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第二章
第34話:王都包囲
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「皇太子殿下、先触れの調査が終わりました。
安心して宿にお入りください」
近衛騎士の一人が報告にやって来た。
遠征中の皇太子一行が休息する宿の安全を確認したという報告だ。
遠征軍は長蛇の列を作ってフランドル王国の王都を目指している。
最前を進んでいる尖兵は五日前にこの宿を使っている。
物理的な罠や魔術呪術による罠が仕掛けられていないかを調べるためにも、最高級の部屋も将兵が使って安全を確認する。
前日には皇太子の側近が安全かどうか最終確認をしているのだ。
「分かった、マチルダ嬢、ご案内させてください」
皇太子はマチルダ嬢をエスコートして宿に入っていった。
ルーサン皇国が編制した大軍を率いる総大将というのにだ。
これは敵対する有力貴族派閥を暴発させようとする挑発でもあった。
だがそれ以上にマチルダ嬢を愛しむ気持ちの方が強かった。
皇太子としてではなく一人の騎士として騎士道精神で貴婦人に対して奉仕する。
皇太子とマチルダ嬢は遠征を愉しんでいた。
まるで婚前旅行のようにゆっくりと愛を育んでいた。
安全とはいえ閉じ込められた宮での生活ではなく、毎日風景が変わり宿泊する場所も変わる旅なのだ。
会話の内容も皇城の宮の中とは全然違っていた。
★★★★★★
「皇太子殿下、王都に突入した部隊から報告が届きました」
皇太子は皇国軍がフランドル王国の王都を包囲した五日後に王城外に到着した。
だがその頃にはもう王都はほぼもぬけの殻になっていた。
魔族と凶盗団の戦いを恐れた王都の民は、ほぼ全員逃げ出していた。
五日間で皇国軍は全ての城門を確保して、王都の出入りを監視監督できるようになっていた。
王城の中に残っているのは、フランドル王国王宮神官長になっていた邪神教徒のリトラストと彼の配下の邪神教徒、下級魔族を憑依させられたジェラルド国王、マティルド王妃、ロバート王太子だけだった。
王家の財宝を目当てに入り込んでいた凶盗団はほぼ壊滅していた。
「どんな状況になっている」
「王都内にはゾンビと呼ばれる動く死者が徘徊しております。
動きはとても緩慢で我が軍の敵ではありません。
ですが既に王都には邪神の力が満ちています。
何の準備もなく攻め込むのは非常に危険です。
ここは魔術と呪術で邪神と王都の繋がりを絶ってから攻め込むべきです」
索敵を行っていた多少は魔術と呪術が使える密偵が報告した。
皇太子はその後ろに立っている魔術師と呪術師にも確認したが同じ回答だった。
密偵と同時に専門の魔術師と呪術師も調査していたのだ。
彼らの共通した見解は王都が非常に危険な状態だという事だった。
このまま王都を放置してしまったら、王都は邪神の領域となってしまう。
「分かった、遠征軍に帯同している全ての魔術使いと呪術使いを動員して、邪神と王都の繋がりを断ち切れ」
皇太子は決断し命令を下した。
皇国や王国が認めた高位の魔術や呪術が使える師級と、貴族や学校が認めた士級、それに公式には認めてられていない魔術と呪術の使い手。
その全てを使って邪神教徒の悪行を止める心算だった。
だが皇太子には邪神教徒以外にも敵がいたのだ。
安心して宿にお入りください」
近衛騎士の一人が報告にやって来た。
遠征中の皇太子一行が休息する宿の安全を確認したという報告だ。
遠征軍は長蛇の列を作ってフランドル王国の王都を目指している。
最前を進んでいる尖兵は五日前にこの宿を使っている。
物理的な罠や魔術呪術による罠が仕掛けられていないかを調べるためにも、最高級の部屋も将兵が使って安全を確認する。
前日には皇太子の側近が安全かどうか最終確認をしているのだ。
「分かった、マチルダ嬢、ご案内させてください」
皇太子はマチルダ嬢をエスコートして宿に入っていった。
ルーサン皇国が編制した大軍を率いる総大将というのにだ。
これは敵対する有力貴族派閥を暴発させようとする挑発でもあった。
だがそれ以上にマチルダ嬢を愛しむ気持ちの方が強かった。
皇太子としてではなく一人の騎士として騎士道精神で貴婦人に対して奉仕する。
皇太子とマチルダ嬢は遠征を愉しんでいた。
まるで婚前旅行のようにゆっくりと愛を育んでいた。
安全とはいえ閉じ込められた宮での生活ではなく、毎日風景が変わり宿泊する場所も変わる旅なのだ。
会話の内容も皇城の宮の中とは全然違っていた。
★★★★★★
「皇太子殿下、王都に突入した部隊から報告が届きました」
皇太子は皇国軍がフランドル王国の王都を包囲した五日後に王城外に到着した。
だがその頃にはもう王都はほぼもぬけの殻になっていた。
魔族と凶盗団の戦いを恐れた王都の民は、ほぼ全員逃げ出していた。
五日間で皇国軍は全ての城門を確保して、王都の出入りを監視監督できるようになっていた。
王城の中に残っているのは、フランドル王国王宮神官長になっていた邪神教徒のリトラストと彼の配下の邪神教徒、下級魔族を憑依させられたジェラルド国王、マティルド王妃、ロバート王太子だけだった。
王家の財宝を目当てに入り込んでいた凶盗団はほぼ壊滅していた。
「どんな状況になっている」
「王都内にはゾンビと呼ばれる動く死者が徘徊しております。
動きはとても緩慢で我が軍の敵ではありません。
ですが既に王都には邪神の力が満ちています。
何の準備もなく攻め込むのは非常に危険です。
ここは魔術と呪術で邪神と王都の繋がりを絶ってから攻め込むべきです」
索敵を行っていた多少は魔術と呪術が使える密偵が報告した。
皇太子はその後ろに立っている魔術師と呪術師にも確認したが同じ回答だった。
密偵と同時に専門の魔術師と呪術師も調査していたのだ。
彼らの共通した見解は王都が非常に危険な状態だという事だった。
このまま王都を放置してしまったら、王都は邪神の領域となってしまう。
「分かった、遠征軍に帯同している全ての魔術使いと呪術使いを動員して、邪神と王都の繋がりを断ち切れ」
皇太子は決断し命令を下した。
皇国や王国が認めた高位の魔術や呪術が使える師級と、貴族や学校が認めた士級、それに公式には認めてられていない魔術と呪術の使い手。
その全てを使って邪神教徒の悪行を止める心算だった。
だが皇太子には邪神教徒以外にも敵がいたのだ。
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