【完結】ままならぬ僕らのアオハルは。~嫌われていると思っていた幼馴染の不器用な執着愛は、ほんのり苦くて極上に甘い~

Tubling@書籍化&コミカライズ決定

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そばにいたい

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 結人の家に向かうという話になってから、彼は終始無言で、自宅が近付くにつれ徐々に表情も硬くなっていく。

 どう見ても来てほしくなさそうに見えるけど、どうしてだろう。

 昔は頻繁に行き来していたし、おばさんが亡くなったあとも家族仲は良さそうだったのに。

 久しぶりに彼の弟の奏人くんにも会いたいし、僕としてはとても楽しみだった。
 
 すぐに着いてインターフォンを鳴らすと、若い女性の声がしてくる。


 「今のは……」

 「親父の再婚相手だ」

 「そ、そうなんだ」

 
 「若い感じね~」


 母さんが思っていた事をストレートに言ってしまう。

 なんだか結人が再婚相手の事を歓迎していない雰囲気を感じるのは気のせいだろうか……この時の僕の杞憂は、すぐに現実のものになっていく。

 扉の中からパタパタと走ってくる音が聞こえてきて、玄関の扉が開かれると、そこには懐かしい結人のお父さんと弟の奏斗くん、そして若い女性が立っていたのだった。
 

 「……ただいま」

 「おかえり、結人!それに高嶺家の皆さんもご無沙汰しています」


 優しそうなおじさんが、昔のように優しい笑顔で挨拶をしてくれる。

 
 「亮クン、こんばんは!久しぶり~~」

 「奏斗くん!こんばんは!大きくなったね~~」


 奏斗くんは僕に挨拶をすると、サンダルをはいて僕の懐に飛び込んできた。

 まだ中学2年生かな?

 背が伸びている最中なのか……身長が同じくらいになってる。

 僕は165cmにも満たないくらいでそれほど高くはないので、すぐに追い抜かされてしまいそう。

 奏斗くんの柔らかい髪の毛を撫でながら、久しぶりの再会を喜び合った。


 「もう僕と同じくらいまで伸びたんだね。声も変わってきてる」

 「すぐに追い抜くよ!兄ちゃんの背も!亮クンに相応しい男になるんだ」

 「ん?」

 「おい、奏斗。亮が困ってるだろ」


 結人に引き離されてブーブー言っている奏斗くん。でも結人は奏斗くんの事は可愛がってる感じだ……二人の関係にホッと胸をなでおろした。

 再会を懐かしむ僕たちの間に、若い女性の声が入り込んでくる。


 「あのー……結人くんがいつもお世話になってます。何かご迷惑をおかけしてませんか?」

 
 僕も両親も一瞬何を言われたか分からず、顔を見合わせてしまう。

 突然この人は何を言いたいんだろう。

 
 「迷惑なんてとんでもない!昨日も亮が助けていただいて……今日はそのお礼を言いに来たんです」


 母さんが大人の対応をしながら、昨日の出来事を説明していった。

 両親が頭を下げるので、おじさんは恐縮していたけれど、何となく嬉しそうに見えたのは気のせいではないと思う。

 結人は昔から優しいから……自慢の息子だろうな。

 そんな和やかな雰囲気をぶった切るような、女性の言葉が放たれた。
 

 「えー……そんな事も出来るんですね。この通り素行が悪くて困っていたので……良かったね、正彦さん!」

 「あ、ああ」

 「このままいい子に育ってくれればいいんですけど。亮くんみたいな子がそばにいてくれたら安心です!」


 なんだか言葉が通じないような気がして、呆気に取られてしまう。

 結人の方をチラリと見ても、こちらからでは角度的に表情は窺えない。でも絶対嫌な気持ちになっているに違いない。

 この女性の言葉は、結人の全てを否定しているように感じるのは気のせいだろうか。

 沸々と怒りのような感情が湧いてくる……いい子って、なに?

 家族なのに終始他人事だし、おじさんも言い返さないし、あまりにも腹立たしくて、目の前の女性に思っていた事をぶつけてしまったのだった。


 「あの!結人は昔から良いヤツですし、今も良いヤツですけど?」

 「えー……それは……」

 「僕たちの方が結人の事、よく知ってますし、そんな事言われなくても結人はちゃんと出来るヤツです!」


 言い淀む女性に、今度は母さんがとどめを刺した。


 「あなた、結人くんを昔から知らないから分からないかもしれないですけど、彼が良い子じゃないわけがないわ。私の親友がとても大切に育てていたのだから。もし彼の素行が悪くなってしまったと感じているのだとしたら、あなた方大人に原因があるのではなくて?加奈の子供を侮辱しないで。とても素晴らしい子よ」

 「それは家での彼を知らないからぁ……」

 「だから家が良くないって言ってるんです」


 母さんがバッサリと言ってのけ、女性は悔し気に黙り込んでしまう。

 結人の様子をまたチラリと窺うと、なぜだかプルプルと震えていた……もしかして泣いてる?

 僕たちが言い過ぎたかもとドキドキしていると、突然結人が吹き出した。


 「ぶはっ!はははっ!おばさん、最高――」

 「もう!笑いごとではないのよ~~」

 「いや、もう、本当に最高すぎて……ははっ。……亮もありがとな」


 そう言って僕の頭を撫でる結人の顔は、思いの外スッキリしていて、僕はほんの少し安心したのだった。

 でも絶対に悔しいに決まってるのに――――なんだか僕の方が泣きたくなってくる。


 「兄ちゃんも亮クンに触りすぎ!」

 「俺はいいんだよ」

 「ふふふっ」


 さっきまで怒りが渦巻いていたけれど、二人のやり取りによって思わず笑ってしまう。
 
 奏斗くんはいつも通りだな。裏も表もない。

 そこへ父さんが改めておじさんに声をかけ、挨拶をしたのだった。


 「では久楽さん、息子がまた結人くんと同じ高校なので、お世話になります。今日はその挨拶もさせていただきたくて来ただけですので」

 「え、ええ。こちらこそよろしくお願いします」
 

 ひとしきり用を済ませた僕たちは、そのまま久楽家をあとにする事にした。

 あんな家に結人を残していくのも嫌だったけれど……なんだかあの女性の存在が頭にこびり付いて離れない。

 人前で自分の事を堂々と貶してくる人と同じ屋根の下に暮らしてきた幼馴染の心を思うと、中学時代に一緒にいてあげられなかった事が本当に悔やまれる。


 「あんな女性と再婚していたなんて、知らなかったわ。今の状況を知ったら加奈がどんなに悲しむか……もっと気にかけてあげれば良かった……」

 「……結人くんの様子を見て、何かあるかなと思っていたけどね」

 「え、そうなの?」


 僕は両親が話しているのを聞き、驚きの声を上げてしまう。

 父さんも気付いていたんだ……。


 「もっと純粋な子だったろ。髪も金髪で家に帰りたくなさそうだったし」

 「あの女……これ以上あの子を傷つけるような事を言ったら許さないから…………」

 「母さん、落ち着いてっ」


 僕は怒りが静まらない母さんを宥めるように声をかけた。

 親友の息子だし、並々ならぬ気持ちがあるのかもしれない。

 僕も今まで以上に結人のそばにいたいと思った。

 僕は本当に一番一緒にいるべき時にそばにいてあげられなかったのかも……そう思うと胸が苦しくて自分の選択を後悔しそうになる。

 結人が怒って当然だ。

 僕は何も分かっていなかったんだから――――

 そばにいられなかった中学時代……過去は変えられないけれど、これからはもう絶対に離れない。

 そう心に誓ったのだった。
 
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