【完結】ままならぬ僕らのアオハルは。~嫌われていると思っていた幼馴染の不器用な執着愛は、ほんのり苦くて極上に甘い~

Tubling@書籍化&コミカライズ決定

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自分を解放する時

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 残り一話になります!
 最終話は夜19時更新です~~よろしくお願いいたします!<(_ _)>

 ~・~・~・~・~
 

 「なぁ、ここ1組なんだけど」
 
 「知ってる~~」
 
 「自分のクラスで食えよ!」
 
 「もう米粒飛んできた~~下品~~」
 
 「おま……っ」
 

 雫のツッコミに駆流クンは全く動じる事なく、1組の中に普通に溶け込みながらお弁当を広げていた。

 それにしても駆流クンのお弁当……お重だ。

 確か家がお金持ちだって聞いたような。


 「これ全部駆流クンの?」

 「そうそう。お手伝いさんがいつも作り過ぎるんだよね。亮クンも食べて」

 「あ、ありがとう」


 僕は母さんが作ってくれた弁当に視線を移し、相変わらずのキャラ弁にちょっぴり恥ずかしくなる。

 上手だから作りたいんだろうけど……高校生の息子にキャラ弁って……。


 「亮はおばさんのキャラ弁か」

 「うん……ブレないよね。本人が作りたいだけだろうけど」

 「おばさんらしいな」


 結人は母さんの話をする時、とても表情が柔らかくなる。

 僕はこの表情がとても好きだった……母さんを見ていると加奈おばさんを思い出すんだろうか。

 ふいに結人のお弁当に視線を移すと、なんだかいびつなおかずが並んでいたのだった。


 「結人のは、あの女の人が作ったの?」

 「いや…………あの女とは別居中。もう家にはいねーんだ」

 「え?!」

 「親父と話し合ったらしくて、今離婚に向けて協議中らしい。知らんけど」

 「そ、そうか……」


 突然の展開にどう言葉を返していいのか分からなくなる。

 家族仲が修復すればいいなと思っていたけれど、別居という展開は予想していなかったからだ。

 別居に関しての結人の言葉に胸が痛む。

 彼の中では女性にもおじさんにも許せない気持ちが渦巻いているんだろうな……受けた傷は大きいだろうし、ちょっとやそっとで解決出来る問題ではないもんね。

 でもあの女性が家の中からいなくなったと聞いて、僕は不謹慎にもホッとしてしまったのだ。

 もう結人を傷つける事を言う人間はいなくなったんだ……良かった。

 幼馴染は少し複雑な表情で自分のお弁当を見せてきて、


 「親父が作った弁当、ぐちゃぐちゃ。マズッ」


 と言いながらおどけて見せる。

 その表情が何とも言えず胸が締め付けられ、ここに誰もいなかったら彼を抱きしめてあげたかった。

 でもシリアスになるのはきっと違うから、僕もふざけ半分でおじさんが作ったお弁当のおかずをつまみ食いしたのだった。


 「玉子いただき!」

 「あ、おい!」

 「んふふっ。……(モグモグ)…………ん?」


 出し巻き玉子と思われるものを1ついただき、よく噛んでいると、何かガリッと音がして歯ごたえがするのでよく噛んだ。

 出し巻きって、こんな歯ごたえあったっけ?

 思っている事が顔に出ていたのか、隣りで結人が気まずそうに答えてくれた。


 「多分それ、殻だ」

 「あ、なるほど。殻か……入っちゃう事あるよね…………ふ、ふふふっ」

 「ははっ!帰ったら指導してやらなきゃな」


 結人は何か憑き物が落ちたように表情が晴れていて、大きな口を開けて笑っていた。

 大空に溶けてしまいそうなほど、清々しい表情――――
 
 実行委員の仕事でもバタバタと走り回った僕たちは思いの外箸が進み、自分のお弁当を平らげた後、駆流クンのお弁当もいただいて大満足の昼食になったのだった。

 その後は保護者と一緒に参加する玉入れが行われ、僕は母さんの姿を見付けたのでめがけて走っていった。


 「お疲れ!」

 「亮~~お弁当、しっかり食べた?」

 「もちろん!美味しかったよ」

 「良かった!じゃあ玉入れ、気合いれるわよ」

 「ははっ」
 

 本当はキャラ弁恥ずかしいって言いたいけど、美味しかったって言うと凄く喜ぶから、まぁいっかってなっちゃうんだよね。

 お弁当もいつまで作ってもらえるか分からないし、もうずっとキャラ弁でもいいかなって思い始めている自分が怖い。


 「さっき結人くんのお父さん見たわよ。あの女はいなかったけど」

 「え、本当?!」


 母さんの言葉を聞いて結人の姿を探すと、6組のあたりにおじさんと二人で並んでいるのが見えた。

 おじさん、来てくれたんだな。

 僕はお昼に聞いた久楽家の話を母さんに伝え、もうあの女性は来ないだろうという事を話した。


 「そう……これから色々大変でしょうけど、私達も協力してあげなきゃね」

 「うん」


 そんな事を話しながら玉入れはスタートし、1組も頑張ったけど7位に終わり、母さんは保護者席に戻っていったのだった。

 ちなみに6組は1位だったので、遠目から結人たちが喜んでいる姿が目に入ってきて、おじさんも笑ってるし玉入れの結果そっちのけで嬉しくなったのだった。

 ~・~・~・~・~
 
 そしてようやく1組が活躍出来る種目、計算競争リレーの時間がやってきた。

 メンバーに入ってる僕と雫はグラウンド中央に集合し、ルール説明や待機場所などの確認をしていった。

 計算をしなくてはならないのでバトンの受け渡しではなく、タスキの受け渡しで行われる。

 一人1か所計算する場所が設けられ、そこに先生がそれぞれ立っているので、答えを先生の耳元にメガホンを使って申告する。

 そして正解したら次の走者のところへ走り出すのだ。

 正解出来ないと走り出せないので、各クラス数学が得意な人がメンバーに選ばれていた。

 出題される問題は数学の先生にゆだねられているので、僕もどんな問題なのかドキドキが止まらない……パニックになったら頭回らなくなっちゃうし、とにかく落ち着かなきゃ。


 「緊張するな~~でも俺らなら大丈夫だろ」

 「そう思いたい……」

 「おいおい、大丈夫か?」


 雫は自信満々なのに僕ときたら…………一応クラスでトップだったとは言え、この自己肯定感の低さと人前が苦手な性格も相まって、冷静に出来るか自信がない。

 必死に深呼吸する僕に雫が肩を揉んでくれる。


 「亮なら大丈夫だ。久楽もあそこで応援してくれてるぞ」


 雫の指さす方を見てみると、結人と駆流クンが大きく手を振っているのが目に入ってきた。

 わざわざゴール近くを陣取ってくれて……嬉しいな。

 カッコいいところを見せたい。


 「うん、がんばる」

 「俺がぶっちぎりで亮にタスキ渡すからな!」

 「ははっ。期待してる!」


 雫と肩を組み、顔を見合わせて笑った。

 学校のイベントをこんなに楽しめるなんて小学生以来だ……失敗なんて恐れている場合じゃないよね。

 友達も沢山いて、こんなに幸せな体育祭なんだから楽しまないと!

 意気込みを新たにそれぞれの持ち場に散り、僕はアンカーの待機場所に行ったのだった。

 そしてスタートの合図が鳴り、第一走者がスタートをした。


 「ガンバレ――――!!!」


 アンカーの場所で待機しながら自分のクラスを力いっぱい応援する。

 やっぱり僕のクラスは速い……!第ニ走者のところで1位に躍り出て、宣言通り雫はぶっちぎり1位で猛然と走ってきた。

 雫は計算も早いし、空手やってたから足も速いんだった。
 
 そして無事に雫からタスキを受け取り、計算場所へと走っていった。

 これだけ差が開いていれば僕の足でも追い抜かれる事はないかも……問題は「x³+27」、因数分解だ。

 見た瞬間に答えが頭に浮かんだので先生のもとへ走り、メガホンを使って「 (x+3) (x²-3x+9) 」と答えると、「OK!」という声がしたのですぐにゴールに向かった。

 良かった、これで1位を死守出来る……!

 結人や駆流クンの顔がチラリと見え、ゴール付近にはクラスメイトが待っているのが目に入ってきた。

 もうすぐ。

 あと少し。

 しかし寸でのところで躓き、思い切り転んでしまったのだった。

 その衝撃で眼鏡も吹っ飛んで視界が一気にぼやける。

 最悪だ……どうして僕ってこうなの…………。

 でも遠くから僕を応援する幼馴染の声が微かに聞こえてくる。

 嘆いてる場合じゃない……!

 眼鏡を拾っている時間もないし、とにかく1位を取るんだ。

 大好きな幼馴染の声を聞いて迷いがなくなった僕は、ぼやける視界の中走り出した。

 右膝がズキズキする……でもそんなの構っていられない……!目の前で皆が叫んでいるのが聞こえるから……その方向へ走っていけば大丈夫。

 そしてゴールテープを切ったのを感じ、無事に1位を死守出来たのだと実感した瞬間、クラスメイトに囲まれて皆に抱きつかれたのだった。


 「亮~~~やったぞ!!」「1組が1位だ!!!」「よく走ったな!」


 皆がとても嬉しそうだ……走り切って良かった。

 1組は、運動系の種目でほとんど全滅のような成績だったので、この計算競争リレーでのクラスメイトや担任の意気込みが凄かったのだ。

 喜びもひとしおだよね。


 「皆、ごめんね。途中コケちゃってめちゃくちゃ焦った」

 「いや、だいじょう、ぶ……」


 目の前がぼやけているのでよく分からなかったけれど、なぜか突然クラスメイトが静まり返ってしまう。

 どうしたんだろう?


 「ど、どうしたの?」

 「いや、お前……その顔…………」

 「あ!」


 しまった…………眼鏡してないの、忘れてた……皆変な感じになっちゃってる……!

 どうしよう、笑われたら。

 咄嗟に顔を隠したけれど、クラスメイトの絶叫が響き渡ったあと、皆の反応は僕が予想していたものとは全く違うものだった。


 「「えぇぇぇえええ!!」」

 「お前、なんで隠すんだよ?!」「美人!!」「可愛い~~」「ずっとそのままでいろ!」


 中学の時とは真逆の反応に、僕の方が呆気に取られて立ち尽くしてしまったのだった。
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