17 / 35
体育祭準備は独占欲にまみれて
しおりを挟む「亮、ここお願い」
「うん、このペンで書けばいい?」
体育祭実行委員の中で一年生は体育祭のプログラムの作成作業や応援旗を頼まれ、分担しながらそれぞれ作業していた。
実行委員会は放課後行われ、結人も必ず出席してくれて、一緒に過ごす時間が格段に増えたので実行委員会がある日はとても嬉しくなる。
だんだんと話し方も柔らかくなり、自然に離しかけてくれるようになった事に幸せを感じつつ、僕は1つの悩みを抱えていた。
それは――――
「結人くん、これでいい?」「結人~~ちょっと手伝って」「結人くん、上手く描けない」
あちらこちらから結人を呼ぶ女子の声が飛び交うのだ。
確かにモテるのは分かっていた。
実際に男の僕から見てもカッコいいし、分かるんだけど……僕だって結人と話したい。
そこまで考えてハッと思いとどまる。
これじゃ、まるで僕が女子に嫉妬してるみたいじゃないか……結人にじゃなくて、女子にっておかしいだろ。
煩悩を振り払うように首を振る。
そんな僕のもとに同じクラスの女子の新垣さんがそっと寄ってきて、ひっそり声をかけてきた。
「久楽くん、凄い人気だね~」
「本当だね。新垣さんも話したいでしょう?」
「え、私?!」
分かりやすく動揺するのでとても可笑しくなり、つい笑ってしまう。
「新垣さん、面白い」
「もう!……びっくりした。でもバレバレだよね……見ているだけでも良かったんだけど、話せるようになったら欲張りになっちゃうものなんだなーって」
「うん……そうなんだよね。もっと、もっとってなっちゃうよね」
今まさに自分が幼馴染に対して抱いている感情だったので、新垣さんに深く同意する。
少し話せるようになったら、もっと昔みたいに話したいって思っちゃってるもんな……相手が望んでいるかも分からないのに。
新垣さんの恋バナに相槌を打っていると、彼女から名前呼びの提案を受けたのだった。
「ねぇ、高嶺くんって凄く話しやすいから、名前で呼んでもいい?私も真衣って呼んで!」
「え? ああ、うん。いいよ!じゃあ真衣……さん」
「もう!さん付けたらダメじゃない、亮。ほら、真衣って言ってみて」
「ま、真衣……?」
「もう、疑問形じゃなくて!でもいっか~~よろしく、亮」
女子を名前呼びなんて小学生以来だから、少し照れるかも。
そんなやり取りをしている僕たちのところへ、結人がプログラムを持ちながらやってきた。
「亮、ここなんだけどデザインに悩んでて……」
こうやって自然に話に来てくれる事が嬉しい……もっと話したいな。
近くにいると結人の匂いを感じて、なんだか顔を直視出来ない。
隣りでは、結人がやって来た事でさっきまで元気に話してた真衣が、顔を真っ赤にして俯いていた。
僕はクスッと笑いつつ、彼女を応援してあげなければならないと思い、さりげなく彼女に話を振ったのだった。
「それなら真衣の方が得意なんじゃない?」
「え、あ、なに言ってるの亮は!」
「だって絵とか得意でしょ」
僕は嘘の話を並べ、彼女の恋を応援してあげる事にした。
2人で話す機会をつくれば距離も縮まるだろうし……でもこの話をしている間、ずっと胃のあたりがじくじく痛む。
さっきとは違う意味で結人の顔を直視出来ない。
たった今クラスの女子の恋を応援しようと思ったのに、なんだろう。
結人に、OKって言ってほしくない――――?
普通なら女子に対して思うことなんだろうけど、自分が幼馴染を独り占めしたいと思っていることに気付き、愕然とする。
人の恋路の邪魔をするなんてダメじゃないか。
結人だって迷惑だろうし。
自分の思考回路にフタをするように、結人と真衣を2人で作業させるよう言葉をかけた。
「僕、こっちで作業してるから」
「…………分かった」
結人は了承し、作成中のプログラムを持って去っていく。
真衣ちゃんが僕にありがとうとジェスチャーで伝えてくるので笑顔で送り出した。
これでよかったはず、だよね?
そう思うのに、まだお腹がじくじく痛む感じがする。
そして一人で作業する僕のもとへ、他クラスの男子がやってきて、わちゃわちゃ話を始めた。
僕は気を紛らわすためには丁度いいと思い、他クラスの男子の仲間に入れてもらい、委員会が終わるまで皆とワイワイ話しながら進めたのだった。
~・~・~・~・~
なんとか委員会を終わらせ、帰る時間になったので鞄を背負うと、まだ女子に囲まれている結人が目に入ってくる。
さっきまで忘れていたのに、また胃のあたりが痛くなってきた……雫がファーストフード店のムクドで真司と勉強会してるから、帰りに寄ってって言われてるけど、胃の調子が悪いからどうしようかな。
そんな事を考えながら、教室を出ようとした時、僕を呼ぶ幼馴染の声が聞こえてくる。
「亮!……待てよ」
女子の中から抜け出してきた結人が鞄を持って、僕のほうへやってくる。
あんなに女子に囲まれていても、僕に気付いて声をかけてくれる事が嬉しい。
顔に出さないように気を付けたけれど、彼が近くに来ると心臓が痛いくらいにドクドクしていた。
女子からは「結人帰っちゃうのー?」「えー」「一緒にかえろう」などと声が飛んでいる。
これは僕が独り占めしていい感じじゃないな……そう思っていたのに。
「……無理、コイツと帰るから」
結人は女子たちに見えるように僕の肩を抱き寄せてきたので、驚きのあまり固まってしまう。
そのまま颯爽と教室を後にした僕たちは、無言で生徒玄関まで一緒に歩いて行ったのだった。
一緒に帰ってくれるんだ。
頭の中ではさっきの彼の言葉がずっと流れている。
『コイツと帰るから』
僕と一緒に帰る事を選んでくれた……そして肩を抱かれて教室を出たあと、今もずっと肩を抱いているこの状況に、まるで頭が追い付かない。
心臓が口から飛び出そう。
でも不思議と嫌悪感はない
ずっと続いてほしいような、恥ずかしいような、よく分からない気持ちを抱えたまま、玄関へとたどり着いた。
「あ……わりっ」
「ううん、大丈夫」
結人がようやく状況に気付いたのか、手を離したので僕も解放されたのだった。
触れられた箇所が熱い気がする。
自分の変な思考を振り払うかのように、雫たちとの勉強会に彼も誘ってみることにした。
「この後バイト?」
「いや、バイトはない」
「じゃあこれからムクド行かない?雫と真司が勉強会してるから寄ってって言われてるんだ」
「…………行く」
今日は結人と一緒にいられる時間が多くて、幸せだな。
ポツリと呟くような返事も、可愛くて思わず笑ってしまったけれど。
彼と話しながらムクドに向かっていたら、委員会の時に痛かった胃はすっかり良くなったようで、雫たちに合流する頃にはまったく痛みはなくなっていたのだった。
10
あなたにおすすめの小説
溺愛系とまではいかないけど…過保護系カレシと言った方が 良いじゃねぇ? って親友に言われる僕のカレシさん
315 サイコ
BL
潔癖症で対人恐怖症の汐織は、一目惚れした1つ上の三波 道也に告白する。
が、案の定…
対人恐怖症と潔癖症が、災いして号泣した汐織を心配して手を貸そうとした三波の手を叩いてしまう。
そんな事が、あったのにも関わらず仮の恋人から本当の恋人までなるのだが…
三波もまた、汐織の対応をどうしたらいいのか、戸惑っていた。
そこに汐織の幼馴染みで、隣に住んでいる汐織の姉と付き合っていると言う戸室 久貴が、汐織の頭をポンポンしている場面に遭遇してしまう…
表紙のイラストは、Days AIさんで作らせていただきました。
幼馴染が「お願い」って言うから
尾高志咲/しさ
BL
高2の月宮蒼斗(つきみやあおと)は幼馴染に弱い。美形で何でもできる幼馴染、上橋清良(うえはしきよら)の「お願い」に弱い。
「…だからってこの真夏の暑いさなかに、ふっかふかのパンダの着ぐるみを着ろってのは無理じゃないか?」
里見高校着ぐるみ同好会にはメンバーが3人しかいない。2年生が二人、1年生が一人だ。商店街の夏祭りに参加直前、1年生が発熱して人気のパンダ役がいなくなってしまった。あせった同好会会長の清良は蒼斗にパンダの着ぐるみを着てほしいと泣きつく。清良の「お願い」にしぶしぶ頷いた蒼斗だったが…。
★上橋清良(高2)×月宮蒼斗(高2)
☆同級生の幼馴染同士が部活(?)でわちゃわちゃしながら少しずつ近づいていきます。
☆第1回青春×BL小説カップに参加。最終45位でした。応援していただきありがとうございました!
笑って下さい、シンデレラ
椿
BL
付き合った人と決まって12日で別れるという噂がある高嶺の花系ツンデレ攻め×昔から攻めの事が大好きでやっと付き合えたものの、それ故に空回って攻めの地雷を踏みぬきまくり結果的にクズな行動をする受け。
面倒くさい攻めと面倒くさい受けが噛み合わずに面倒くさいことになってる話。
ツンデレは振り回されるべき。
陰キャ幼馴染がミスターコン代表に選ばれたので、俺が世界一イケメンにしてやります
あと
BL
「俺が!お前を生まれ変わらせる!」
自己肯定感低めの陰キャ一途攻め×世話焼きなお人好し平凡受け
いじられキャラで陰キャな攻めが数合わせでノミネートされ、2ヶ月後の大学の学園祭のミスターコンの学部代表になる。誰もが優勝するわけないと思う中、攻めの幼馴染である受けは周囲を見返すために、攻めを大幅にイメチェンさせることを決意する。そして、隠れイケメンな攻めはどんどん垢抜けていき……?
攻め:逸見悠里
受け:佐々木歩
⚠️途中でファッションの話になりますが、作者は服に詳しくないので、ダサいじゃん!とか思ってもスルーでお願いします。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
勇者様への片思いを拗らせていた僕は勇者様から溺愛される
八朔バニラ
BL
蓮とリアムは共に孤児院育ちの幼馴染。
蓮とリアムは切磋琢磨しながら成長し、リアムは村の勇者として祭り上げられた。
リアムは勇者として村に入ってくる魔物退治をしていたが、だんだんと疲れが見えてきた。
ある日、蓮は何者かに誘拐されてしまい……
スパダリ勇者×ツンデレ陰陽師(忘却の術熟練者)
こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件
神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。
僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。
だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。
子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。
ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。
指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。
あれから10年近く。
ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。
だけど想いを隠すのは苦しくて――。
こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。
なのにどうして――。
『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』
えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 一月十日のアルファポリス規約改定を受け、サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をこちらへ移しましたm(__)m サブ垢の『バウムクーヘンエンド』はこちらへ移動が出来次第、非公開となりますm(__)m)
【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる