おっさんが雑魚キャラに転生するも、いっぱしを目指す。

お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)

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第205話 マッスルボディーとの邂逅

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 荘厳な廊下を歩き、大神殿の名に恥じない立派な装飾が施された柱などを眺め、目的地である祈りの間まで進む。

「嗚呼、なんて立派な建物なんだ。至る所がもう芸術レベルだな、こりゃ。」

 壁には絵画が描かれ、柱には実に様々な彫刻があしらわれ、通り過ぎる人達はみな礼儀正しく静かに歩いている。

「まさに女神教の総本山って感じだな、心が引き締まるとはこう言う事を言うんだろうな。」

自然と俺の背筋もピンとしてくるし、歩き方もどこか落ち着きを払っていた。

「これが女神教会パワーか、床もピカピカに磨かれている。掃除が行き届いている証拠だな。」

ここで生活している人たちは、きっと素晴らしい人達に違いない。

「こうなってくると、巫女様という方も人物なんだろうな。ちょっと会うのが楽しみだぞ。」

まあ、サーシャさんはあの性格だから仕方ないけど、悪い人ではないからな。

さて、静かに歩いていると見えてきた。祈りの間、ここで良いんだよな。

「サーシャさんは居るかな?」

これまた綺麗な装飾が施された立派な扉を前に、軽くノックをする。

「開いてるぞい。」

おや? なんか野太い男の声がしたぞ。巫女様って男なのかな?

サーシャさんでは無い事は解る、だが野太い声は流石に予想してなかった。

「聞こえとらんかいの? 開いてるから入って良いぞい。」

「はい、失礼します。」

やっぱり男の声だ、しかも野太い。イメージと違う、どうなってんの?

恐る恐る扉を開け、中へ入ろうと部屋の中を覗いた瞬間、理解した。

「あともうワンセット行きましょう! 巫女よ。」

「も、もう勘弁して下さい。腕が上がりません。」

「何を言っとるんじゃ! そんな華奢な身体をして、もっと鍛えなければならんぞい!」

「ひいいいいいい~~~~~………………。」

筋肉ムキムキのボディービルダー。

アドンが居た。

「………………。」

女の子がアドンに鍛錬を仕込まれている、ここって筋肉神殿だっけ?

そこへ腕立て伏せをしている女の子と、アドンが仁王立ちして檄を飛ばしている。

もう一回確認するけど、筋肉神殿じゃないよね?

トレーニングジムかな?

よくわからん。

よくわからんが、ここが祈りの間である事は間違いない筈だ。

 だって、周りには三柱の女神像や祭壇やらがあるし、銀の燭台とか聖水とかそれっぽいものがあるし。

ここが祈りの間で間違いないよね?

と、いう事は、あの腕立てをやっている女の子が巫女様なのか?

「おお! 誰かと思ったらジャズではないか、おぬしもこっちに来て一緒に鍛錬に参加するのじゃ!」

「いや、俺は………。」

「遠慮するな! さあ! 共に汗を流そうではないか! のう巫女よ。」

 やはりあの女の子が巫女らしい、その巫女がこちらを向き、俺を巻き込もうと瞳をギラつかせてコクコクと頷き誘っている。

「どなたかは存じませんが、さあ、わたくしと共に!」

「へ?」

「ほら! 巫女もこう言っておられる。はよう準備せんか!!」

「な、何をすれば。」

え? 俺もやるの? 何で?

何か、そんな流れになってしまっていた。逃げられない。

なにより、ここで巫女を見捨てたら後味が悪い。

「腕立てをやればいいんですね。」

「いや、ジャズはヒンズースクワットをやりなさい。今すぐ!!!!」

「は、はいいいいい!!」

俺は駆け足で巫女の隣に行き、スクワットを始める。

巫女が腕立て、俺がスクワット、アドンは監督。

なにこれ?

どうなってんの?

なぜ俺がこんな事を?

 俺はサーシャさんとの約束を守りにここへ来ただけなのだが、肝心のサーシャさんが見当たらない。

助け船は来ない。やるしかない。理不尽だが、やるしかない。

「もっと効率よく筋肉を引き締めるんじゃ! ほれ、いいちいい、にいいい、さああん、しいいい、ごおおお。」

「早い、もっとゆっくり!」

「わたくし、もう駄目ええええーーー。」

「諦めるな! まだまだじゃぞ! 今筋肉が躍動し始めたばかりではないか!」

「そんな事、言ったって、きつい。」

「ええーい! 情けない! ジャズ! 鉄アレイを持って続けるんじゃ!!」

「勘弁してくれ、俺はこんな事をしに来た訳じゃないぞ!」

「やかましい! 兎に角鍛錬じゃ! 身体を鍛えるんじゃ! そうすれば希望は自ずと向こうからやって来るんじゃ!」

「知らねえよ! 希望って何だよ! お前に希望なんざ見出してねえんだよこっちは!!」

「黙って鍛えるんじゃ! ほれ巫女よ、動きが止まっておるぞい!」

「ひいいいいい~~~~~。」

 こうして、かれこれ20分くらい経ち、扉が開かれサーシャさんが現れた。

そしてサーシャさんの第一声。

「………………なにしてんの?」

「あ、サーシャさん。約束通り来ましたよ。」

「いや、ジャズ、貴方までなにしてんの?」

「なにって、鍛錬ですよ。ねえ巫女様。」

「ええ、最初は大変でしたが、続けていく内に段々楽しくなってきてしまいまして。鍛錬っていいですね。サーシャも一緒にやりませんか?」

「いやああああーーーーーー!!! ちょっとおおおおおお!!! 二人共なにしてんのおおおおおおおおおおおお!!!」

ここでアドンがサムズアップをし、サーシャさんまで巻き込もうと手招きした。

「さあ、いけいけ! 一気にいけ!! サーシャ殿も参加するんじゃ!!!」

「ちょっとおおおおお! アドンさんんんんんん! 何してくれちゃってんのおおおおおおおお!! うちの巫女様に何させてんのおおおおおおおお!! 巫女様も巫女様よ! なに調子に乗ってやってんの! そういうのいいから! 断りなさいそんな事! 人が良いにも程があるわよ!」

「そうですか? 結構楽しいですよ、これ。サーシャも一緒にどうですか?」

「ジャズ! 貴方までなに付き合ってんの! やめさせてよ! 貴方も流され易い性格してるわね! もう!」

「すみません、つい。」

サーシャさんが一目散に駆け寄り、アドンを蹴飛ばす。

「やめなさい! もういいから! うちの巫女様に変な事教えないでよ!」

「変な事とはなんじゃ! これはれっきとした鍛錬方法じゃぞ!」

「もういいから! やめなさい!!! 私が居ない間に何してんのよもう!!!」

 ゼーゼーと息を切らしながら、サーシャさんは腕をかくかく動かし、俺達を𠮟りつけ、なんとかこの場は収まったのだった。

少し休憩して、一息ついた頃合いを見計らったところで、きちんと挨拶をする。

「サーシャさん、約束通り来ましたよ。巫女様に会わせてくれるという事で。」

「ええ、よく来たわねジャズ。歓迎するわ。ついでにアドンさんも。」

「うむ、本当は筋肉の素晴らしさを教える為にここまで来たんじゃが、まあ、ついでじゃわい。」

ふむ、どうやらアドンは自分の考えで行動し、ここまでやって来たらしいな。

筋肉の素晴らしさを伝える為か、流石ビルダーといったところか、大したもんだ。

筋肉神殿じゃなくて良かった。普通のエストール大神殿だった。良かった。本当に。

「紹介するわね、と言ってももう知り合っているっぽいけど、こちらにいらっしゃる方が巫女様よ。」

「初めまして、改めて自己紹介を、わたくしはアネット。エストール大神殿でシャイニングナイツの方々に保護されている巫女です。どうぞよろしく。」

 ふむ、見た目は12歳ぐらいかな? 随分華奢な身体をしている。白と赤の巫女服が眩しい、可愛らしいお嬢さんだ。

「これはご丁寧に、自分はジャズと申します。サーシャさんとの約束を果たしにここまでやって参りました。よろしくお願いします。」

「お話はサーシャから伺っております、何でも素晴らしい戦果をお持ちの様で。」

「いえいえ、自分などまだまだ。」

「わしはアドン! 女神教にはこれっぽっちも興味が無いが、筋肉の素晴らしさを伝える為、ここまで教えを広めにやって来たぞい。よろしくな。」

何しに来てんのこの人。まあ、それがアドンか。今更だな。

ここでサーシャさんが真剣な表情になり、俺達に語り始めた。

「では、コホン。えー、ようこそエストールへ、あなた方を巫女様に紹介してあげたくて、ここまで事を進めてきました。早速ですが、色々と説明しなければならない事があります。ですがその前に、この世界の危機について、まずはそこから話していきたいと思います。」

 さて、サーシャさんの話とは一体どんな話かな? 俺の知っているラングサーガの歴史は700年前の事だし。

ゲーム知識だけあっても駄目って事だろう。

さてさて、どんな話が飛び出すのだろうか。































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