前世水乙女の公爵令嬢は婚約破棄を宣言されました。

克全

文字の大きさ
48 / 63
第二章「恋愛」

47話

しおりを挟む
「姫様。
 完成いたしましたぞ」

「本当ですか。
 では、火竜を斃せる武器が完成したのですね」

「いえ、まだでございます。
 材料が少な過ぎます。
 ですが、今迄よりは簡単にドラゴニュートを斃すことは出来ます」

「そうですか。
 褒美を多くしてでも、材料のドラゴニュートを狩ってもらわなければなりませんね」

 カチュアは民を危険に晒してでも、火竜を討つ覚悟を決めていた。
 公爵家の後継者として学んだ帝王学からは間違った判断だった。
 だが水乙女としては、どうしても火竜と共存は出来なかった。
 特に最近は水精霊との親和性が強くなっているので、オアシスの水精霊と敵対関係にある火竜を、嫌悪する感情が溢れていた。

 そのカチュアの感情を感じていたのか、水精霊が火竜を斃す策を伝えてきた。
 それは火竜の子であるドラゴニュートを素材とする武器だった。
 ドラゴニュートの牙と爪を使って武器を作り、皮と鱗を使って防具を作ると言う方法だった。
 しかもその加工法まで教えると言う親切さだったが、問題は素材であるドラゴニュートを狩るのが難しいと言う事だった。

 そこで東西交易で得た莫大な富の一部を使い、アシュラムの従者に選ばれなかった、身体強化を成し遂げた者に、ドラゴニュートを狩らす事にした。
 だが従者に選ばれなかった者の中には、強硬策に出てもカチュアの婿になろうとする者がいた。
 子供さえ孕ませてしまえば、どうとでもなると、愚かな事を考えていた。

「姫様。
 見事ドラゴニュートを斃したヘイグ殿でございます」

「ヘイグ。
 よくドラゴニュートを斃してくれました。
 褒美を与えますので、よく身体を休め、次の戦いに備えてください」

 重臣の一人が、ドラゴニュートを狩ったヘイグと言う戦士を、カチュア姫に謁見させていた。
 ダンスを踊る事は認められなかったが、拝謁の栄誉は与えられたのだ。
 だがヘイグはそれだけで満足しなかった。
 不意に動いてカチュア姫を人質にしようとした。

 いや、人目を気にせず、その場で犯す心算だった。
 魔獣を斃し身体強化を成し遂げたヘイグには、戦闘侍女や護衛の騎士など者の数ではなかった。
 彼らを薙ぎ払い、カチュア姫を確保するのは簡単だと考えていた。
 だがそうはいかなかった。

 カチュア姫には水精霊の守護があるのだ。
 民の祈りの御陰で、水精霊は力を取り戻しつつあった。
 カチュア姫が居を定める場所には、水道が引かれ泉が作られているのだ。
 準備が整ったので、罠を仕掛けたのだ。
 心卑しき者共に見せしめとして殺す相手を誘い出したのだ。
 
 ヘイグは身体の穴と言う穴から、激しく渦を巻いた水が入り込んだ。
 その痛みは余りに激烈で、身体強化を成し遂げたヘイグでも、泣き叫び暴れ回るほどだった。
 ヘイグ以外にも悪心を抱いていた者はいたが、皆顔を青くして震えていた。
しおりを挟む
感想 111

あなたにおすすめの小説

「婚約破棄してくれてありがとう」って言ったら、元婚約者が泣きながら復縁を迫ってきました

ほーみ
恋愛
 アラン王太子の訪問から三日後。私の屋敷には、まるで王都中が興味津々とでも言わんばかりに、招かれざる客がひっきりなしに現れていた。 「ごきげんよう、レティシア様。少しだけお時間を――」 「申し訳ありません、ただいまお嬢様は“療養中”ですので」  メルの冷ややかな切り返しに、来客の顔が強ばるのを窓越しに見て、私はくすりと笑った。 (ふふ、いい気味)  婚約破棄された女に、ここまで関心を寄せるなんて皮肉な話だけど――貴族社会なんてそんなもの。誰かが落ちれば、その跡地を漁ろうと群がる。

そちらがその気なら、こちらもそれなりに。

直野 紀伊路
恋愛
公爵令嬢アレクシアの婚約者・第一王子のヘイリーは、ある日、「子爵令嬢との真実の愛を見つけた!」としてアレクシアに婚約破棄を突き付ける。 それだけならまだ良かったのだが、よりにもよって二人はアレクシアに冤罪をふっかけてきた。 真摯に謝罪するなら潔く身を引こうと思っていたアレクシアだったが、「自分達の愛の為に人を貶めることを厭わないような人達に、遠慮することはないよね♪」と二人を返り討ちにすることにした。 ※小説家になろう様で掲載していたお話のリメイクになります。 リメイクですが土台だけ残したフルリメイクなので、もはや別のお話になっております。 ※カクヨム様、エブリスタ様でも掲載中。 …ºo。✵…𖧷''☛Thank you ☚″𖧷…✵。oº… ☻2021.04.23 183,747pt/24h☻ ★HOTランキング2位 ★人気ランキング7位 たくさんの方にお読みいただけてほんと嬉しいです(*^^*) ありがとうございます!

平民とでも結婚すれば?と言われたので、隣国の王と結婚しました

ゆっこ
恋愛
「リリアーナ・ベルフォード、これまでの婚約は白紙に戻す」  その言葉を聞いた瞬間、私はようやく――心のどこかで予感していた結末に、静かに息を吐いた。  王太子アルベルト殿下。金糸の髪に、これ見よがしな笑み。彼の隣には、私が知っている顔がある。  ――侯爵令嬢、ミレーユ・カスタニア。  学園で何かと殿下に寄り添い、私を「高慢な婚約者」と陰で嘲っていた令嬢だ。 「殿下、どういうことでしょう?」  私の声は驚くほど落ち着いていた。 「わたくしは、あなたの婚約者としてこれまで――」

辺境は独自路線で進みます! ~見下され搾取され続けるのは御免なので~

紫月 由良
恋愛
 辺境に領地を持つマリエ・オリオール伯爵令嬢は、貴族学院の食堂で婚約者であるジョルジュ・ミラボーから婚約破棄をつきつけられた。二人の仲は険悪で修復不可能だったこともあり、マリエは快諾すると学院を早退して婚約者の家に向かい、その日のうちに婚約が破棄された。辺境=田舎者という風潮によって居心地が悪くなっていたため、これを機に学院を退学して領地に引き籠ることにした。  魔法契約によりオリオール伯爵家やフォートレル辺境伯家は国から離反できないが、関わり合いを最低限にして独自路線を歩むことに――。   ※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています

手放したのは、貴方の方です

空月そらら
恋愛
侯爵令嬢アリアナは、第一王子に尽くすも「地味で華がない」と一方的に婚約破棄される。 侮辱と共に隣国の"冷徹公爵"ライオネルへの嫁入りを嘲笑されるが、その公爵本人から才能を見込まれ、本当に縁談が舞い込む。 隣国で、それまで隠してきた類稀なる才能を開花させ、ライオネルからの敬意と不器用な愛を受け、輝き始めるアリアナ。 一方、彼女という宝を手放したことに気づかず、国を傾かせ始めた元婚約者の王子。 彼がその重大な過ちに気づき後悔した時には、もう遅かった。 手放したのは、貴方の方です――アリアナは過去を振り切り、隣国で確かな幸せを掴んでいた。

さよなら初恋。私をふったあなたが、後悔するまで

ミカン♬
恋愛
2025.10.11ホットランキング1位になりました。夢のようでとても嬉しいです! 読んでくださって、本当にありがとうございました😊 前世の記憶を持つオーレリアは可愛いものが大好き。 婚約者(内定)のメルキオは子供の頃結婚を約束した相手。彼は可愛い男の子でオーレリアの初恋の人だった。 一方メルキオの初恋の相手はオーレリアの従姉妹であるティオラ。ずっとオーレリアを悩ませる種だったのだが1年前に侯爵家の令息と婚約を果たし、オーレリアは安心していたのだが…… ティオラは婚約を解消されて、再びオーレリア達の仲に割り込んできた。 ★補足:ティオラは王都の学園に通うため、祖父が預かっている孫。養子ではありません。 ★補足:全ての嫡出子が爵位を受け継ぎ、次男でも爵位を名乗れる、緩い世界です。 2万字程度。なろう様にも投稿しています。 オーレリア・マイケント 伯爵令嬢(ヒロイン) レイン・ダーナン 男爵令嬢(親友) ティオラ (ヒロインの従姉妹) メルキオ・サーカズ 伯爵令息(ヒロインの恋人) マーキス・ガルシオ 侯爵令息(ティオラの元婚約者) ジークス・ガルシオ 侯爵令息(マーキスの兄)

婚約破棄までの168時間 悪役令嬢は断罪を回避したいだけなのに、無関心王子が突然溺愛してきて困惑しています

みゅー
恋愛
アレクサンドラ・デュカス公爵令嬢は舞踏会で、ある男爵令嬢から突然『悪役令嬢』として断罪されてしまう。 そして身に覚えのない罪を着せられ、婚約者である王太子殿下には婚約の破棄を言い渡された。 それでもアレクサンドラは、いつか無実を証明できる日が来ると信じて屈辱に耐えていた。 だが、無情にもそれを証明するまもなく男爵令嬢の手にかかり最悪の最期を迎えることになった。 ところが目覚めると自室のベッドの上におり、断罪されたはずの舞踏会から1週間前に戻っていた。 アレクサンドラにとって断罪される日まではたったの一週間しか残されていない。   こうして、その一週間でアレクサンドラは自身の身の潔白を証明するため奮闘することになるのだが……。 甘めな話になるのは20話以降です。

[完結]死に戻りの悪女、公爵様の最愛になりましたーー処刑された侯爵令嬢、お局魂でリベンジ開始!

青空一夏
恋愛
侯爵令嬢ブロッサムは、腹違いの妹と継母に嵌められ、断頭台に立たされる。だが、その瞬間、彼女の脳裏に前世の記憶が蘇る――推理小説マニアで世渡り上手な"お局様"だったことを!そして天国で神に文句をつけ、特別スキルをゲット!? 毒を見破り、真実を暴く異世界お局の逆転劇が今始まる! ※コメディ的な異世界恋愛になります。魔道具が普通にある異世界ですし、今の日本と同じような習慣や食べ物なども出てきます。観賞用魚(熱帯魚的なお魚さんです)を飼うというのも、現実的な中世ヨーロッパの世界ではあり得ませんが、異世界なのでご了承ください。

処理中です...