16 / 35
体育祭実行委員メンバー
しおりを挟む結人の家に挨拶に行った翌日、学校に登校すると、玄関で結人の後ろ姿を見かけたので駆け寄った。
昨日結人の家に行った時、あまりいい雰囲気じゃなかったから今日は休むかなと思っていたので、ちゃんと登校しているのが嬉しくなり、声が大きくなってしまう。
「おはよう!」
「はよ。朝から元気だな」
「あ、ごめん。うるさかった?」
「いや、別に。いんじゃね?」
なんだかやり取りが優しくなったような気がして、チラリと幼馴染の顔を見てみると、ほんの少し笑ってる気がする。
口の端がほんの少し……僕の願望だろうかと思いつつ、再会してから初めて見せてくれた笑顔に、鼻の奥がツンとして、涙が出そうになるのを必死で堪えた。
「へへ……」
「なんだよ」
「ううん、なんでも!」
僕の顔を怪訝そうな表情で見ているけど、嫌な雰囲気ではない。
やっとスタートラインに立ったような感じがする。
外靴を脱ぎ、上靴に履き替えながら、今日も一緒に帰れるかなと思い、意気揚々と予定を聞いてみた。
「今日はバイト?」
「あー……そうだな」
帰りは別々かぁ……近頃は一緒の時間が増えていたので、ちょっと欲張りになってしまっているのかもしれない。
僕が肩を落としていたところに、雫の元気な声が聞こえてくる。
「亮~~おはよう!」
「おはよう、雫」
「げっ、久楽結人!」
「……お前…………チッ」
雫は裏表がないので、思った事がそのまま口に出てきてしまうところがあり、結人に対してもそれは変わらない。
舌打ちする結人は、何となく気まずそうな表情に見える。
僕が苦笑いしていると、彼の大きな手で髪の毛をくしゃっとされてしまう。
「……じゃな」
「うん」
優しい手だった……まだぶっきらぼうだけど、確実に距離は縮まってる気がする。
前みたいに声かけるなって感じじゃないし。
自分から触ってくれる。
一瞬だけ、結人の夢を見た時の事を思い出しそうになり、思わず頭を振った。
頭を撫でられた部分がじんわりと熱い――――昔よりはるかに大きくなった幼馴染の手の感触を確かめつつ、乱れた髪を直していく。
「そういや今日、委員会決めるんだよな~~めんどくせー」
「雫は何か委員会やる?」
「ん――迷い中。亮は?」
「僕も迷い中。体育祭が近いから体育祭実行委員にはなりたくないな」
「分かる!絶対大変そうだもん!」
やっぱり皆思う事は一緒だったか……そんな他愛ない話をしながら、雫と教室へと向かった。
散々体育祭関係の委員会は嫌だと話していたのに――――結局僕は体育祭実行委員に決まってしまったのだった。
「どうしてこんな事に……」
「亮……ごめんな。さすがの俺もお前の事守りきれなくて…………推しを守れないなんて失格だ……」
「雫、そこまで落ち込まなくても」
「俺が代わろうか?」
僕たちのやり取りを見て、真司がそう言ってくれる。
でも真司は野球を頑張りたいだろうから、委員会なんてさせられない。
今年の夏のベンチ入りメンバーに入れるかどうかで、毎日必死に練習しているのを知っているから。
「いや、大丈夫だよ。僕、帰宅部だしやるよ。もしかしたら体育祭も委員の活動であまり参加しなくてもいいかもしれないし!」
「それは甘いぞ、亮~~」
「やっぱり?」
雫のツッコみを笑い飛ばした僕は、皆それぞれ頑張っているんだし、委員の仕事をちゃんと全うしようと決意したのだった。
そしてさっそく放課後に委員会があるので僕は残り、もう一人の体育祭実行委員メンバーの女子と共に委員会のある教室へと移動し、隣同士で座りながらメンバーが揃うのを待つ事にした。
一緒の委員になったのは新垣 真衣(にいがき まい)という女子で、クラスでは人気があり、可愛らしい人だ。
僕はクラスで地味眼鏡なのでそういう可愛らしい女子とは話した事もなく、向こうも僕の事を知らないだろうと思っていたら、意外にも知っていて丁寧に話しかけてくれた。
「高嶺くんと話すのは初めてだよね?」
「うん。よく僕の名前覚えていたね」
「私、名前覚えるの得意なんだー、だいたい一回聞いたら覚えちゃうの」
「凄い!記憶力がいいんだ。運動も得意じゃないのに実行委員になってしまった……」
「ふふっ、関係ないよ。二人で頑張ろう!」
「うん!」
凄く良い人だな……良かった。
中学時代は女子にも顔を笑われた事があり、正直女子も苦手だったけれど、新垣さんはあまり緊張しないで話せるかも。
1つ1つ克服していくしかないんだよね。
そんな事を考えていると、聞き覚えのある声が後ろから聞こえてくる。
「亮?」
声の主が誰なのかすぐに分かったけれど、信じられなくてゆっくりと振り返る。
そこには驚いた表情の幼馴染が立っていたのだった。
「結人!今日はバイトじゃ……」
「委員会出てから行く。お前も実行委員?」
「うん、帰宅部だから決まっちゃって……」
「…………そうか」
そこまで会話したところで、結人は自分のクラスの席へと向かっていった。
わ――……嬉しいな……。
思いがけず放課後に一緒にいられる機会が出来て、浮かれている自分がいる。
結人は立候補したのかな。
どうして実行委員になったんだろう。色々聞きたい事があるけれど、今はお預けだった。
僕の隣に座る新垣さんが結人に挨拶をしている姿が目に入り、6組の自分のクラスの女子にも腕を引かれている結人は、やっぱりモテるんだな。
背も高いし、カッコいいもんね。
路上で色々あった時も、女性が結人の腕に絡みついて密着していたし、一緒にいるとそういうのを目の当たりにする機会が多い。
瞬間、チクリと胸が痛んだ。
なんだろう?胃の調子でも悪いのかな。
それは一瞬だったので何の痛みかが分からなかったけれど、その痛みは僕の心に確かに根付き、体育祭が近づく頃には僕の心を確実に変化させていくのだった。
10
あなたにおすすめの小説
幼馴染が「お願い」って言うから
尾高志咲/しさ
BL
高2の月宮蒼斗(つきみやあおと)は幼馴染に弱い。美形で何でもできる幼馴染、上橋清良(うえはしきよら)の「お願い」に弱い。
「…だからってこの真夏の暑いさなかに、ふっかふかのパンダの着ぐるみを着ろってのは無理じゃないか?」
里見高校着ぐるみ同好会にはメンバーが3人しかいない。2年生が二人、1年生が一人だ。商店街の夏祭りに参加直前、1年生が発熱して人気のパンダ役がいなくなってしまった。あせった同好会会長の清良は蒼斗にパンダの着ぐるみを着てほしいと泣きつく。清良の「お願い」にしぶしぶ頷いた蒼斗だったが…。
★上橋清良(高2)×月宮蒼斗(高2)
☆同級生の幼馴染同士が部活(?)でわちゃわちゃしながら少しずつ近づいていきます。
☆第1回青春×BL小説カップに参加。最終45位でした。応援していただきありがとうございました!
小石の恋
キザキ ケイ
BL
やや無口で平凡な男子高校生の律紀は、ひょんなことから学校一の有名人、天道 至先輩と知り合う。
助けてもらったお礼を言って、それで終わりのはずだったのに。
なぜか先輩は律紀にしつこく絡んできて、連れ回されて、平凡な日常がどんどん侵食されていく。
果たして律紀は逃げ切ることができるのか。
溺愛系とまではいかないけど…過保護系カレシと言った方が 良いじゃねぇ? って親友に言われる僕のカレシさん
315 サイコ
BL
潔癖症で対人恐怖症の汐織は、一目惚れした1つ上の三波 道也に告白する。
が、案の定…
対人恐怖症と潔癖症が、災いして号泣した汐織を心配して手を貸そうとした三波の手を叩いてしまう。
そんな事が、あったのにも関わらず仮の恋人から本当の恋人までなるのだが…
三波もまた、汐織の対応をどうしたらいいのか、戸惑っていた。
そこに汐織の幼馴染みで、隣に住んでいる汐織の姉と付き合っていると言う戸室 久貴が、汐織の頭をポンポンしている場面に遭遇してしまう…
表紙のイラストは、Days AIさんで作らせていただきました。
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
笑って下さい、シンデレラ
椿
BL
付き合った人と決まって12日で別れるという噂がある高嶺の花系ツンデレ攻め×昔から攻めの事が大好きでやっと付き合えたものの、それ故に空回って攻めの地雷を踏みぬきまくり結果的にクズな行動をする受け。
面倒くさい攻めと面倒くさい受けが噛み合わずに面倒くさいことになってる話。
ツンデレは振り回されるべき。
【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。
僕のために、忘れていて
ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────
あなたのいちばんすきなひと
名衛 澄
BL
亜食有誠(あじきゆうせい)は幼なじみの与木実晴(よぎみはる)に好意を寄せている。
ある日、有誠が冗談のつもりで実晴に付き合おうかと提案したところ、まさかのOKをもらってしまった。
有誠が混乱している間にお付き合いが始まってしまうが、実晴の態度はいつもと変わらない。
俺のことを好きでもないくせに、なぜ付き合う気になったんだ。
実晴の考えていることがわからず、不安に苛まれる有誠。
そんなとき、実晴の元カノから実晴との復縁に協力してほしいと相談を受ける。
また友人に、幼なじみに戻ったとしても、実晴のとなりにいたい。
自分の気持ちを隠して実晴との"恋人ごっこ"の関係を続ける有誠は――
隠れ執着攻め×不器用一生懸命受けの、学園青春ストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる