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【*】
しおりを挟む――閨の講義は、許婚が揃って出るもの以外も、男子……ことエルディアス侯爵家の人間に限っては続いている。別段、実戦の手ほどきがあるわけではない。例えば王家であれば、未亡人に筆おろしを頼む事などはあるが、特にそういった事も無い。
特にグレイルは、リリア以外が考えられないので、それを望んだ事も無い。
今年二十一歳になったグレイルは、しかしながら性欲が無いわけもなかった。
「はぁ……」
朝。
健康に勃った己の陰茎を自覚し、グレイルは両目を閉じて、細く吐息した。
淡い初恋から始まって、高等部では惚れなおした感覚に陥って……その後、今では明確にリリアに対して性欲を抱いている。本当は大学在学中に押し倒してしまいたくなった事が何度もある。長期休暇中の旅行など、その最たる例だ。うっかり触れてしまった時など、欲望を押し殺す事に必死になった。別段、押し倒しても、リリアが受け入れてくれるならば、誰も文句を言うことはないと分かっていたが、グレイルはそうはしなかった。
傷が癒えても、魔獣討伐の際に体が受けた衝撃が、まだ残存している可能性が高いと、医療魔術師から聞いていたからだ。リリア本人は平気な顔をしていたが、それは悪い意味での慣れらしい。大学卒業後に、揃っての閨の講義が始まる直前、魔術による健康診断とブライダルチェックが行われ、その際に漸く、リリアの体が本当に健康な状態に戻ったと聞いた。本当に安堵したものである。
「……」
結婚まであと一年程度――そろそろ、リリアの体を開いて良いものか、それが、最近の懸案事項である。一年かけて慣らしたならば、さすがにリリアの体も己のものを受け入れてくれるだろうとグレイルは考えるが、果たして機密をきちんと伝えるまで、慣らすだけで自制できるのかという不安もある。
今夜は、リリアがエルディアス侯爵家に泊っていく事になっている。結婚式に際しての食事のメニューの選定の一環で、試食があるのだが、宰相補佐官としての仕事の都合で、グレイルの都合の良い日取りが本日しか無かった。一年という期間は、決して長くはないのだと、思い知らされる。学生時代は二年という歳月が悠久にも思えたし、早く結婚したいという思いは変わらないが、気づくと月日はあっという間に過ぎていく。
「リリアに拒絶されなければ……」
今宵は、抱きしめてみても良いかもしれないと、内心でグレイルは考えていた。このようにして、朝が始まった。
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