拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~

藤原ライラ

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番外編:花の女神と祝福の庭

6.式のはじまり

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 そんなこんなで無事、婚約式の日を迎えることとなった。

 場所はラザフォード家の中庭で、エステル様が張り切りに張り切った結果、それはそれは盛大に行われることになった。

 飾り立てられた会場の中心、一番よく見えるところに私はクリスと並んで座ることになる。

「大丈夫、かな」

 タキシードは結局ローランさんの勧めのままに、あのブルーとゴールドの組み合わせたものにした。何せこちらは“白銀の貴公子”。今日も完璧な仕上がりである。

 ちらり、と隣を見ればきらきらと銀の光を纏った男が返す。
「なに、今更帰りたいとか言わないでくれる?」

 さすがにそんなことは、言わないけれど。私が押し黙ると、何かを察したようにクリスが手を伸ばしてきた。

 私のドレスは、クリスが選んだミントグリーンのもの。あとは、互いの意匠を揃える様に少しリボンやフリルを手直しした。

 そこまで格調高い式、ということでもない。 髪は編みおろしにして、会場となる庭の雰囲気に合わせていくつか花を付けてもらった。これはエステル様のアイディアで、侯爵家の侍女のみなさんは今日もやる気満々で私の身支度をしてくれた。

「大丈夫」
 花の位置を直しながら大きな手は私の頭を撫でる。切れ長の青い目は僅かに細められる。

「あんたは、きれいだよ」

「へっ」
 そんな風に微笑まれると、途端に息の仕方が分からなくなる。ずっと昔から、私はこの人の傍にいたのに。

「なので、前にも言ったけどもう少しとっつきにくい顔をして」

 これは前に一緒に夜会に出た時にもたしなめられたことがある。

 夜会は出会いの場だから、そんな風に言われるのも分かる。けれど今日は婚約式なのだ。今更そんなことを気にすることもないと思うのだけれど。

「いいから。これは絶対だ」
 私が首を傾げても、クリスは不機嫌そうにするだけで何も教えてはくれなかった。

 婚約式は、結婚式と違ってそこまで決まった流れがあるわけではない。

 式がはじまれば、まず最初に私とクリスは婚約証明書にサインをする。それを招待客のみんなに見届けてもらうのだ。
 あとは、順番に席にやってくる招待客に二人で挨拶をする。

 私が社交に疎いことをよく知っているクリスは、進んで話をする役を買って出てくれる。私はせいぜい「はじめまして、キャロラインです」と言ってお辞儀をするくらいなものだ。

 もっとも、これは私達に限った話ではないけれど。妻に課される役目の大半は、夫となる者の少し後ろで笑っていることだ。

 次に、私達の前にやって来たのは三人の青年達だった。多分どこかの令息達だろう。年の頃はクリスと同じか、もう少し上くらい。私よりは下かも。

 そこで、実ににこやかにスマートに万事を進めていたクリスの顔が分かりやすく曇った。

「何しに来たの」
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