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53.公民館のトイレ①(怖さレベル:★★☆)
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(怖さレベル:★★☆:ふつうに怖い話)
オレは、小学校の時からずっと剣道をやってました。
これでも有段者で、高校生になっても
町の公民館で毎週剣道の稽古をかかさず続けていました。
地方の公民館なんで、
でっかい道場みたいなエアコンとかもなくって。
夏はセンプウキと保冷剤、冬は電気ストーブとカイロでしのぎながらも、
強くなっていくのが本当に楽しくて、ずっと続けていたんです。
同じ剣道仲間は、師範も含めてだいたい20人ほど。
有名な道場にくらべればかなり小規模ですが、
市から補助金が出るとかで格安で練習できるので、
毎年数人は新しく入会する子どももいて、
わいわいとにぎやかで気に入っていたんです。
と、話がそれてしまいましたが、
オレがそれを体験したのは、秋も半ばを過ぎたある夜のことでした。
その日も、いつも通り21時に稽古を終え、
着替えもすませて、仲間とトイレに入った時でした。
ピチャ、ピチャ、ピチャ。
二つある流し台の片方から、水がチロチロと漏れています。
「オイ、誰か使ってたか?」
友人に聞いても、知らないというのです。
うちは母が節約家の為、
こういう水の出しっぱなしはかなり口酸っぱく言われていたので、
「まったく……」
オレはブツクサ文句を言いつつ、
かなりキツメに蛇口をひねって、その日は帰路につきました。
そして、
そんなできごとがあったことすら忘れていた次の週。
只でさえ冷え始めた秋の後半。
夜には雨が降り始め、
冷える公民館内で引っ張り出してきたストーブを稼働させつつ
なんとか練習を終えました。
寒さを紛らわすためにいつもより多めにした素振りのせいか、
どっと疲労を感じつつ、またその日も友人とトイレに入ったのです。
ピチャ、ピチャ、ピチャ。
「あれ?」
既視感のある水音。
例の二つある手洗い場の片方の蛇口から、
またしても水が漏れているのです。
「あ、こないだの。お前、かなりキツく締めてなかったっけ」
友人も気づいたらしく、先週のことを訊ねてきます。
「ああ……おっかしいな。稽古前は気づかなかったけど」
そうなのです。
今日は稽古前にもトイレを使ったのですが、
その時にはそんな水漏れなどまったく気づきませんでした。
「ったく」
また誰かが中途半端に閉めたのでしょう。
仕方ないと再びぎゅっと栓を閉めようとそれに触れた瞬間でした。
ピチャ、ピチャ……ビチャッ。
「ぅわっ」
目前で、ドバッ、と赤さび色の汚水が弾けたのです。
「うわ、なんだコレ……壊れてんのか?」
傍で見ていた友人も、引き気味でトイレ内に充満した
鉄さびっぽい臭いに鼻をつまんでいました。
「……ぼ、ボロいから、仕方ねぇよな」
あまりにもタイミングが合いすぎて薄気味の悪さを感じましたが、
状況としては、漏れた水道の蛇口を閉めようとしただけ。
べつだん、他に何かしたわけでもありません。
「とりあえず、先生に言っとこう……」
「そ、そうだな……」
早々とトイレから退散して、師範にトイレの蛇口がおかしいと伝え、
その日は寄り道もせずにそそくさと自宅へ帰りました。
「……あれ」
また、次の週のことです。
いつも通り練習を終え、
少し気後れしつつも友人をともなってトイレに入れば、
例の手洗い台には張り紙がされていました。
『故障中につき、使用禁止』
少しだけホッとして、
見るからに安心した表情の友人とともに用を足したのです。
が。
ピチャ、ピチャ、ピチャ。
さぁトイレから出よう、とした時です。
聞こえてきた覚えのある音に、ゾッと背筋が凍りました。
「お、オイ……また」
友人も、唇を震わせながら、
その故障中の張り紙を見つめています。
その、誰も使用していないはずの蛇口から、
またしてもタイミングを見たかのように水が滴り始めたのです。
「こ……壊れてるだけ、だって」
友人にかけた自分の声も、どこか覇気がありません。
今までのようにそれを止める気にはとてもなれず、
「な、なぁ、放っといて帰ろうぜ」
「そ……そうだな」
この現象を無視して、さっさと出てしまおうと足を踏み出しました。
すると。
ピチャ、ピチャ……ビチャッ、ジャジャッ。
「ひ、ひぃっ」
突如決壊したかのごとく激しく水が溢れる音。
と同時に、鉄さびのツーンとした臭いが充満してきます。
「ぜ、ぜってー変だって! さっさと帰ろう!」
尋常じゃない事態、ということだけはわかったので、
友人を急かしてトイレから飛び出しました。
>>
オレは、小学校の時からずっと剣道をやってました。
これでも有段者で、高校生になっても
町の公民館で毎週剣道の稽古をかかさず続けていました。
地方の公民館なんで、
でっかい道場みたいなエアコンとかもなくって。
夏はセンプウキと保冷剤、冬は電気ストーブとカイロでしのぎながらも、
強くなっていくのが本当に楽しくて、ずっと続けていたんです。
同じ剣道仲間は、師範も含めてだいたい20人ほど。
有名な道場にくらべればかなり小規模ですが、
市から補助金が出るとかで格安で練習できるので、
毎年数人は新しく入会する子どももいて、
わいわいとにぎやかで気に入っていたんです。
と、話がそれてしまいましたが、
オレがそれを体験したのは、秋も半ばを過ぎたある夜のことでした。
その日も、いつも通り21時に稽古を終え、
着替えもすませて、仲間とトイレに入った時でした。
ピチャ、ピチャ、ピチャ。
二つある流し台の片方から、水がチロチロと漏れています。
「オイ、誰か使ってたか?」
友人に聞いても、知らないというのです。
うちは母が節約家の為、
こういう水の出しっぱなしはかなり口酸っぱく言われていたので、
「まったく……」
オレはブツクサ文句を言いつつ、
かなりキツメに蛇口をひねって、その日は帰路につきました。
そして、
そんなできごとがあったことすら忘れていた次の週。
只でさえ冷え始めた秋の後半。
夜には雨が降り始め、
冷える公民館内で引っ張り出してきたストーブを稼働させつつ
なんとか練習を終えました。
寒さを紛らわすためにいつもより多めにした素振りのせいか、
どっと疲労を感じつつ、またその日も友人とトイレに入ったのです。
ピチャ、ピチャ、ピチャ。
「あれ?」
既視感のある水音。
例の二つある手洗い場の片方の蛇口から、
またしても水が漏れているのです。
「あ、こないだの。お前、かなりキツく締めてなかったっけ」
友人も気づいたらしく、先週のことを訊ねてきます。
「ああ……おっかしいな。稽古前は気づかなかったけど」
そうなのです。
今日は稽古前にもトイレを使ったのですが、
その時にはそんな水漏れなどまったく気づきませんでした。
「ったく」
また誰かが中途半端に閉めたのでしょう。
仕方ないと再びぎゅっと栓を閉めようとそれに触れた瞬間でした。
ピチャ、ピチャ……ビチャッ。
「ぅわっ」
目前で、ドバッ、と赤さび色の汚水が弾けたのです。
「うわ、なんだコレ……壊れてんのか?」
傍で見ていた友人も、引き気味でトイレ内に充満した
鉄さびっぽい臭いに鼻をつまんでいました。
「……ぼ、ボロいから、仕方ねぇよな」
あまりにもタイミングが合いすぎて薄気味の悪さを感じましたが、
状況としては、漏れた水道の蛇口を閉めようとしただけ。
べつだん、他に何かしたわけでもありません。
「とりあえず、先生に言っとこう……」
「そ、そうだな……」
早々とトイレから退散して、師範にトイレの蛇口がおかしいと伝え、
その日は寄り道もせずにそそくさと自宅へ帰りました。
「……あれ」
また、次の週のことです。
いつも通り練習を終え、
少し気後れしつつも友人をともなってトイレに入れば、
例の手洗い台には張り紙がされていました。
『故障中につき、使用禁止』
少しだけホッとして、
見るからに安心した表情の友人とともに用を足したのです。
が。
ピチャ、ピチャ、ピチャ。
さぁトイレから出よう、とした時です。
聞こえてきた覚えのある音に、ゾッと背筋が凍りました。
「お、オイ……また」
友人も、唇を震わせながら、
その故障中の張り紙を見つめています。
その、誰も使用していないはずの蛇口から、
またしてもタイミングを見たかのように水が滴り始めたのです。
「こ……壊れてるだけ、だって」
友人にかけた自分の声も、どこか覇気がありません。
今までのようにそれを止める気にはとてもなれず、
「な、なぁ、放っといて帰ろうぜ」
「そ……そうだな」
この現象を無視して、さっさと出てしまおうと足を踏み出しました。
すると。
ピチャ、ピチャ……ビチャッ、ジャジャッ。
「ひ、ひぃっ」
突如決壊したかのごとく激しく水が溢れる音。
と同時に、鉄さびのツーンとした臭いが充満してきます。
「ぜ、ぜってー変だって! さっさと帰ろう!」
尋常じゃない事態、ということだけはわかったので、
友人を急かしてトイレから飛び出しました。
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