前世水乙女の公爵令嬢は婚約破棄を宣言されました。

克全

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第二章「恋愛」

51話

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 シャーロットは歓喜に打ち震えていた。
 望まぬ事を重ねたが、やっと希望が見えた。
 望む子供が誕生したのだ。
 いや、自分よりも強い子供が誕生するかもしれないのだ。
 その喜びは、生命の根源から来る逆らい難い喜びだった。

 シャーロットは嫌々自分の子供と交尾した。
 自分と人間の種から産まれた、ドラゴニュートと交尾したのだ。
 身体強化をした人間とも交尾をし、色々と試していたのだ。
 その試行錯誤の末に、ドラゴニュートと交尾をして生まれた子は、火竜の血を四分の三受け継ぐ子が誕生したのだ。

 スリークォーターの子は、ドラゴニートより遥かに強力な力を持っていた。
 身体的特徴もドラゴニュートよりも火竜に近く、成長も遅い。
 だがその遅い成長を待ち、その子と交尾すれば、八分の七もの火竜の血を受け継ぐ子が産まれてくる。
 同じことを繰り返せば、限りなく火竜に近い子供を産むことが出来る。

 いや、それだけではない。
 身体強化を重ねた人間の種から産まれた子が成長するまで待ち、交尾を重ねれば、自分より強い新たな火竜が誕生するかもしれない。
 そう考えた火竜は、人間との交尾に加えて、ドラゴニュートとの交尾を重ねた。
 同時にドラゴニュート同士の交尾も大いに始めさせた。

 非情な決断だった。
 スリークォーター火竜を護り育てる為に、ドラゴニュートの子供を生贄にするのだ。
 アシュラム達を身体強化させ、最終的な種にするのだ。
 逃げ出そうとした勇者英雄たちの種から産まれた子は、思った通り強力な力を秘めていた。
 
 同時にシャーロットは慎重だった。
 アシュラム達の強さを正確に見極めようとしていた。
 万が一にも自分が死ねば、火竜の血が絶えてしまうかもしれない。
 絶対に死ぬわけにはいかなかった。
 だからアシュラム達が王城地区に入るたびに、その力を確かめた。

 成体のドラゴニュートと戦わせて、その力を確かめた。
 子供を生贄にするのは哀しかったが、より強い子を産むために我慢した。
 まだまだ大丈夫だった。
 万に一つも自分がアシュラム達に負ける可能性はなかった。
 だが同時に、今迄捕らえた勇者英雄とは段違いの力を有していることも分かった。

 だから急がなかった。
 強いドラゴニュートを産むために、身体強化した人間は数多く確保している。
 自分に近いスリークォーター火竜を産むための種、成体のドラゴニュートもいる。
 それよりは、せっかく産まれたスリークォーター火竜と強化ドラゴニュートの安全を優先する事にした。

 だがその火竜シャーロットの行動は、サライダオアシスの水精霊の知る所となった。
 水精霊も慎重にシャーロットの事を探っていたのだ。
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