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5・マーキングの勘違い
「僕のだよ。誰も近づくな。」
リノは、クラリーチェに日々マーキングを続ける。
お手紙、プレゼント、衣服、寝具――すべてにこっそり自分の匂いをつける。
(これで、他のヤツは絶対に近づけない……。)
けれど――。
狼獣人のガラッドは、その“番の匂い”に導かれ、ますますクラリーチェに惹かれていく。
(なんで……!? 何であのゴミ、どんどん来るの!? 他の男のマーキングに気がつかないわけ!? 鼻、腐ってるんじゃないの!?)
リノは内心焦る。けれど態度には出さない。
「……お姉様が嫁がれるときは、僕が必ず専属従者として、また護衛騎士としてお供します。」
静かに宣言するリノ。
目は笑っていない。仄暗い光を、クラリーチェの隣でお茶を飲んでいたウルトゥムは正面から見てしまった。
(やばい……空気になろう……僕は……ただの背景……)
ウルトゥムは心で涙する。
◆◆◆
毎日のように、届くガラッドからの手紙と贈り物にクラリーチェは完全に舞い上がってしまっていた。
「ガラッド様って、なんてロマンティストなのかしら!」
手紙に鼻を寄せるクラリーチェ。
(あら? これ、どこかで嗅いだことのある香り……?)
まったく気付かない。
「今日は、どんなプレゼントかしら?」
既視感がある羊の“ぬいぐるみ”、ブローチ、リボン、ハンカチ……
すべて、リノの丁寧なマーキング済。
(リーリー、僕の香り、ちゃんと感じてくれてるかな……)
日々、美しく成長していくクラリーチェを思い、リノは今晩もお手製クラリーチェ人形にキスをした。
「はぁ~残念。狼なみに嗅覚がよかったら、リーリーの匂いをもっと吸い込めるのに……羊の鼻、キラーイ」
◆◆◆
狼獣人の結束を強めたい一族の長老たちは、ミナ公爵家のガラッドとエデルシア伯爵家のクラリーチェの結婚を心待ちにしていた。
獣人の混血が進むなか、同族同士で番が現れるとは本当にめでたい! と、両家以上に盛りあがっている。
その浮かれムードのあおりをくったのはリノ。
エデルシア家は、リノの存在を他家から隠した。
「ガラッド様とお会いするとき、リノの同行はダメよ。ウルトゥムを連れて行きなさい」
「……え? お母様どうして? リノのほうがウルトゥムより強いじゃない。ウルトゥムに護衛なんてできるの」
「護衛の問題じゃないわ。ガラッド様はミナ公爵家の令息。他の獣人の血が混じっていない純潔一族で、家格が違うの。義弟に羊獣人がいる――なんて知られたら……」
クラリーチェは不満げだったが、リノは、にこりと微笑んだ。
「大丈夫だよ、お姉様。ウルトゥム様もわかっているよね!!」
「はい! お姉様の抜け毛1本、落とさないよう全力でお守りします!」
ウルトゥムがビシッ! と立ち上がり、敬礼をした。
(結婚式まで、この緊張がつづくのか……)
ウルトゥムほど結婚式を心待ちに、そして恐怖に思っている存在はいなかった。
(お姉様が結婚式したら、リノも一緒についていく! お姉様が結婚式したら、リノも一緒についていく!)
念仏のように、自分の平和を祈りつづける。
……本当の意味での被害者はウルトゥム……
リノは、クラリーチェに日々マーキングを続ける。
お手紙、プレゼント、衣服、寝具――すべてにこっそり自分の匂いをつける。
(これで、他のヤツは絶対に近づけない……。)
けれど――。
狼獣人のガラッドは、その“番の匂い”に導かれ、ますますクラリーチェに惹かれていく。
(なんで……!? 何であのゴミ、どんどん来るの!? 他の男のマーキングに気がつかないわけ!? 鼻、腐ってるんじゃないの!?)
リノは内心焦る。けれど態度には出さない。
「……お姉様が嫁がれるときは、僕が必ず専属従者として、また護衛騎士としてお供します。」
静かに宣言するリノ。
目は笑っていない。仄暗い光を、クラリーチェの隣でお茶を飲んでいたウルトゥムは正面から見てしまった。
(やばい……空気になろう……僕は……ただの背景……)
ウルトゥムは心で涙する。
◆◆◆
毎日のように、届くガラッドからの手紙と贈り物にクラリーチェは完全に舞い上がってしまっていた。
「ガラッド様って、なんてロマンティストなのかしら!」
手紙に鼻を寄せるクラリーチェ。
(あら? これ、どこかで嗅いだことのある香り……?)
まったく気付かない。
「今日は、どんなプレゼントかしら?」
既視感がある羊の“ぬいぐるみ”、ブローチ、リボン、ハンカチ……
すべて、リノの丁寧なマーキング済。
(リーリー、僕の香り、ちゃんと感じてくれてるかな……)
日々、美しく成長していくクラリーチェを思い、リノは今晩もお手製クラリーチェ人形にキスをした。
「はぁ~残念。狼なみに嗅覚がよかったら、リーリーの匂いをもっと吸い込めるのに……羊の鼻、キラーイ」
◆◆◆
狼獣人の結束を強めたい一族の長老たちは、ミナ公爵家のガラッドとエデルシア伯爵家のクラリーチェの結婚を心待ちにしていた。
獣人の混血が進むなか、同族同士で番が現れるとは本当にめでたい! と、両家以上に盛りあがっている。
その浮かれムードのあおりをくったのはリノ。
エデルシア家は、リノの存在を他家から隠した。
「ガラッド様とお会いするとき、リノの同行はダメよ。ウルトゥムを連れて行きなさい」
「……え? お母様どうして? リノのほうがウルトゥムより強いじゃない。ウルトゥムに護衛なんてできるの」
「護衛の問題じゃないわ。ガラッド様はミナ公爵家の令息。他の獣人の血が混じっていない純潔一族で、家格が違うの。義弟に羊獣人がいる――なんて知られたら……」
クラリーチェは不満げだったが、リノは、にこりと微笑んだ。
「大丈夫だよ、お姉様。ウルトゥム様もわかっているよね!!」
「はい! お姉様の抜け毛1本、落とさないよう全力でお守りします!」
ウルトゥムがビシッ! と立ち上がり、敬礼をした。
(結婚式まで、この緊張がつづくのか……)
ウルトゥムほど結婚式を心待ちに、そして恐怖に思っている存在はいなかった。
(お姉様が結婚式したら、リノも一緒についていく! お姉様が結婚式したら、リノも一緒についていく!)
念仏のように、自分の平和を祈りつづける。
……本当の意味での被害者はウルトゥム……
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