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【*】
しおりを挟む馬車での道中、セレフィローズは、普段は絶対見せないのだが、思わず腕を組んでいた。我が儘を言って、リリアに同乗を頼んだのは、三日前の事である。嗜められるかと考えていたが、意外にも周囲は、『お見合いは不安なのだろう』と判断したのか、好意的だった――と、セレフィローズは考えている。
リリアはいつもと同じ、透き通るような瞳をし、無表情だ。だが、このあまり顔色を変えない親友のかんばせに、長い付き合いという事もあり、今ではセレフィローズも感情が浮かべばそれなりに読み取れるようになってきた。
「はぁ。上手くいくかしら……」
目下の悩みは、婚約に関してだ。隣国の第一王子であるリュフェルと最初に出会ったのは、まだ幼い頃であったが、実を言えばずっと憧れていた。二つ年上の十九歳であるリュフェルは、物腰が穏やかだという知識がある。
「どう思いますか、リリア」
「普段通りのセレフィ様をお見せすれば、きっと成功すると思います」
「普段通りの私、ですか?」
「……はい」
「具体的には?」
「いつも……私の事を想って下さる、その……優しい所を……きっと、リュフェル殿下も……好きになって下さると考えています」
小さな声で、けれどはっきりとリリアが述べた。不意打ちに褒められて、セレフィローズは嬉しくなった。自分ばかりが親友だと思っているのではないかと時々不安になるのだが、そんな事は無さそうだなと、内心で苦笑する。
「有難う、リリア。恋に関する先達であるあなたのその言葉、非常に心強いです」
セレフィローズが言うと、リリアが視線を揺らした。僅かに朱くなったその頬を見て、セレフィローズは唇の両端を持ち上げる。
「グレイル卿とは順調ですか?」
道中では、終始二人は、そのようにして言葉を交わしていたのだった。他の付き人には、祖母が隣国出身だというマーサなどもいるが、彼女は別の馬車だ。話をしていると、二日がかりの馬車の旅もあっという間だった。
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