【電子書籍化】ホラー短編集・ある怖い話の記録~旧 2ch 洒落にならない怖い話風 現代ホラー~

榊シロ

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147.大嫌いな妹(怖さレベル:★☆☆)

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(怖さレベル:★☆☆:微ホラー・ほんのり程度)
※イジメ、死に関して不快な表現有り。ご注意※

おれ、妹のこと、大っ嫌いだったんです。

すぐ泣くし、ケンカすりゃあおれが悪いって話になるし、両親とも、いっつも妹の味方だったし。

免許をとったばっかのおれの車の助手席にいっつも陣取って、彼女のひとりも作れやしない。
その上、おれが友だちと遊ぶときにもついてきたがって、友だちにはシスコンって勘違いされる始末だし。

まったく、はた迷惑で小生意気な妹でしたよ。

ええ、過去形です。

だって、その妹、死んでしまったんですから。
ええ。あいつが、十五才の時の話です。

……え? はい。病気じゃありません。事故でもありません。

自殺……でした。

小生意気で、いっつもおれにつっかかってきてばかりの、
ひときわ気が強かった妹が、ですよ。

それも、飛び降りです。
学校の屋上からの、飛び降り自殺。

今って、学校の屋上なんてふつう上がれないでしょう?
どうやったのかわかりませんが、非常用扉を開けて入って、飛び降りたみたいです。

両親は、呆然自失ですよ。

おれも、いくら嫌いだったとはいえ、
それを聞いたときには頭が真っ白になりました。

涙すら出せない両親を見ながら、おれは思わず、
「親不孝にもほどがあるだろ」って、骨を見ながらなじりましたよ。

自殺の理由、ですか?
……イジメ、だったみたいです。

あいつ……学校で、イジメられていたんですよ。
まぁ……学校側は最初、認めませんでしたけどね。

妹のヤツ、ちっちぇ頃から習慣で日記をつけてたから、
そこからイジメがわかりました。

両親は、妹の部屋に入ろうともしないから、
おれが探して見つけ、それをもって、学校に行きました。

先生たちは、それはもう大慌てですよ。
まぁ、特大の不祥事でしょうからね。

日記の内容を見る限りじゃ、
担任は知ってて黙秘した、ってのが丸わかり。

平謝りの連続で、おれの方が気分が悪くなるくらいでしたよ。

ああ、イジメてた連中もすぐにわかりました。

なんせ、授業中に乗り込んでったもんでね。
あいつの兄だと名乗ると、複数名、とたんに挙動がおかしくなったもんだから。

おれが「嫌いだった妹をイジメてくれてありがとう」って言ったら、
ただただ「ごめんなさい、ごめんなさい」の平謝りですよ。

やっぱ、人をイジメるような連中ってのは、ちゃんと返事をしないもんなんですかね?
おれはイラついて、思わずグループのトップらしい女の顔をブン殴っちまいましたよ。

ま、騒動で集まってきてた先生方に抑えられて、
それ以上はできなかったんですけどね。

でも、殴られた生徒は頭ぶつけておかしくなっちまったんだか、
おれを前にして、なんともビックリするようなことを言い出したんです。

「あたしたちが突き落としたんです。ごめんなさい」ってね。

……どうにも、おかしいって思ってたんですよ。
あいつが学校の屋上から飛び降りられるわけがない、って。

だって、東京タワーやらスカイツリーやらに、おれを無理やり連れて行くわりに、
高いところが苦手っつっていっつも背中にへばりついていたヤツですよ。

バンジージャンプに行きたいっつったくせに、
当日ビビっちまって、おれだけバンジーさせてケラケラ笑ってた妹が、
どうやってひとりで屋上に入ったんだ、ってずっと奇妙に思ってましたから。

ま……そっからは、警察呼んだりして、ひと悶着ありましたね。
イジメてたグループは、最近、そろって少年院行きが決まりました。

ま、顔と名前はバッチリ覚えてるんで、
刑期が終わった後には、ご挨拶に行くつもりでいますけどねぇ。

殺人とわかった後は、両親も悲しみと無気力から、
怒りと憎しみに感情がシフトしたらしく、
だいぶ気持ちがぐちゃぐちゃになっていたみたいですが、
なんつーか、おれの方が今度は腑抜けちまいまして。

ほら、よく熟年夫婦でケンカばっかしてた夫婦が、
片割れが死んじまうと、とたんに無気力になる、って話、あるでしょう。

たぶんあんな感じで、ケンカばっかしてた妹がいなくなって、
せいせいするはずなのに、なんつーか、張り合いがなくなっちまった、って感じでしょうか。

ああ、不謹慎? どうぞ、好き勝手に言ってください。
なにを言っても言われても、妹はもう、帰ってきませんし。

ま……あんまりにも無気力なおれを見てから、
友人が、ネットから怪しいの見つけてきたんですよ。

イタコ、っつーの? あぁいう、降霊術みたいなのをやる女を。

ま、見た目がいかにも怪しーいおばちゃんでさ。
おれんちに来てすぐ、家の立地がどうたら、鬼門がどうたら、って言ってくるわけです。

うちのじいちゃんが設計士やってたんだから、
そんなん全部完璧に造ってるっつーのに。

そんで、降霊術とやらが始まったら、これもヒドいのなんのって。

妹の霊を宿したソイツは、あろうことか、
おれのことを「お兄ちゃん」なんて言うんですよ。

あいつ、おれのことはいっつも名前で呼び捨ててたクセに。

その上、おれと妹がしょっちゅうケンカしてたって情報だけは拾ってきたのか、
「あんなこと言ったけど、実は悪いって思ってた」やら、
「本当は大好きだったよ」なんて言いやがる。

あの、小生意気でちっとも素直じゃねぇ妹が、
死んでもそんなこと言うかっつーの。

まったく、リサーチ不足もいいとこですよ。

でも、おれがこのまましょぼくれてたら、
こんなとんでもない輩がつけこんでくるのかと思うと、
かえって気合いが入りましてね。

凹んでなるものか、つよく生きるぞ、と、
逆に元気になれたので、ま、ある意味効果はあったのかもしれませんね。

……え? ああ、この足のギプス、気になります?
これ、つい先日、バイクで事故っちまったんですよ。笑えるでしょう?

ほら、車の助手席に、いつも妹を乗せてたって言ったでしょう。

ひとりで運転してると、となりに誰もいないってのがどうにも気になって、
最近、どっか行くときにはもっぱらバイク移動なんです。

で、仕事の帰り。

おれがいつも通り、家に帰る道を走っていて、
目の前の青信号を確認し、左折しようとした瞬間ですよ。

交差点の右側から、直進の車がつっこんできたんです。
ええ、当然、向こう側の信号は赤なのに、ですよ?

正直、走馬灯が見えましたね。
ぶつかるまでが、まるでスローモーションみたいに見えました。

でも、そんな時。
おれの肩が、急にガクッ、と重くなって。

出していたはずのスピードが、突然グンッと遅くなったんです。

あれっ、なんて思ってるうちに、
車はおれのバイクのタイヤに車体をこすって、
体勢がくずれたおれは、その場でひっくり返った、っつーわけです。

バイクと車体の直接衝突がなかったおかげで、
おれは体こそアスファルトに落下して左足を骨折したものの、
見ての通り、他は打ち身と擦り傷くらいで、元気なもんです。

あの時感じた重さ、感覚――
あれは、むかーしおれが、妹をバイクの後ろに二ケツさせてたのと、そっくりだったんですよね。

ったく……思い出さないように、思い出さないように、ってしてんのに、
アイツ、嫌がらせのように出てきやがるんですよ。

どうせなら、ぶつかる直前で助けてくれよ、とも思いますけど、
まぁ、妹はおっちょこちょいなんでね、これくらいの方がらしいってもんです。

それに、おかげで命が助かったってことでしょうし、
ちょっとくらいは、まぁ、感謝してますけどね。

……え? 嫌いですよ、アイツのことなんて。
これっぽっちも、好きなんかじゃありません。

そんなこと言ったら、妹がこの世が名残惜しくなって、
成仏できなくなっちまうかもしれないでしょう。

だから、仏壇に向かって、毎日言ってやってるんですよ。
「サッサと成仏して、あの世で楽しくやってろよ」って。

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