。


 「あ、亮クン」

 「………………」

 「と思ったら違う人だった~~」


 クラスで亮クンの名前を出すだけでビクッと反応しちゃって……本当に面白い。

 退屈な日常が面白くなりそうな予感がして、僕はわくわくが止まらなかった。

 ある日ちょっとだけ意地悪をした。

 歯科検診の時に彼に放ったひと言――――


 「結人には気を付けて」

 
 多分こんなことを言われて酷く動揺しただろう。

 結人は君のことが大好きだから、あんまり無防備に追いかけてると襲われちゃうよって警告しただけなんだけど。

 でも結人に好かれてるなんて思ってないだろうし、亮クンには何のことが分からないだろうな。

 それでも彼が結人を諦める気配はない。

 真っすぐに結人しか見えていない。

 あんまりひたむきに追いかけてるからだんだんと結人が羨ましく思えてくる。

 亮クンの瞳に僕を映してほしいなぁ――――分厚い眼鏡や前髪で目なんて見えないんだけど。

 こっそり結人のバイト先に行った時も、お店に入らずに毎日毎日遠目から眺めているだけ。

 痺れを切らして店の中に入る事を提案すると、

 
 「仕事の邪魔をするのは嫌だから」


 こんな時も結人の事情ばかり考えて自分の気持ちは後回し。

 本当はすっごく話したいくせに。

 
 「も~~そんなの気にして声かけないとか信じられない!学校では構わず声かけてくるじゃん」

 「学校とバイトは違うよ!」

 「はいはい、じゃあ行こうね~~」

 「え? えぇ?!」
 

 戸惑う亮クンの腕を引っ張り、コンビニの中へ入っていったのだった。

 彼の腕を引きながら、結人が心底羨ましくて堪らなかった……こんな風に僕の事を一番に考えてくれる人がいてくれたら。

 家族の中でも存在が希薄な自分にとって、欲しくて欲しくて堪らない人だった。

 結人にはこんなに自分の事を考えてくれる人がいるのに、自ら拒絶するなんて。

 そして事件は起きる。

 路上にて、亮クンがガラの悪いヤツにぶつかってしまい、その相手はクラブでちょくちょく顔を合わせる奴らだった。

 そしてソイツらは亮クンの襟ぐりを掴み、無理やり引っ張って締め上げたのだった。


 「うっ……ぐぁ……っ」


 「亮クン!!」


 目の前が真っ白になる……僕にとってこの世界の人々は本当にどうでもよくて、自分すらも透明人間のように思っていた。

 誰かを傷つけられてここまで動揺したのは初めてだ。

 亮クンを締め上げていた男は彼を地面に放り投げたので、僕の体は咄嗟に彼を受け止める為に動いていて、なんとか腕の中に亮クンを収めてホッと胸を撫でおろした。


 「駆流クン……」


 腕の中の彼は酷く小さくて心もとなく感じ、顔色が青ざめ、グッタリしていた。

 可哀想に……ちょっと肩がぶつかっただけでこんな粗雑に扱われるなんて……許せない……!
 
 
 「ちょっと~~~~僕たちの友達傷つけないでくれない?!!」


 こんなに声を張り上げたのは生まれて初めて。

 でも自分の中に渦巻く怒りという感情をコントロール出来ない。

 こんな時でも亮クンが僕たちを止めようとするから……止まるしかなかった。

 傷つけられたのは君じゃないか。

 どうしてここまで人の為に動けるんだろう。

 自ら自分に暴力をふるった相手に向かっていく亮クンの姿に釘付けになっていると、彼の眼鏡を外した素顔を初めてまじまじと見る事になり、僕は腰を抜かしそうなほど驚いて目が離せなくなってしまう。

 
 「亮クン美人さん~~~~素顔がこんなに可愛いなんて知らなかった!!あいつらも動揺してたね~~凄い威力!可愛い!!」

 
 めちゃくちゃ可愛いのにどうして顔を隠すようにしているんだろう?!

 でも素顔を振りまいちゃったら、周りを次々と悩殺してしまうだろうし、これは彼を守る為にも必要なのかもしれない。

 亮クンの頬を両手で挟むと、柔らかくて白い頬がほんのり色付き、僕の行動に混乱している表情がまた可愛くて堪らない。

 もちもちだ――ずっと触っていたい。

 大事な幼馴染を好き勝手可愛がっている僕に耐えられなくなったのか、結人が辛辣なツッコミをしてくる。

 
 「おい、触るな!菌がうつる」

 「ちょっと、ひっど~~菌扱い反対!」


 結人だって亮クンが大好きじゃん。

 素直になれないなら、僕がいただくから……そんな意味を込めて、亮クンの柔らかい頬にキスをした。

 少しでも結人じゃなくて僕を意識してもらいたい。
 
 僕が初めて誰かに執着した瞬間だった。

 
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