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第207話 世界の危機の話 ②
しおりを挟むこれまでの話を纏めると、どうやらモンスターの存在が鬼門である。
そして、その魔物が発生する条件は瘴気の発生によるものだと。
で、その瘴気は大気中に存在する魔素、マナとも言うが、それと「負の感情」が干渉する事により瘴気へと変わるそうな。
うーむ、中々の悪循環らしい、魔物が人を襲い、人の負の感情でまた瘴気が発生し、更に多くのモンスターを発生させ、また人を襲う。
で、シャイニングナイツはその瘴気を発生させない様に、日夜活動していると。
だが、圧倒的に人員が足りないと。ふむ、予備隊はどうなんだろう。
「サーシャさん、シャイニングナイツの予備隊は活動しないのですか?」
「ジャズ殿、予備隊はまだ戦乙女隊になるには至らない未熟な戦士達よ。シャイニングナイツに昇格するには時間とお金が掛かるの。」
なるほど、実績と経験、それと資金が必要という事か。
シャイニングナイツになるのも大変なのだな、だから戦乙女隊の人員が少ないのか。
「ここまでの話で、貴方方勇者認定された人は、わたくし達の協力者になって頂きたいのです。」
巫女様はどこかすまなさそうにしている、俺達に頼りたいという事だろう。
まあ、そこは頼られるのはやぶさかではない。が、勇者か。どうにもな。
「そして、話はそれだけではないわ、巫女様の予知で、もう間も無く混沌の王「カオス」が復活しそうなの。」
「なんだって!? それは穏やかじゃないな。」
「それに、「カオス」だけではなく、この世界には様々な脅威があるわ。闇の崇拝者がやろうとしている、魔神王、「デーモンロード」の復活。それも阻止したいのよ。」
やれやれ、この世界はどうなっている。「カオス」に「デーモンロード」だって。
いずれもラスボスクラスじゃないか、そんなの勇者でもキツイと思うがな。
俺は挙手をして、自分の意見を述べる。
「ちょっといいですか? 自分は勇者になってもやる事が色々ありますので、それらの脅威を払拭させる為に使われるというのは大変だと思うのです。」
「誰だって怖いわ、けど、貴方にはそれを退ける強さがあるじゃない。お願い、私達に協力して、世界の危機は始まっているのよ。」
「うーん、お話は解りますが、何とも、話が壮大すぎてちょっと付いていけない感じなのです。」
「シャイニングナイツだけでは無理よ、勇者の存在も必要なの。分かって。」
ふーむ、やはりこういう流れになったか。面倒臭い事はあまりやりたくはないんだがなあ。
「ジャズ殿もアドンさんも、聖剣サクシードを持ち上げたわ。つまり、聖剣が貴方方を認めたという事なの。」
「わしはダンベル代わりに使っただけじゃがな。まあ、軽い軽い。」
「アドンの場合、筋肉で強引に持ち上げたっぽいな。俺は、どうかな?」
正直、自分でもよくわからん。俺が勇者? 何かの間違いでは。
俺のスローライフは、まだまだ遠い。
「混沌の王、カオスは聖剣サクシードでなければ倒せません。お願いです、お二人のお力を、わたくし達に。」
巫女様は両手を組み、祈る様に俺達に懇願した。
まあ、必要とあらば俺も動くけど、大変なんだよな、ラスボス戦ってのは。
「それに、瘴気を発生させない様に世界中で活躍しているシャイニングナイツは、その国の王族などにも頼られる存在だから、あまりこちらに常駐させる訳にはいかないのよ。」
「そうですか、まあ、シャイニングナイツがあまり動けないのも分かりますし、育つのも時間とお金が必要って事は解ります。」
「そうなのよ、経験を積み、教養を身につけ、戦いに置いても優れていないと戦乙女隊にはなれないわ。だから数が足りないのよ。」
優秀な人材が育つには、やはり時間が必要って事は解る。予備隊の中には優秀な人も居ることだろう。
「お金、資金面での支援はクインクレインからの援助があるから、助かっているけど、やっぱり実戦を経験しないと駄目なのよ。」
そうか、クインクレインは確か、シャイニングナイツとか義勇軍とかに資金援助しているって聞いたな。
クインクレインか、縁の下の力持ちとして活動しているって事か。
「予備隊には優秀な人材が居ると思うのですが、姐御とか。」
「確かに姐御は強いわ、だけど教養の面で不足しているの。それに本人もまだ実績を積みたがっている様子だし、無理強いは出来ないわ。」
ふーむ、そうか。姐御は中々優秀な人材だからな。キチンと教育したいのだろう。
だが俺が見たところ、姐御はそのままシャイニングナイツになってもおかしくないと思うけどな。
「瘴気の話ですが、今すぐにどうこう出来る問題じゃなさそうですね。魔物然り、戦争然り、まあモンスター退治は冒険者や傭兵でも出来ますし、戦の終わらせ方とかはちょっと重い付かないですね。」
「ええ、精々魔物を討伐し、被害を最小限に食い止めるくらいしか出来ないわ。」
「戦争の事はどうするんじゃ? このままかいのう?」
「そちらはシャイニングナイツが対応していますけど、完璧じゃないわ。始まってしまう戦は止めようがないもの。終わるのを急がせるくらいね。」
「まあ、そうでしょうね。戦争は色んな人の思惑が絡んでいますから。」
シャイニングナイツにも限界があるって事だな、過度な期待はできないか。
「お話は解りました、俺もこの世界の一員として、出来る限りの事はしようと思います。」
「では!? ジャズ殿は!」
「ええ、勇者認定されてしまいましたからね。これからは楽はできそうに無いでしょうな。ははは。」
「ありがとう、ありがとうジャズ殿。私は凄く嬉しい。こうしてまた同士が出来た事が何よりも。」
以外にも、サーシャさんの目から一滴の涙が零れていた。
「女を泣かすもんじゃないぞいジャズ、こうなったら乗りかかった船じゃわい。わしも勇者とやらになってやろうじゃないか。わっはっは!」
「ありがとう、アドンさん。」
巫女様が祈る様な姿で、俺達に礼を述べた。
「お二方、どうもありがとうございます。心からの感謝を、それと、祝福を。わたくしに出来る事はこれくらいですから。」
うむ、女神教会の巫女様からの祝福をされたぞ、悪い気分ではない。寧ろ心地よい。
話も一段落し、落ち着いた頃を見計らったかの様に、突然扉が勢いよく開け放たれた。
「巫女よ!! 巫女は居るか!!!」
急に怒鳴り声を出し、づかづかと歩いて来た男が居た。
丸々と肥え太った男だ。後ろには数人の神官戦士を連れている。
立派な法衣を着ている事から解るが、おそらくこのエストール大神殿の代表みたいな人だろう。
「巫女よ! 勝手な真似は困るぞ!」
ここでサーシャさんが巫女様と男を遮る様に割って入り、怒りの剣幕で言い返した。
「何ですか! 騒々しい! 今大事なお客様がお見えです! 慎みなさい!」
おや? サーシャさんの喋り方が公的なものになっているぞ。やっぱりこの神殿の重鎮らしいな。
しかし、男の方も黙ってはいないようだ。イライラしつつも巫女様に向けて怒鳴り声を上げる。
「困るのだよ! 大司祭であるこの私のやる事に、一々疑問を持つなど! 私を誰だと思っておる!!」
ここで俺が言葉を掛ける。流石に無視できないな、この人の態度は。
「あのう、どちら様でしょうか?」
「フンッ、私を知らんとは! とんだ田舎者だな! いいか、よく聞け。儂はこのエストール大神殿のトップ、大司祭様であるぞ! 頭を垂れよ!」
なんだコイツ、偉そうに。これがここのトップ? マジかよ。
こんな奴がエストール大神殿の大司祭か? 態度が悪いぞ、態度が。口も悪いし。
「巫女よ! 兎に角儂の邪魔だけはするなよ! よいな!!」
言うだけ言って、大司祭はづかづかと大股で扉から出て行った。
「なんなんですか? あれは?」
「ここのトップよ。大司祭ね。」
「あんなのがですか?」
「あんなのがよ。」
ふーむ、あれがここのトップとは、シャイニングナイツも色々とやりにくいだろうな。
巫女様は震えている、こんな女の子を怖がらせるとは許せんな。大司祭。
「あの人、あまり良い噂を聞かないのよね。」
「火の無い所に煙は立たないといいますよ、さぞ信憑性のある噂でしょうね。」
巫女様は震えながらも、気丈に大司祭の居た方を見て、不意にこう言った。
「わたくし、あの方、良くない気配が致します。」
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