【完結】ままならぬ僕らのアオハルは。~嫌われていると思っていた幼馴染の不器用な執着愛は、ほんのり苦くて極上に甘い~

Tubling@書籍化&コミカライズ決定

文字の大きさ
15 / 35

そばにいたい

しおりを挟む


 結人の家に向かうという話になってから、彼は終始無言で、自宅が近付くにつれ徐々に表情も硬くなっていく。

 どう見ても来てほしくなさそうに見えるけど、どうしてだろう。

 昔は頻繁に行き来していたし、おばさんが亡くなったあとも家族仲は良さそうだったのに。

 久しぶりに彼の弟の奏人くんにも会いたいし、僕としてはとても楽しみだった。
 
 すぐに着いてインターフォンを鳴らすと、若い女性の声がしてくる。


 「今のは……」

 「親父の再婚相手だ」

 「そ、そうなんだ」

 
 「若い感じね~」


 母さんが思っていた事をストレートに言ってしまう。

 なんだか結人が再婚相手の事を歓迎していない雰囲気を感じるのは気のせいだろうか……この時の僕の杞憂は、すぐに現実のものになっていく。

 扉の中からパタパタと走ってくる音が聞こえてきて、玄関の扉が開かれると、そこには懐かしい結人のお父さんと弟の奏斗くん、そして若い女性が立っていたのだった。
 

 「……ただいま」

 「おかえり、結人!それに高嶺家の皆さんもご無沙汰しています」


 優しそうなおじさんが、昔のように優しい笑顔で挨拶をしてくれる。

 
 「亮クン、こんばんは!久しぶり~~」

 「奏斗くん!こんばんは!大きくなったね~~」


 奏斗くんは僕に挨拶をすると、サンダルをはいて僕の懐に飛び込んできた。

 まだ中学2年生かな?

 背が伸びている最中なのか……身長が同じくらいになってる。

 僕は165cmにも満たないくらいでそれほど高くはないので、すぐに追い抜かされてしまいそう。

 奏斗くんの柔らかい髪の毛を撫でながら、久しぶりの再会を喜び合った。


 「もう僕と同じくらいまで伸びたんだね。声も変わってきてる」

 「すぐに追い抜くよ!兄ちゃんの背も!亮クンに相応しい男になるんだ」

 「ん?」

 「おい、奏斗。亮が困ってるだろ」


 結人に引き離されてブーブー言っている奏斗くん。でも結人は奏斗くんの事は可愛がってる感じだ……二人の関係にホッと胸をなでおろした。

 再会を懐かしむ僕たちの間に、若い女性の声が入り込んでくる。


 「あのー……結人くんがいつもお世話になってます。何かご迷惑をおかけしてませんか?」

 
 僕も両親も一瞬何を言われたか分からず、顔を見合わせてしまう。

 突然この人は何を言いたいんだろう。

 
 「迷惑なんてとんでもない!昨日も亮が助けていただいて……今日はそのお礼を言いに来たんです」


 母さんが大人の対応をしながら、昨日の出来事を説明していった。

 両親が頭を下げるので、おじさんは恐縮していたけれど、何となく嬉しそうに見えたのは気のせいではないと思う。

 結人は昔から優しいから……自慢の息子だろうな。

 そんな和やかな雰囲気をぶった切るような、女性の言葉が放たれた。
 

 「えー……そんな事も出来るんですね。この通り素行が悪くて困っていたので……良かったね、正彦さん!」

 「あ、ああ」

 「このままいい子に育ってくれればいいんですけど。亮くんみたいな子がそばにいてくれたら安心です!」


 なんだか言葉が通じないような気がして、呆気に取られてしまう。

 結人の方をチラリと見ても、こちらからでは角度的に表情は窺えない。でも絶対嫌な気持ちになっているに違いない。

 この女性の言葉は、結人の全てを否定しているように感じるのは気のせいだろうか。

 沸々と怒りのような感情が湧いてくる……いい子って、なに?

 家族なのに終始他人事だし、おじさんも言い返さないし、あまりにも腹立たしくて、目の前の女性に思っていた事をぶつけてしまったのだった。


 「あの!結人は昔から良いヤツですし、今も良いヤツですけど?」

 「えー……それは……」

 「僕たちの方が結人の事、よく知ってますし、そんな事言われなくても結人はちゃんと出来るヤツです!」


 言い淀む女性に、今度は母さんがとどめを刺した。


 「あなた、結人くんを昔から知らないから分からないかもしれないですけど、彼が良い子じゃないわけがないわ。私の親友がとても大切に育てていたのだから。もし彼の素行が悪くなってしまったと感じているのだとしたら、あなた方大人に原因があるのではなくて?加奈の子供を侮辱しないで。とても素晴らしい子よ」

 「それは家での彼を知らないからぁ……」

 「だから家が良くないって言ってるんです」


 母さんがバッサリと言ってのけ、女性は悔し気に黙り込んでしまう。

 結人の様子をまたチラリと窺うと、なぜだかプルプルと震えていた……もしかして泣いてる?

 僕たちが言い過ぎたかもとドキドキしていると、突然結人が吹き出した。


 「ぶはっ!はははっ!おばさん、最高――」

 「もう!笑いごとではないのよ~~」

 「いや、もう、本当に最高すぎて……ははっ。……亮もありがとな」


 そう言って僕の頭を撫でる結人の顔は、思いの外スッキリしていて、僕はほんの少し安心したのだった。

 でも絶対に悔しいに決まってるのに――――なんだか僕の方が泣きたくなってくる。


 「兄ちゃんも亮クンに触りすぎ!」

 「俺はいいんだよ」

 「ふふふっ」


 さっきまで怒りが渦巻いていたけれど、二人のやり取りによって思わず笑ってしまう。
 
 奏斗くんはいつも通りだな。裏も表もない。

 そこへ父さんが改めておじさんに声をかけ、挨拶をしたのだった。


 「では久楽さん、息子がまた結人くんと同じ高校なので、お世話になります。今日はその挨拶もさせていただきたくて来ただけですので」

 「え、ええ。こちらこそよろしくお願いします」
 

 ひとしきり用を済ませた僕たちは、そのまま久楽家をあとにする事にした。

 あんな家に結人を残していくのも嫌だったけれど……なんだかあの女性の存在が頭にこびり付いて離れない。

 人前で自分の事を堂々と貶してくる人と同じ屋根の下に暮らしてきた幼馴染の心を思うと、中学時代に一緒にいてあげられなかった事が本当に悔やまれる。


 「あんな女性と再婚していたなんて、知らなかったわ。今の状況を知ったら加奈がどんなに悲しむか……もっと気にかけてあげれば良かった……」

 「……結人くんの様子を見て、何かあるかなと思っていたけどね」

 「え、そうなの?」


 僕は両親が話しているのを聞き、驚きの声を上げてしまう。

 父さんも気付いていたんだ……。


 「もっと純粋な子だったろ。髪も金髪で家に帰りたくなさそうだったし」

 「あの女……これ以上あの子を傷つけるような事を言ったら許さないから…………」

 「母さん、落ち着いてっ」


 僕は怒りが静まらない母さんを宥めるように声をかけた。

 親友の息子だし、並々ならぬ気持ちがあるのかもしれない。

 僕も今まで以上に結人のそばにいたいと思った。

 僕は本当に一番一緒にいるべき時にそばにいてあげられなかったのかも……そう思うと胸が苦しくて自分の選択を後悔しそうになる。

 結人が怒って当然だ。

 僕は何も分かっていなかったんだから――――

 そばにいられなかった中学時代……過去は変えられないけれど、これからはもう絶対に離れない。

 そう心に誓ったのだった。
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

笑って下さい、シンデレラ

椿
BL
付き合った人と決まって12日で別れるという噂がある高嶺の花系ツンデレ攻め×昔から攻めの事が大好きでやっと付き合えたものの、それ故に空回って攻めの地雷を踏みぬきまくり結果的にクズな行動をする受け。 面倒くさい攻めと面倒くさい受けが噛み合わずに面倒くさいことになってる話。 ツンデレは振り回されるべき。

幼馴染が「お願い」って言うから

尾高志咲/しさ
BL
高2の月宮蒼斗(つきみやあおと)は幼馴染に弱い。美形で何でもできる幼馴染、上橋清良(うえはしきよら)の「お願い」に弱い。 「…だからってこの真夏の暑いさなかに、ふっかふかのパンダの着ぐるみを着ろってのは無理じゃないか?」 里見高校着ぐるみ同好会にはメンバーが3人しかいない。2年生が二人、1年生が一人だ。商店街の夏祭りに参加直前、1年生が発熱して人気のパンダ役がいなくなってしまった。あせった同好会会長の清良は蒼斗にパンダの着ぐるみを着てほしいと泣きつく。清良の「お願い」にしぶしぶ頷いた蒼斗だったが…。 ★上橋清良(高2)×月宮蒼斗(高2) ☆同級生の幼馴染同士が部活(?)でわちゃわちゃしながら少しずつ近づいていきます。 ☆第1回青春×BL小説カップに参加。最終45位でした。応援していただきありがとうございました!

小石の恋

キザキ ケイ
BL
やや無口で平凡な男子高校生の律紀は、ひょんなことから学校一の有名人、天道 至先輩と知り合う。 助けてもらったお礼を言って、それで終わりのはずだったのに。 なぜか先輩は律紀にしつこく絡んできて、連れ回されて、平凡な日常がどんどん侵食されていく。 果たして律紀は逃げ切ることができるのか。

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

【完結】俺とあの人の青い春

月城雪華
BL
 高校一年の夏、龍冴(りょうが)は二つ上の先輩である椰一(やいち)と付き合った。  けれど、告白してくれたにしては制限があまりに多過ぎると思っていた。  ぼんやりとした不信感を抱いていたある日、見知らぬ相手と椰一がキスをしている場面を目撃してしまう。  けれど友人らと話しているうちに、心のどこかで『椰一はずっと前から裏切っていた』と理解していた。  それでも悲しさで熱い雫が溢れてきて、ひと気のない物陰に座り込んで泣いていると、ふと目の前に影が差す。 「大丈夫か?」  涙に濡れた瞳で見上げると、月曜日の朝──その数日前にも件の二人を見掛け、書籍を落としたのだがわざわざ教室まで届けてくれたのだ──にも会った、一学年上の大和(やまと)という男だった。

僕のために、忘れていて

ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────

君の恋人

risashy
BL
朝賀千尋(あさか ちひろ)は一番の親友である茅野怜(かやの れい)に片思いをしていた。 伝えるつもりもなかった気持ちを思い余って告げてしまった朝賀。 もう終わりだ、友達でさえいられない、と思っていたのに、茅野は「付き合おう」と答えてくれて——。 不器用な二人がすれ違いながら心を通わせていくお話。

処理中です...