47 / 192
14.旅行
3.最初の夜
しおりを挟む
「残念だね、陸君と違う部屋だなんて」加奈子が言った。
そして続けて有紀子の父道信に、
「おじさん、何で別々の部屋なんですか? せっかくの旅行なんだから、一緒でも良かったのに。
そうだ、どうせ知らない仲じゃないんだから、ふすま開けちゃいましょうか? お隣同士だし」
「やめてよ、はしたない」有紀子が止める。
何がはしたないのか。言った有紀子にも分からない。そもそも、有紀子の父親と加奈子は相部屋なのだから、有紀子と陸が相部屋でもおかしくないはずだ。
クラスメート同士と、父親と娘の友達は違うとは言えなくもないが、有紀子がさらりと加奈子の話に便乗できれば、ふすまを開けることくらいわけない。
だが、そうならなかった。別に有紀子と陸が布団を並べて寝るわけではなかったし、当然2人きりであるわけでも無い。なのに有紀子は動揺してしまう。なんとなく流れで部屋が繋がればと思うが、結果的に自分の言動はふすまを開けない方に向かわせた。
有紀子本人も気が付いていないが、開けてほしいと望みながら、1対3の多数決で開けない決議が採択される結果に加担してしまったのだ。
「おじさん、いくら私が可愛いからって、襲ったりしないでくださいね」笑う加奈子に「何言ってるの! 変なこと」と有紀子が怒る。
「襲わないよー。襲うんなら妻を――」
道信はおどけてそう言って、ちらりと妻を見た。
「いやですよ、私は」妻由実即答。
ガックシだ。道信は、妻の由美にフラれて肩を落とす。加奈子は笑って道信を慰めた。そしておもむろに言った。
「有紀子も、陸君の寝込みを襲っちゃいけませんからね」
「しないわよ、バカね!」
有紀子は、枕を投げつけてやった。
由美が冗談交じりに、「襲いにくるのはよかったりして」と言う。
なんて母親だ。だが、みんなが寝静まった夜に迫られたらと思うと、寝るまでまだ時間があるというのに、有紀子の胸はドキドキがとまらない。
恋は盲目なのか、有紀子がバカなのか。こんな大人数の部屋に夜這いに来る男なんていない。自分の両親と相手の両親がいるのだ。にもかかわらず有紀子は、陸がくるかもしれない、と思った。
そして続けて有紀子の父道信に、
「おじさん、何で別々の部屋なんですか? せっかくの旅行なんだから、一緒でも良かったのに。
そうだ、どうせ知らない仲じゃないんだから、ふすま開けちゃいましょうか? お隣同士だし」
「やめてよ、はしたない」有紀子が止める。
何がはしたないのか。言った有紀子にも分からない。そもそも、有紀子の父親と加奈子は相部屋なのだから、有紀子と陸が相部屋でもおかしくないはずだ。
クラスメート同士と、父親と娘の友達は違うとは言えなくもないが、有紀子がさらりと加奈子の話に便乗できれば、ふすまを開けることくらいわけない。
だが、そうならなかった。別に有紀子と陸が布団を並べて寝るわけではなかったし、当然2人きりであるわけでも無い。なのに有紀子は動揺してしまう。なんとなく流れで部屋が繋がればと思うが、結果的に自分の言動はふすまを開けない方に向かわせた。
有紀子本人も気が付いていないが、開けてほしいと望みながら、1対3の多数決で開けない決議が採択される結果に加担してしまったのだ。
「おじさん、いくら私が可愛いからって、襲ったりしないでくださいね」笑う加奈子に「何言ってるの! 変なこと」と有紀子が怒る。
「襲わないよー。襲うんなら妻を――」
道信はおどけてそう言って、ちらりと妻を見た。
「いやですよ、私は」妻由実即答。
ガックシだ。道信は、妻の由美にフラれて肩を落とす。加奈子は笑って道信を慰めた。そしておもむろに言った。
「有紀子も、陸君の寝込みを襲っちゃいけませんからね」
「しないわよ、バカね!」
有紀子は、枕を投げつけてやった。
由美が冗談交じりに、「襲いにくるのはよかったりして」と言う。
なんて母親だ。だが、みんなが寝静まった夜に迫られたらと思うと、寝るまでまだ時間があるというのに、有紀子の胸はドキドキがとまらない。
恋は盲目なのか、有紀子がバカなのか。こんな大人数の部屋に夜這いに来る男なんていない。自分の両親と相手の両親がいるのだ。にもかかわらず有紀子は、陸がくるかもしれない、と思った。
0
あなたにおすすめの小説
誰でもイイけど、お前は無いわw
猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。
同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。
見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、
「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」
と言われてしまう。
本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います
<子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。>
両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。
※ 本編完結済。他視点での話、継続中。
※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています
※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります
すべてはあなたの為だった~狂愛~
矢野りと
恋愛
膨大な魔力を有する魔術師アレクサンダーは政略結婚で娶った妻をいつしか愛するようになっていた。だが三年経っても子に恵まれない夫妻に周りは離縁するようにと圧力を掛けてくる。
愛しているのは君だけ…。
大切なのも君だけ…。
『何があってもどんなことをしても君だけは離さない』
※設定はゆるいです。
※お話が合わないときは、そっと閉じてくださいませ。
王妃は涙を流さない〜ただあなたを守りたかっただけでした〜
矢野りと
恋愛
理不尽な理由を掲げて大国に攻め入った母国は、数カ月後には敗戦国となった。
王政を廃するか、それとも王妃を人質として差し出すかと大国は選択を迫ってくる。
『…本当にすまない、ジュンリヤ』
『謝らないで、覚悟はできています』
敗戦後、王位を継いだばかりの夫には私を守るだけの力はなかった。
――たった三年間の別れ…。
三年後に帰国した私を待っていたのは国王である夫の変わらない眼差し。……とその隣で微笑む側妃だった。
『王妃様、シャンナアンナと申します』
もう私の居場所はなくなっていた…。
※設定はゆるいです。
愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
某国王家の結婚事情
小夏 礼
恋愛
ある国の王家三代の結婚にまつわるお話。
侯爵令嬢のエヴァリーナは幼い頃に王太子の婚約者に決まった。
王太子との仲は悪くなく、何も問題ないと思っていた。
しかし、ある日王太子から信じられない言葉を聞くことになる……。
幸せな番が微笑みながら願うこと
矢野りと
恋愛
偉大な竜王に待望の番が見つかったのは10年前のこと。
まだ幼かった番は王宮で真綿に包まれるように大切にされ、成人になる16歳の時に竜王と婚姻を結ぶことが決まっていた。幸せな未来は確定されていたはずだった…。
だが獣人の要素が薄い番の扱いを周りは間違えてしまう。…それは大切に想うがあまりのすれ違いだった。
竜王の番の心は少しづつ追いつめられ蝕まれていく。
※設定はゆるいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる