仇討浪人と座頭梅一

克全

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第一章

第二十三話:盗賊七つ道具

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 熊の旦那は黙々と盗賊としての鍛錬を重ねていた。
 基礎的な体力は十二分にあるので、問題は盗賊七つ道具を使いこなせるかだった。
 課題が千代田の御城に忍び込むことなので、その壁はとてつもなく高い。
 梅一に言われるまま、梯子を使ったり鉤縄を駆使したりして、塀や城壁を登ることができるように、繰り返し鍛錬を続けていた。

 それと身に付ける道具の選択も大切だった。
 必殺の武器である長巻擬きは外せないが、まずは城に侵入できなければ話にならないから、敵の武器を奪う前提で侵入用の道具を優先するか決めかねていた。
 だがまだ決断するまでには時間があるので、今は技の習得に力を入れていた。
 特に高く遠く跳びはねる技と、高所から安全に飛び降りる技は大切だった。

「熊の旦那は呑み込みが早くて助かりますよ。
 問題は繰り返し鍛錬して早く確実にできるようになる事なんですが、問題はこんな事をやっているのを見られると、色々と疑われてしまう事です。
 早々何度も屋根の点検そするという言い訳も使えませんしね」

 今日は梅一が新たに借りることにした長屋の一つ、芝口南西久保愛宕下の芝口二丁目の長屋に来ていた。
 借りるにあたって、長屋の屋根に穴が開いていないか、雨漏りがしていないかを確かめたいと大家に言って、梯子を使って屋根に上らせてもらったのだ。

「それは大丈夫だ。
 屋敷に帰ってから繰り返し屋根に上る鍛錬をする。
 隣の屋敷からは見られないし、万が一みられたとしても、剣術の鍛錬だと言う」

「いいんですかい、熊の旦那。
 そんな事を口にしたら、熊の旦那が幕臣だという事がばれてしまいますよ」

「ふん、それはお互い様だろう。
 梅吉が桜小僧だという事を明かしてくれたのだ。
 いつまでも俺が幕臣だという事を隠し立てしていても仕方がない」

「さて、何のことでしょうか。
 桜小僧が小判を配ったのはあくまでも偶然ですよ。
 私が配ったわけではありませんよ」

「好きに言っていろ、全部今更の話しだ。
 それよりも、拠点はここでいいのか。
 裏長屋の壁は薄い、秘密の話をするには不向きだぞ」

 確かに熊の旦那の言う通りだった。
 これから本気で暗殺家業を始めるのなら、それなりの隠れ家は必要だった。
 だが同時に、借主の素性がわかるような事はできない。
 家主や大家が連座の罪に問われる江戸では、人別帳に記載されていない素性が確かでない人間が、家や部屋を借りることはとても難しいのだ。

「まあ、それは別の場所にしましょう。
 空き家や寺社のお堂で使われていない所を見つけておきますよ」

「そうか、その辺は梅吉の方が詳しいだろうから、これ以上は何も言わん。
 新たに覚えることがないのなら、梯子を手早く上り下りする事と、鉤爪の鍛錬の為に屋敷に戻るが、それで構わんか」

「ええ、結構でございます。
 ただ水練の鍛錬は繰り返してください。
 特にできるだけ長く息を止められるようにしてください」
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