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第208話 世界の危機の話 ③
しおりを挟む大司祭に対して、巫女様がなにやら不穏な意見を述べた。
「良くないモノとは一体?」
俺の質問にサーシャさんが答えた。
「巫女様はね、人を見る目があるのよ。女神様から頂いたギフトね。」
なんと、女神様からの贈り物がある人だったか、それで巫女様は女神の使徒という事だった訳か。
転生者や転移者では無かったか。現地人でって事だよね。
「まあ、大司祭が怪しいのは今に始まった事じゃないわ。色々と黒い噂のある人物よ。」
「まあ、あの人の性格やら言葉使いやら、見てれば何となくは解りますが。」
俺にだって今まで培ってきた人を見る目くらいはあるつもりだ。
大司祭は俺が見た限りじゃ、悪い人物っぽいな。
「実際、大司祭は私達シャイニングナイツの足を引っ張る事ばかりしているわ。それに、ここ最近は酷い扱いを受けているのよ、巫女様とか予備隊とか。」
「女神教会のトップって事でも、誰か意見を言えないのですか?」
「意見や反論は許さない人よ、それを言ったら次の日から行方不明になったり、辺境へ飛ばされたり、兎に角やりたい放題なのよ。」
ふーむ、何処の世界にもそういう人って居るよね。ここでは大司祭がって事か。
「私の見立てでは、大司祭は悪よ。間違いなくね、だけど中々尻尾を出さないのよ。上手く隠しているし、大司祭の側近たちが邪魔をして、こちらの調査行為を阻害しているし、巫女様に対して嫌がらせ程度はしょっちゅうだし、巫女様が不快な思いをされているのもわかるわ。」
サーシャさんが言うには、やはり大司祭は怪しいらしい。
しかし、ここで巫女様が俺の袖を引っ張り、上目遣いで言ってきた。
「違うのです、そうじゃないのです。あの方は、もっと何か、良くないモノを感じるのです。」
「巫女様………。」
ふーむ、この切羽詰まった表情、只事ではなさそうだな。
「巫女様、貴女が何を伝えたいのか存じませんが、大司祭が何かあるという事は理解しました。あとは自ずと馬脚を現すでしょう、それまでこちらは隙を見せない様にした方が良さそうです。」
「は、はい。勇者殿の仰る事は的を得ています。ですが、気を付けて下さい。大司祭は恐らく、もう手遅れかもしれません。」
この女の子の表情、怖がっていると思いきや、しっかりとした自分の感性を信じている感じだ。
女神教会の巫女か、案外しっかりしているかもな。
サーシャさんも巫女様も気になっている様子だし、俺もそれとなく大司祭には気を付けておこう。
意見が一致したところで、扉がゆっくりと開いた。
今度は静かに入って来る人らしい、本来はそういうモノだと思う。
祈りの間ってくらいだから、敬意を持って巫女様と接触するものなんだろうな。
扉から入って来たのは、懐かしい人物だった。
「遅くなりましたわ、巫女様。」
ペガサスナイトのマーテルさんだ、今度はマーテルさんがやって来た。
マーテルさんは俺が知っているシャイニングナイツの一人だ、エストール大神殿に用事かな?
巫女様が笑顔で迎え入れた。
「マーテル、良く来てくれました。久しぶりですね、お元気そうで何よりです。」
「はい、巫女様もお元気そうで。大司祭からの嫌がらせによく耐えていらっしゃいますね。ご立派です。」
サーシャさんも笑顔になり、マーテルさんを歓迎した。
「マーテル、いらっしゃい。早かったわね、貴女が来たという事は女神会議に?」
「ええ、そうです。ですがここへ来る途中、広場で嫌なモノを見ました。」
マーテルさんは怪訝な表情だった、おそらくアレを見たのだろう。
「何?」
「どうやら広場にて火刑が行われるようです。気分を害しますわ。」
「火刑!? 誰がそんな事!!」
「恐らく、大司祭かと。」
俺もここで会話に参加した。
「ああ、そう言えば広場で火刑準備をしていましたよ。」
サーシャさんが顔をしかめ、腕を組んだ。
「まったく大司祭め! 一体何を考えているのよ! 火刑なんてやったらそれこそ負の感情が駄々洩れじゃない! 直ぐにやめさせないと取り返しが付かないわ!!」
ふーむ、やはり広場での火刑は女神教会の方針でやっている事じゃなさそうだな。
これも大司祭の差し金か、段々解って来たぞ。大司祭は悪だ、間違いなく。
俺の勘もそう言っている。
サーシャさんは火刑と聞き、慌てて外へ出て行った。
止めに入るのだろう、これで大司祭が大人しく引き下がるとも思えんが。
巫女派と大司祭派か、嫌な感じだ。そもそも女神教会は二つの派閥を良しとしていない様に感じる。
それを敢えてやっている大司祭は、やはり信用出来ない。
火刑もサーシャさんが止めに入ってくれるらしいし、ひとまずはって感じか。
「それでは、俺もそろそろお暇致します。これから義勇軍会議に出席しなくてはならないので。」
「はい、ここまで良く来られました。ジャズ殿、これからの貴方様に祝福がありますように。」
巫女様に祝福され、俺は気分が良くなった。
「さーて、じゃあわしもそろそろ行こうかの。筋肉の素晴らしさを伝えねばならぬ故。」
「はい、アドンさんも、ありがとうございました。貴方にも祝福を。」
「うむ、世話になったの巫女よ。ではな。」
「それじゃあマーテルさん、俺達はこれで。」
「はい、ジャズさんも会議、お疲れ様です。私達シャイニングナイツも女神教会会議が開かれますので、お互い良い会議が出来ますように。」
「ええ、では、これで失礼致します。」
俺とアドンは祈りの間から退出した、巫女様にも顔合わせしてもらったし、ここへ来た意味はあったのかな。
まあ、色んなお話を聞いて、辟易する事もあるけど、勇者認定されてしまったからには、しっかりしなきゃな。
アドンも勇者認定されたし、俺一人じゃないのは良いな。アドンにも頑張って貰おう。
「これからも宜しくな、アドン。」
「うむ、宜しくの、ジャズ。」
二人して神殿を後にし、アドンとは広場で別れて、俺は義勇軍会議に向けて会議室を目指した。
さーて、俺以外の義勇軍メンバーに会うのは初めてだ。緊張するなあ。
一体どんな人達なんだろううか? 新人も居れば古株の古参も居るだろう。
義勇軍会議か、どんな話し合いが行われるのかな。
まあ、俺は黙って会議の行く末を見ていればいいか。意見するつもりも無いし。
「さて、それじゃあ第二会議室へと向かいますか。」
俺の足取りは、幾分か軽かった。きっと巫女様に祝福して貰ったからだな。
感謝、感謝だな。あの女の子の為なら勇者をやるってのも悪く無いかもな。
まあ、出来る範囲でだがな。
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