拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~

藤原ライラ

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番外編:花の女神と祝福の庭

5.揃いの色

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 クリスの選んだミントグリーンのドレスを着付けてもらう。
「これでいいんでしょうか……?」

 すらりとした長身が隣に立つ。細身の意匠はクリスにとてもよく似合っていた。神秘的な色合いが彼自身と相まって、独特の透明感がある。

「すごい似合ってるね」
 思わず見とれそうになってしまう。彼が振り返れば、銀髪がきらきらと揺れる。

「こんなもんでしょ」
 襟元を直してクリスは大したことないとばかりににやりと笑った。

「それでは、お二人ともこちらに」
 ローランさんに促され、二人並んで一番大きな鏡の前に立った。

「あ」

 クリスが小さく声を漏らした。頭の上から爪先まで、切れ長の目が私と彼自身をなぞる。

「そういうことか」
 そのまま、青い目はローランさんに向けられる。

「さすがですね。マダム=ローラン」

「いえ、とんでもございません」
 彼女はいつものように、美しい礼をして返す。まずローランさんはクリスに微笑みかけた。

「クリストファー様の仰る通り、女性のドレスを先に決めるのが一般的ではあります。こちらの方が色が豊富ですから」

 そして、次に私の方を見てまたにこりと微笑んだ。

「ですが、キャロライン様が仰るように、男性のお召し物が何でもいいということはございません。こちらの選び方によって、映えるか映えないかが決まるからです。婚約式はお二人で出られるものですから、色味やモチーフを揃えるコーディネートが重要となってきます」

「なるほど……」

 そうして見ると、あのクリスのタキシードとこのミントグリーンのドレスはびっくりするほどよく似合っている。まるで私達がともにあるのが、当然とばかりに。

「今回はキャロライン様のドレスと雰囲気を合わせて、爽やかめのカラーをお選びしました。また、ビジュ―の色と生地の色を揃えてありますから、統一感も醸し出せるかと」

 初見では分からないかもしれない。けれどこっそりと同じ色を隠すのはなんだかとても深いところでクリスと結びついているようで、心が躍る。

「どんな風にご自身を表現されたいかを、お二人でよく話し合ってお決めになってみてはいかがでしょうか」

 ローランさんがそう締めくくると、クリスがひとつ溜息を吐いた。
「おれもまだまだだな」

 なんだか無性に悔しそうではある。いつでも背伸びをしてみせたいようなところがクリスらしいと言えば、クリスらしい。
 すっと、タキシードの袖を掴んで銀色の頭を見上げた。

「一緒に決めよう、ね」

 だってこれから先もずっと一緒にいるのだから。私はこうやって、クリスと色んなことを話し合えるのが嬉しい。

「そうだね」
「まあ、本当に仲がいいんだから」

 そんな私達を、エステル様がにこにこと見守ってくれていた。
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