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4・集団お見合いパーティー(通称:お茶会)
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狼獣人の長老たちが企画した大茶会。
狼獣人の繁栄のために、狼獣人の子ども達を一同に集めた集団お見合いパーティー当日。
「お姉様! これ……僕だと思って連れてって。」
リノが差し出したのは、羊の形はしているが、左右の耳の大きさも違い、目も少しズレている。どう見ても不恰好な“ぬいぐるみ”だった。
リノの手には、バンソーコが貼られている。
「仕方ないわね。……ケガまでして作ってくれたのよね? 連れていってあげますわ。」
「うん。ずっと一緒だよ。」
リノはクラリーチェの背中に“ぬいぐるみ”を背負わせ、レースのリボンでクラリーチェと“ぬいぐるみ”をキュッとかたく結んだ。
(なんでリノはお茶会に参加できないのかしら? 羊獣人だから? 狼獣人がたくさんいる場所は危ないのかしら?)
そんなことを考えながらクラリーチェは馬車に乗りこんだ。
クラリーチェたちが屋敷を出るのを見送ったリノは、
指先で、ピンッとバンソーコを弾き飛ばす。
「ふふ……やっぱり、リーリーは優しいなぁ。可愛がってね。僕の抜け毛100%詰め“ぬいぐるみ”。」
誰にも聞かれないように、そっと彼女を“リーリー”と呼ぶ。
自分だけの、誰にも渡さない特別な愛称。
(リノとクラリーチェの名前の一文字が重なるのが、たまらなく好き。)
◆◆◆
お茶会会場は、若き狼獣人たちで賑わっていた。
狼は生涯、1人の伴侶を愛しつづける性質を持っている。
“番”の匂いも重視される風潮が残っているため、獣人の混血も進んでいる。
——が、どうせなら同種族同士で結ばれてくれれば……と、血筋や家柄などの階級に関係のない同種族の交流の場は重要視されていた。
そんな中——
「……! これは……!」
公爵家の令息ガラッドは、一心不乱にクラリーチェに向って走った。
彼の鼻が、狼の嗅覚が、クラリーチェに反応していた。
「私の……番だ!! 番がいる!」
(なんだ、この……この芳醇な、特別な香りは……!)
クラリーチェから漂う“番”の匂いに、完全に惹きつけられガラッドは、確信した。
(これは……運命の番だ!)
ガラッドはクラリーチェが背負った“ぬいぐるみ”を背後からつかむ。
不意を突かれたクラリーチェが後ろに倒れこんだ。
「えっ、なに、きゃあ!」
転んだ拍子に、頬(朝の挨拶)と、まぶた(おやすみの挨拶)を擦りつけた部分が、ダイレクトにガラッドの嗅覚を襲う。
──濃厚な、番の香り。
「女神だ……っ!」
ガラッドは、完全に恋に落ちた。
「彼女こそ、私の運命の番だ!!」
もう、誰にも止められない。
当然、リノが「たっぷり」マーキングしておいた抜け毛100%詰め“ぬいぐるみ”のことなど、誰も知らない。
◆◆◆
会場の片隅では、
クラリーチェの実弟ウルトゥムとガラッドの妹フリーナエが、のんびりとお茶を飲んでいた。
「……目立つのは疲れるよね。」
「ええ……こういうときは、静かにしてるのに限りますわ。」
狼獣人同士であり、階級もつりあう上流貴族同士の番の出現に、お茶会会場は鉢の巣をつついたような大騒ぎにつつまれていた。
涙を流しながら天を仰いでいる長老もいるなか──
二人は空気のように存在感を消し、ほんわかした、穏やか~なティータイムを楽しんだ。
狼獣人の繁栄のために、狼獣人の子ども達を一同に集めた集団お見合いパーティー当日。
「お姉様! これ……僕だと思って連れてって。」
リノが差し出したのは、羊の形はしているが、左右の耳の大きさも違い、目も少しズレている。どう見ても不恰好な“ぬいぐるみ”だった。
リノの手には、バンソーコが貼られている。
「仕方ないわね。……ケガまでして作ってくれたのよね? 連れていってあげますわ。」
「うん。ずっと一緒だよ。」
リノはクラリーチェの背中に“ぬいぐるみ”を背負わせ、レースのリボンでクラリーチェと“ぬいぐるみ”をキュッとかたく結んだ。
(なんでリノはお茶会に参加できないのかしら? 羊獣人だから? 狼獣人がたくさんいる場所は危ないのかしら?)
そんなことを考えながらクラリーチェは馬車に乗りこんだ。
クラリーチェたちが屋敷を出るのを見送ったリノは、
指先で、ピンッとバンソーコを弾き飛ばす。
「ふふ……やっぱり、リーリーは優しいなぁ。可愛がってね。僕の抜け毛100%詰め“ぬいぐるみ”。」
誰にも聞かれないように、そっと彼女を“リーリー”と呼ぶ。
自分だけの、誰にも渡さない特別な愛称。
(リノとクラリーチェの名前の一文字が重なるのが、たまらなく好き。)
◆◆◆
お茶会会場は、若き狼獣人たちで賑わっていた。
狼は生涯、1人の伴侶を愛しつづける性質を持っている。
“番”の匂いも重視される風潮が残っているため、獣人の混血も進んでいる。
——が、どうせなら同種族同士で結ばれてくれれば……と、血筋や家柄などの階級に関係のない同種族の交流の場は重要視されていた。
そんな中——
「……! これは……!」
公爵家の令息ガラッドは、一心不乱にクラリーチェに向って走った。
彼の鼻が、狼の嗅覚が、クラリーチェに反応していた。
「私の……番だ!! 番がいる!」
(なんだ、この……この芳醇な、特別な香りは……!)
クラリーチェから漂う“番”の匂いに、完全に惹きつけられガラッドは、確信した。
(これは……運命の番だ!)
ガラッドはクラリーチェが背負った“ぬいぐるみ”を背後からつかむ。
不意を突かれたクラリーチェが後ろに倒れこんだ。
「えっ、なに、きゃあ!」
転んだ拍子に、頬(朝の挨拶)と、まぶた(おやすみの挨拶)を擦りつけた部分が、ダイレクトにガラッドの嗅覚を襲う。
──濃厚な、番の香り。
「女神だ……っ!」
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「彼女こそ、私の運命の番だ!!」
もう、誰にも止められない。
当然、リノが「たっぷり」マーキングしておいた抜け毛100%詰め“ぬいぐるみ”のことなど、誰も知らない。
◆◆◆
会場の片隅では、
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「……目立つのは疲れるよね。」
「ええ……こういうときは、静かにしてるのに限りますわ。」
狼獣人同士であり、階級もつりあう上流貴族同士の番の出現に、お茶会会場は鉢の巣をつついたような大騒ぎにつつまれていた。
涙を流しながら天を仰いでいる長老もいるなか──
二人は空気のように存在感を消し、ほんわかした、穏やか~なティータイムを楽しんだ。
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