おっさんが雑魚キャラに転生するも、いっぱしを目指す。

お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)

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第206話 世界の危機の話 ①

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 今この場に居るのは俺とアドン、サーシャさんと巫女様。

この四人での内々のお話らしい、なので他言無用でとの事だそうだ。

「今から話す事は、貴方方お二人を勇者に認定したから話すのよ。いい?」

「あ、いつもの話し方に戻るんですね、サーシャさん。」

「こっちの方が気が楽だし、それに公的な場でもないからね。」

アドンは腕を組み、話を聞く姿勢を貫いている。

「わしはどっちでもいいぞい、勝手に勇者に認定されても困るがのう。」

「実は俺もなんですけど、何かのっぴきならない事情でも?」

 俺が聞くと、サーシャさんは困った様な表情をして、俺達に話を聞いてほしそうにしている。

巫女様は黙って様子を窺っている、まずはサーシャさんの話次第だな。

「サーシャさん、お話は? 世界の危機についてとか。」

「ええ、そうね。まずは順を追って話すわ。世界の危機、それはズバリ、モンスターの存在よ。魔物、モンスター、名称はどっちでもいいけど、そう言う事ね。」

アドンが呆れた様な声を出す。

「なんじゃ、何かと思えばモンスターの事か。魔物が脅威なのは子供でも知っている事じゃぞい。」

「モンスターですか、俺も正直今更と思うのですが。」

しかし、サーシャさんは手の平をこちらに向け、言葉を遮った。

「モンスターというのは脅威よ、それこそ人の営みを邪魔するし、人間はおろか、エルフ、ドワーフ、獣人、リザードマンまで、その命を狙うおぞましい存在よ。」

「それは解りますが、うーん、モンスターですか。倒せない相手ではありませんが。」

「それは貴方が強いからよ、多くの人は魔物に襲われたら一溜りも無いのよ。」

うーむ、確かに、俺だって最初はモンスターが怖かったし。

「貴方方二人は、ここに居る巫女様によって選ばれた勇者よ。そして私がそれを見極めた。間違いなく貴方方は勇者よ。だからこそ、ここから重要な話をするの。どうか聞いて頂戴。知識として知っていて貰いたいのよ。」

ふーむ、まだまだ先があるという事なのか、なら聞いておこう。

 俺もアドンも、いつになく真剣な表情をしていると思う。それだけこれからの話は重いモノになりそうだ。

巫女様が話の続きを促す。

「サーシャ。」

「はい、では、お二人に聞くけど、モンスターはどうやって生まれると思う。」

サーシャさんは真剣な表情で、俺達に問いて来た。本題に触れて行くらしい。

「魔物は普通、瘴気溜まりから発生すると聞いた事がありますが。」

「わしもじゃ、そういうのは学者か何かが調べるんじゃないのかね?」

「そうなの、二人共正解。じゃあ聞くけど、瘴気はどうやって発生すると思う。」

「瘴気ですか? それは流石に解りませんが。」

「わしもじゃ、ちんぷんかんぷんじゃぞい。」

瘴気か、確かラングサーガでは魔物がポップするのが瘴気溜まりからだったな。

「憶測の域を出ませんが、魔素、マナが関係しているのでは?」

「ジャズ殿、半分正解。よく解ったわね、優秀な学者が調べてやっとたどり着いた事なのに。」

おっと、俺のゲーム知識はあまりひけらかさない方が良さそうだ。

「勘ですよ、勘。ですが、半分とは?」

「ええ、学者の説では、瘴気が溜っている所から魔物が発生しているという事は解っているの。でも、魔素が関係している事は中々結びつかないみたいね。それだけじゃないのよ、巫女様も私も、実は知っているのよ。何故魔素と何かが合わさって瘴気が発生するのかをね。」

「魔素と、何か?」

「さっぱり解らんぞい。」

「サーシャさん、魔素と何が合わさると瘴気になるのですか?」

サーシャさんも巫女様も、ここまできて答えを出し渋っている。

何か言い難い事なのかな。それとも………………。

「ここからが本題よ、二人共、よく聞いて。魔素と合わさってはいけないモノ、それは。」

 ゴクリと喉を鳴らす、いつになく真剣な表情をしているサーシャさんと、俯き加減な巫女様は、俺達に重要な事を話すようだ。

心して聞かねばなるまい。

「教えて下さい、魔素と合わさってはいけないモノとは?」

巫女様とサーシャさんは、二人顔を合わせ、コクリと頷き、ゆっくりと語り始めた。

「魔素と合わさってはいけないモノ、それは、「負の感情」よ。」

「負の、感情。」

「悔しいとか、情けないとか、もう駄目だとか、そう言う感情の事かいの?」

アドン、それはちょっと違うと思うぞ。

ここで巫女様が話に入って来た。

「負の感情、負の想念とも言います。それは、生きている者なら誰しも持っている感情なのです。無くすことなど出来ません。」

サーシャさんが話を補足する。

「例えば、田舎に長閑な村があったとするわね、そこへゴブリンの集団が押し寄せてきたとする。村人は戦えないわ、ただ一方的に殺され、蹂躙され、女は犯され、そして村はゴーストタウンになる。よくある話よ。」

サーシャさんは、どこか遠い瞳をして語り始める。

「そして、殺された村人たちの無念、痛み、苦しみ、嘆き、憤り、悲しみ、それら負の感情が魔素と干渉し、瘴気溜まりになるわ。沢山犠牲になればなるほど瘴気の規模は拡大するわ。」

「なるほど、負の感情ですか。」

「ええ、そしてそこから新たな魔物が発生し、近くの村や町を襲い、また負の感情が魔素と干渉、悪循環ね。」

「そうか、それでモンスターが人々にとって脅威になる訳ですね。瘴気が発生するから。」

「その通りよ、ジャズ殿。私達シャイニングナイツはそれら瘴気を発生させないように、日夜活動しているの。」

「立派な活動だと思います、シャイニングナイツのやっている事は。世界の平和を、明日を作っているのですね。」

「だけど、この世界全体をカバーする事なんて不可能だわ。人員が圧倒的に不足しているのよ。」

「なるほど。」

「それに、モンスターだけじゃないわ、国同士の戦争で犠牲になった一般人も、やはり負の感情を出すわ。だから、戦争なんてやってる場合じゃないのよ。」

巫女様もここで話に参加する。

「犠牲になった人々が、負の感情を蒔き、戦場で死体がゾンビになるという事もあります。また、ゴーストなどのモンスターも寄ってきます。戦争はいけないのです。自分達の首を絞める事に他なりません。」

「それは、耳が痛いですよ。軍人としては。」

ここでサーシャさんがパンっと手を打ち、話を切り替える。

「と、言う事で、私達シャイニングナイツだけでは世界全体は救えない。なので、貴方方のような勇者が必要なのです。戦乙女隊だけでは荷が重いのよね。」

ふーむ、お話は解った。勇者が必要なのもなんとなく分かる。

俺が質問する。

「エストールには、世界中で活躍している方も含めて、シャイニングナイツがどれくらい居るのですか?」

世界全体をカバー出来ないくらいだから、少ないだろう。

確か、姐御が所属している予備隊というのもあったと思うが。

「シャイニングナイツは、聖騎士隊が300名、戦乙女隊が100名と居ません。あとは予備隊が400名ぐらいです。聖騎士隊はエストールに常駐していますから、実質世界各国に派遣されているのは、戦乙女隊の100名以下が、それぞれ活動しています。」

「ええ!? たった100名以下!? そ、それは随分と少ないですね。」

そんな数で世界全体の人々を守る事は不可能だ。

「ええ、だから聖騎士隊の隊長であるシャルロットが世界中を飛び回り、少しでも優秀な女性戦士を探してスカウトしてるのよ。」

なるほど、それでオーダイン王国の時にフィラをスカウトしたって訳か。

 フィラもまんざらでも無かったみたいだし、シャイニングナイツも人手不足って事か。

そういやあ、フィラはもうここに着いたかな?

「サーシャさん、自分の仲間にシャイニングナイツにスカウトされた人が居ますが、もうここに到着したでしょうか?」

「名前は?」

「フィラです。」

「フィラ? 聞いてないわね、分かったわ、こちらで調べてみる。」

「お願いします。大事な仲間なんで。」

サーシャさんが何やら顔をニヤつかせ、俺を見てきた。

「フフフ、英雄殿の仲間ともなると、これは期待できるわね。」

「フィラは強いですよ、俺よりも。」

「それは楽しみだわ。けど、貴方は自分を過小評価しているきらいがあるわね。」

ふーむ、そうかな? 自分では自分の事に頓着しないからな。

「話が長くなりそうです。ここで一旦休憩しましょう。」

そう言って、サーシャさんはアイテムボックスからお茶を出してくれた。

まだまだ、お話は続くみたいだ。その前にまずは一服。






















 
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