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体育祭実行委員メンバー
しおりを挟む結人の家に挨拶に行った翌日、学校に登校すると、玄関で結人の後ろ姿を見かけたので駆け寄った。
昨日結人の家に行った時、あまりいい雰囲気じゃなかったから今日は休むかなと思っていたので、ちゃんと登校しているのが嬉しくなり、声が大きくなってしまう。
「おはよう!」
「はよ。朝から元気だな」
「あ、ごめん。うるさかった?」
「いや、別に。いんじゃね?」
なんだかやり取りが優しくなったような気がして、チラリと幼馴染の顔を見てみると、ほんの少し笑ってる気がする。
口の端がほんの少し……僕の願望だろうかと思いつつ、再会してから初めて見せてくれた笑顔に、鼻の奥がツンとして、涙が出そうになるのを必死で堪えた。
「へへ……」
「なんだよ」
「ううん、なんでも!」
僕の顔を怪訝そうな表情で見ているけど、嫌な雰囲気ではない。
やっとスタートラインに立ったような感じがする。
外靴を脱ぎ、上靴に履き替えながら、今日も一緒に帰れるかなと思い、意気揚々と予定を聞いてみた。
「今日はバイト?」
「あー……そうだな」
帰りは別々かぁ……近頃は一緒の時間が増えていたので、ちょっと欲張りになってしまっているのかもしれない。
僕が肩を落としていたところに、雫の元気な声が聞こえてくる。
「亮~~おはよう!」
「おはよう、雫」
「げっ、久楽結人!」
「……お前…………チッ」
雫は裏表がないので、思った事がそのまま口に出てきてしまうところがあり、結人に対してもそれは変わらない。
舌打ちする結人は、何となく気まずそうな表情に見える。
僕が苦笑いしていると、彼の大きな手で髪の毛をくしゃっとされてしまう。
「……じゃな」
「うん」
優しい手だった……まだぶっきらぼうだけど、確実に距離は縮まってる気がする。
前みたいに声かけるなって感じじゃないし。
自分から触ってくれる。
一瞬だけ、結人の夢を見た時の事を思い出しそうになり、思わず頭を振った。
頭を撫でられた部分がじんわりと熱い――――昔よりはるかに大きくなった幼馴染の手の感触を確かめつつ、乱れた髪を直していく。
「そういや今日、委員会決めるんだよな~~めんどくせー」
「雫は何か委員会やる?」
「ん――迷い中。亮は?」
「僕も迷い中。体育祭が近いから体育祭実行委員にはなりたくないな」
「分かる!絶対大変そうだもん!」
やっぱり皆思う事は一緒だったか……そんな他愛ない話をしながら、雫と教室へと向かった。
散々体育祭関係の委員会は嫌だと話していたのに――――結局僕は体育祭実行委員に決まってしまったのだった。
「どうしてこんな事に……」
「亮……ごめんな。さすがの俺もお前の事守りきれなくて…………推しを守れないなんて失格だ……」
「雫、そこまで落ち込まなくても」
「俺が代わろうか?」
僕たちのやり取りを見て、真司がそう言ってくれる。
でも真司は野球を頑張りたいだろうから、委員会なんてさせられない。
今年の夏のベンチ入りメンバーに入れるかどうかで、毎日必死に練習しているのを知っているから。
「いや、大丈夫だよ。僕、帰宅部だしやるよ。もしかしたら体育祭も委員の活動であまり参加しなくてもいいかもしれないし!」
「それは甘いぞ、亮~~」
「やっぱり?」
雫のツッコみを笑い飛ばした僕は、皆それぞれ頑張っているんだし、委員の仕事をちゃんと全うしようと決意したのだった。
そしてさっそく放課後に委員会があるので僕は残り、もう一人の体育祭実行委員メンバーの女子と共に委員会のある教室へと移動し、隣同士で座りながらメンバーが揃うのを待つ事にした。
一緒の委員になったのは新垣 真衣(にいがき まい)という女子で、クラスでは人気があり、可愛らしい人だ。
僕はクラスで地味眼鏡なのでそういう可愛らしい女子とは話した事もなく、向こうも僕の事を知らないだろうと思っていたら、意外にも知っていて丁寧に話しかけてくれた。
「高嶺くんと話すのは初めてだよね?」
「うん。よく僕の名前覚えていたね」
「私、名前覚えるの得意なんだー、だいたい一回聞いたら覚えちゃうの」
「凄い!記憶力がいいんだ。運動も得意じゃないのに実行委員になってしまった……」
「ふふっ、関係ないよ。二人で頑張ろう!」
「うん!」
凄く良い人だな……良かった。
中学時代は女子にも顔を笑われた事があり、正直女子も苦手だったけれど、新垣さんはあまり緊張しないで話せるかも。
1つ1つ克服していくしかないんだよね。
そんな事を考えていると、聞き覚えのある声が後ろから聞こえてくる。
「亮?」
声の主が誰なのかすぐに分かったけれど、信じられなくてゆっくりと振り返る。
そこには驚いた表情の幼馴染が立っていたのだった。
「結人!今日はバイトじゃ……」
「委員会出てから行く。お前も実行委員?」
「うん、帰宅部だから決まっちゃって……」
「…………そうか」
そこまで会話したところで、結人は自分のクラスの席へと向かっていった。
わ――……嬉しいな……。
思いがけず放課後に一緒にいられる機会が出来て、浮かれている自分がいる。
結人は立候補したのかな。
どうして実行委員になったんだろう。色々聞きたい事があるけれど、今はお預けだった。
僕の隣に座る新垣さんが結人に挨拶をしている姿が目に入り、6組の自分のクラスの女子にも腕を引かれている結人は、やっぱりモテるんだな。
背も高いし、カッコいいもんね。
路上で色々あった時も、女性が結人の腕に絡みついて密着していたし、一緒にいるとそういうのを目の当たりにする機会が多い。
瞬間、チクリと胸が痛んだ。
なんだろう?胃の調子でも悪いのかな。
それは一瞬だったので何の痛みかが分からなかったけれど、その痛みは僕の心に確かに根付き、体育祭が近づく頃には僕の心を確実に変化させていくのだった。
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