番が逃げました、ただ今修羅場中〜羊獣人リノの執着と婚約破壊劇〜

く〜いっ

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3・愛と執着の育成記録

クラリーチェの実弟、ウルトゥム・フォン・エデルシアは怯えていた。

クラリーチェお姉様が連れて来た、羊獣人の目が怖かった。

「僕……狼なのにな……強いはずなのに……」

ウルトゥムがクラリーチェのに甘えようとするたび、リノはニコリと微笑む。

笑いの形に形づくられたその瞳は、決して笑っていなかった。白い巻き毛から覗く丸まった大きな角も恐ろしい。

ウルトゥムは次第に自分の弱さを受け入れた。気づけば家の中でも壁の花。
彼の存在は、どんどん希薄になっていった。


(僕だけが、お姉様の弟だ。)

リノは静かに、確実に、弟ポジションを奪い取っていく。



◆◆◆

リノは礼儀作法の授業が終わったある日、クラリーチェにひとつの提案をされた。

「リノ、挨拶の練習をしましょ!」

彼はお手本通り、彼女の手の甲にキスを落とす。

「え~? それは騎士の挨拶よ! ダメね、リノ。」

彼女はあっさりと手を引っ込め、リノのほっぺに、ちゅっとキスをした。

「家族の挨拶はこうよ。」

リノの脳が、一瞬フリーズ。

(………………。)

「ちなみにね! おやすみの挨拶は——まぶたに ちゅっ とするのよ!」

「それ! 毎日やって!」

「え?」

「練習したいの? じゃあわたくしがお手本を見せてあげるから、リノもわたくしにしないとダメよ? 今晩から特訓よ」

リノは、もげそうな勢いで首を縦に振った。

「家族の挨拶をマスターするわよ!」

二カッと笑うクラリーチェを見つめながら………

(——これは、マーキングだ。)

彼は心の中で、そう結論付けた。

リノはそれ以来、「おはようのマーキング」「おやすみのマーキング」を一日も欠かさなかった。


充実した日々。
でも、クラリーチェの婚約者が決まる日が刻一刻とせまっていた。

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