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第54話 いやそれポンジ・スキーム(投資詐欺)!
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「石田君。君はなにをやっているんだねっ!」
「も、申し訳ございません」
西木社長が昼食を終え、帰ってきてすぐの言葉がこれだ。
経理部が完全に機能不全に陥り、営業部長の福田君と小林君が辞職した事に対する憤りを今、一身に受けている。
社長と共に昼食に行った企画部長の篠崎も、あちゃーといった表情でソファに座っていた。
「派遣社員が職務放棄しました? 経理部員がいなくなりました? 営業部長が辞職しました? 冗談じゃないよっ!」
本当に冗談であってほしい。
経理部に人が誰もいなくなり、財務・経理業務が完全ストップ。
東京証券取引所から適時開示を求められている上場企業として完全にアウトである。
支払業務が止まってしまうことも問題だ。取引先との信用問題に係ってくる。
「しかし、困りましたね。元経理部の高橋君から訴えられ、経理部に誰もいなくなり、営業部長二人も辞職。こう立て続けに問題が起こるとは……」
「篠崎君のいう通りだ。まったく、冗談じゃないよっ。それで、これからどうするんだね。石田君」
「はっ? どうするとは……」
「どうするもこうするもないよっ。だから君は駄目なんだっ! 君は管理本部長だろう? 総務部と経理部は君の管掌じゃないかっ!」
「そ、そんな事を言われても……」
「じゃあ、どうするつもりだね。このまま経理部がない状態で会社を回す気か? それができるならボクは別に構わないぞ? なにか言ったらどうだ。石田君」
西木社長に無茶振りされた私は必死になって考えを巡らす。
どうしたらいい。どうしたらいい……。
私の評価を一切落とさず、この難局を乗り切るにはどうしたらいい!
西木社長のこの口ぶり。ここで解決策を出さないとこのパワハラ経営者は確実に私の評価を下げるに決まっている。
「……どうなんだね。石田君。黙っていても仕方がないだろう?」
西木社長の執拗な催促に負けず、考えを巡らせていると、天啓が降りてきた。
社長の執拗な催促に負けず考えた抜いた私の閃き。
某有名大学を出た私の思考能力。悪魔的閃きに、脳内で拍手喝采が巻き起こる。
「……五年前に神奈川工場に転勤させた元経理部長の牧原工場長を本社に戻しましょう」
「うん? 牧原君を?」
「はい。その通りです」
そう。神奈川工場に転勤させた牧原工場長は、五年前。西木社長に『二年したら本社に幹部待遇で戻す』と言われ転勤した元経理部長だ。
西木社長はその事をすっかり忘れているみたいだが、西葛西に実家のある彼は部店長会議がある度に、東京本社に戻ってきたいとぼやいていた。
今は非常時。戻ってきたいと言うのであれば、戻して上げよう。
私の悪魔的閃きに西木社長も笑みを浮かべる。
「……そういえば、牧原君は元経理部長だったな。折を見て本社に戻す気だったし、経理部長のポストも空いている。いいだろう。今すぐ牧原君を呼び出したまえ」
「はい!」
これで経理部長の席を埋める事ができた。
あとは……。
「それと牧原君の下には、経理部に所属していた管理部の枝野を就けたいと思います」
「おお、枝野君か。いいんじゃないか? 確か枝野君は以前、経理部に所属していたな。元経理部所属なら問題ないだろ」
「はい。派遣会社にもクレームを入れておきましたので、すぐに代わりの人材が来る筈です。私も牧原君のサポートにつきます。これでいかがでしょうか?」
「うむ。そうしてくれ。牧原君には、ボクから連絡しよう」
そう言うと、西木社長はスマートフォンに手を伸ばす。
「……ああ、牧原君かね。西木だが、元気にやっているか? うむ。うむ。それは良かった。本題だがね。今、君の事を経理部長として本社に戻すことにしたから、すぐに本社に来てくれ。なに? 引き継ぎ? そんな事はね。こっちに来てから考えればいいんだ。君は常々、本社に戻りたいと言っていたじゃないか……。なにが不満なんだ。いいから、君はボクの言う通りにすればいいんだっ。待っているからね」
西木社長は言いたい事だけ述べるとそのままスマートフォンを切る。
流石は西木社長だ。
神奈川工場にいる牧原工場長に対して、引き継ぎなんていいから、いますぐ、本社に顔を見せろとは……。見事なパッチワーク。
素晴らしいパッチワーク人事だ。
穴の開いた経理部に工場長をあてがい無理矢理塞ぐ。
発案したのは私だが、流石としか言いようのない手腕だ。勿論、褒め言葉ではない。
とはいえ、前任の社長が退任してから、西木体制でこの八年間やってきた。
役員報酬は右肩上がりなのに、売上高は右肩下がり。
とはいえ問題ないだろう。仮に問題があったとしても、私がこの会社を定年退職するまで持てばそれでいい。
西木社長の会社から金を引っ張りまくる姿勢を見るに本人も、多分、そう思っているのだろう。流石は八年前、出向でやってきた雇われ社長である。
「それじゃあ、石田君。夜は牧原君の経理部長就任を祝いだ。どこか、適当な店を予約しておいてくれ」
なにかと理由を付けて、会社の経費で食事をしようとする姿勢。
何度も言うが流石は西木社長である。
しかし、そんな事を言えば、激怒するのが目に見えているので、敢えて言わない。
「はい。わかりました。それでは、私は失礼します」
そう言って、社長室から退室すると、自席へ戻る。
まったく、西木社長の相手は相変わらず疲れる。
席に座った直後、『バキッ!』と背後から変な音が鳴る。
「うん?」
音の鳴った方に顔を向けると、神棚が上から落ちてくるのが目に見えた。
「うわあっ!??」
咄嗟に避けると、神棚が台の板ごと落下し、ぶっ壊れる。
神棚の落下は凶報を意味する。
なにか良くない事が起こりそうな予感に、私は身を震わせた。
◇◆◇
『微睡の宿』に到着した俺は、一旦、現実世界に戻る為、メニューを立ち上げログアウトボタンをタップした。
「ふうっ……」
今の時間は午後八時。
もうこんな時間か……。
なんだか最近、時間が過ぎるのが早く感じる。
部屋備え付けのシャワーで身体を洗いバスタオルで身体を拭うと、服を着てそのままベッドにダイブする。
やはり睡眠を取るならDWの世界より現実世界が一番だ。
シモンズ社製のベッドが気持ちいい。
部屋の電気を消すと、枕に頭を埋め布団を頭から被り目を瞑る。
今日も色々な事があったなと、そんな事を思いながら眠る事にした。
翌朝、レストランで朝食を済ませた俺は、特に目的もなく近くのカフェで珈琲タイムを満喫していた。
牽き立ての珈琲は美味い。
朝、会社に向かう会社員を見ながらカフェで珈琲を飲んでいると、上流階級の人間になったかのように錯覚する。
『コーヒー』を『珈琲』と漢字読みで書いてあるメニューも格式高く感じるから不思議だ。
日本経済新聞のテレビ面に視線を向けながら本日の珈琲を飲んでいると、横から声がかかる。
「あれ? もしかして、高橋?」
「うん?」
日本経済新聞のテレビ面から視線を外し、声のした方を向くと、そこにはどこかで見たような身なりの良いスーツ姿の男が立っていた。
うーん。まったく思い出せない。
誰だこいつ?
そんな事を考えていると、男は勝手に俺の対面に座る。
「高橋、やっぱり高橋じゃないか! 俺だよ俺。工藤だよ」
「工藤? ああ……」
そういえば、高校時代。そんな奴が教室にいたな。
確か高校卒業後、二年制の専門学校に進学し、二年留年した揚句、除籍された奴だ。
なんだか、インパクトのある経歴の奴だったから覚えてる。
「なんか久しぶりだなぁ! 高橋は今、何をやってるんだ?」
「俺? 俺は……」
無職だけど、とは言いにくい雰囲気だ。
すると、工藤は笑顔で会話を続ける。
「冗談、冗談! 友達から聞いたんだけど、お前さ、上場企業で働いてるんだろ? いいよなぁ上場企業! なんかカッコいいじゃん」
スゲーな。
『上場企業で働いてるんだろ? いいよなぁ上場企業! なんかカッコいいじゃん』なんてポジティブな意見初めて聞いた。
そんなに良くないぞ。上場企業。
上場企業なんてピンキリなんだから、一部の超優良企業と一緒にしない方がいい。
上場企業に夢を見るなよ。遣り甲斐搾取されるぞ。
「……ああ、そうだな。お前こそ、なんかいいスーツ着てるじゃん」
俺なんか一着一万円以下の情熱価格スーツしか持ってないぞ。高いスーツ買う意味わかんないし。時計もスマホがあれば十分だしな。
そんなポジティブなテンションについて行けず、珈琲を飲みながら適当に返事をすると、何を勘違いしたのか工藤が前のめりになり饒舌に話し始めた。
「そうなんだよ。実はこれアルママーニのスーツでさ、こっちはロレエックスの時計なんだ。どちらも高かったなぁ~」
「へえ~。そうなんだ……」
心底どうでもいいです……。
っていうか、アルママーニって何?
ロレエックスってどこのブランド??
海外の偽ブランドか何かだろうか?
高く購入しちゃったって事は何?
もしかしてコイツ。騙されちゃったの??
そんな事を考えるも饒舌になった工藤は止まらない。
「そうなんだよっ! 実はここだけの話なんだけどさ……。今、俺、すげー利回りのいい所に投資してるんだ……」
そう言うと急に工藤が小声で話し始める。
「へえ、投資してるんだ。なんだか凄いね……」
俺なんて自社株買ってとんでもない目にあったぞ。
社長に薦められて買ったけど、毎年毎年、株価がどんどん下がっていくんだ。
しかも、経理部員として決算発表をしてる立場だったから、タイミングを見て売る事もできなかった。
それにしても凄い熱意だな。
珈琲啜りながら適当に話を聞いているのに、未だ熱意が冷めない。
「そうなんだよ! しかも元本保証で三十パーセント以上の高額配当が毎月貰えるんだ! スゲーだろ! 四ヶ月で元が取れるんだよ!」
いやそれ、ポンジ・スキームッッッッ!!
元本保証で高額配当って、それ普通に投資詐欺だからっ!
マジで?
もしかしてコイツ。俺を嵌めようとしてる?
それともコイツ自身が嵌ってる??
つーか、さっきの小声はどうした。
ここだけの話を大声で喋っちゃってるぞ!
「実は俺、消費者金融から二百万円借りて投資してるんだけどさ、ホントにスゲーんだよ! 本当はあまり教えたくないんだけどさ、紹介すると一人につき毎月二パーセント配当が増えるみたいなんだ。もしよかったら、高橋の事を紹介させてくれよ!」
いや、マジかコイツ。
消費者金融から二百万円借りて投資してるの?
投資先としては最悪だよ。それ??
頭大丈夫??
ふと、そんな事を思った。
「も、申し訳ございません」
西木社長が昼食を終え、帰ってきてすぐの言葉がこれだ。
経理部が完全に機能不全に陥り、営業部長の福田君と小林君が辞職した事に対する憤りを今、一身に受けている。
社長と共に昼食に行った企画部長の篠崎も、あちゃーといった表情でソファに座っていた。
「派遣社員が職務放棄しました? 経理部員がいなくなりました? 営業部長が辞職しました? 冗談じゃないよっ!」
本当に冗談であってほしい。
経理部に人が誰もいなくなり、財務・経理業務が完全ストップ。
東京証券取引所から適時開示を求められている上場企業として完全にアウトである。
支払業務が止まってしまうことも問題だ。取引先との信用問題に係ってくる。
「しかし、困りましたね。元経理部の高橋君から訴えられ、経理部に誰もいなくなり、営業部長二人も辞職。こう立て続けに問題が起こるとは……」
「篠崎君のいう通りだ。まったく、冗談じゃないよっ。それで、これからどうするんだね。石田君」
「はっ? どうするとは……」
「どうするもこうするもないよっ。だから君は駄目なんだっ! 君は管理本部長だろう? 総務部と経理部は君の管掌じゃないかっ!」
「そ、そんな事を言われても……」
「じゃあ、どうするつもりだね。このまま経理部がない状態で会社を回す気か? それができるならボクは別に構わないぞ? なにか言ったらどうだ。石田君」
西木社長に無茶振りされた私は必死になって考えを巡らす。
どうしたらいい。どうしたらいい……。
私の評価を一切落とさず、この難局を乗り切るにはどうしたらいい!
西木社長のこの口ぶり。ここで解決策を出さないとこのパワハラ経営者は確実に私の評価を下げるに決まっている。
「……どうなんだね。石田君。黙っていても仕方がないだろう?」
西木社長の執拗な催促に負けず、考えを巡らせていると、天啓が降りてきた。
社長の執拗な催促に負けず考えた抜いた私の閃き。
某有名大学を出た私の思考能力。悪魔的閃きに、脳内で拍手喝采が巻き起こる。
「……五年前に神奈川工場に転勤させた元経理部長の牧原工場長を本社に戻しましょう」
「うん? 牧原君を?」
「はい。その通りです」
そう。神奈川工場に転勤させた牧原工場長は、五年前。西木社長に『二年したら本社に幹部待遇で戻す』と言われ転勤した元経理部長だ。
西木社長はその事をすっかり忘れているみたいだが、西葛西に実家のある彼は部店長会議がある度に、東京本社に戻ってきたいとぼやいていた。
今は非常時。戻ってきたいと言うのであれば、戻して上げよう。
私の悪魔的閃きに西木社長も笑みを浮かべる。
「……そういえば、牧原君は元経理部長だったな。折を見て本社に戻す気だったし、経理部長のポストも空いている。いいだろう。今すぐ牧原君を呼び出したまえ」
「はい!」
これで経理部長の席を埋める事ができた。
あとは……。
「それと牧原君の下には、経理部に所属していた管理部の枝野を就けたいと思います」
「おお、枝野君か。いいんじゃないか? 確か枝野君は以前、経理部に所属していたな。元経理部所属なら問題ないだろ」
「はい。派遣会社にもクレームを入れておきましたので、すぐに代わりの人材が来る筈です。私も牧原君のサポートにつきます。これでいかがでしょうか?」
「うむ。そうしてくれ。牧原君には、ボクから連絡しよう」
そう言うと、西木社長はスマートフォンに手を伸ばす。
「……ああ、牧原君かね。西木だが、元気にやっているか? うむ。うむ。それは良かった。本題だがね。今、君の事を経理部長として本社に戻すことにしたから、すぐに本社に来てくれ。なに? 引き継ぎ? そんな事はね。こっちに来てから考えればいいんだ。君は常々、本社に戻りたいと言っていたじゃないか……。なにが不満なんだ。いいから、君はボクの言う通りにすればいいんだっ。待っているからね」
西木社長は言いたい事だけ述べるとそのままスマートフォンを切る。
流石は西木社長だ。
神奈川工場にいる牧原工場長に対して、引き継ぎなんていいから、いますぐ、本社に顔を見せろとは……。見事なパッチワーク。
素晴らしいパッチワーク人事だ。
穴の開いた経理部に工場長をあてがい無理矢理塞ぐ。
発案したのは私だが、流石としか言いようのない手腕だ。勿論、褒め言葉ではない。
とはいえ、前任の社長が退任してから、西木体制でこの八年間やってきた。
役員報酬は右肩上がりなのに、売上高は右肩下がり。
とはいえ問題ないだろう。仮に問題があったとしても、私がこの会社を定年退職するまで持てばそれでいい。
西木社長の会社から金を引っ張りまくる姿勢を見るに本人も、多分、そう思っているのだろう。流石は八年前、出向でやってきた雇われ社長である。
「それじゃあ、石田君。夜は牧原君の経理部長就任を祝いだ。どこか、適当な店を予約しておいてくれ」
なにかと理由を付けて、会社の経費で食事をしようとする姿勢。
何度も言うが流石は西木社長である。
しかし、そんな事を言えば、激怒するのが目に見えているので、敢えて言わない。
「はい。わかりました。それでは、私は失礼します」
そう言って、社長室から退室すると、自席へ戻る。
まったく、西木社長の相手は相変わらず疲れる。
席に座った直後、『バキッ!』と背後から変な音が鳴る。
「うん?」
音の鳴った方に顔を向けると、神棚が上から落ちてくるのが目に見えた。
「うわあっ!??」
咄嗟に避けると、神棚が台の板ごと落下し、ぶっ壊れる。
神棚の落下は凶報を意味する。
なにか良くない事が起こりそうな予感に、私は身を震わせた。
◇◆◇
『微睡の宿』に到着した俺は、一旦、現実世界に戻る為、メニューを立ち上げログアウトボタンをタップした。
「ふうっ……」
今の時間は午後八時。
もうこんな時間か……。
なんだか最近、時間が過ぎるのが早く感じる。
部屋備え付けのシャワーで身体を洗いバスタオルで身体を拭うと、服を着てそのままベッドにダイブする。
やはり睡眠を取るならDWの世界より現実世界が一番だ。
シモンズ社製のベッドが気持ちいい。
部屋の電気を消すと、枕に頭を埋め布団を頭から被り目を瞑る。
今日も色々な事があったなと、そんな事を思いながら眠る事にした。
翌朝、レストランで朝食を済ませた俺は、特に目的もなく近くのカフェで珈琲タイムを満喫していた。
牽き立ての珈琲は美味い。
朝、会社に向かう会社員を見ながらカフェで珈琲を飲んでいると、上流階級の人間になったかのように錯覚する。
『コーヒー』を『珈琲』と漢字読みで書いてあるメニューも格式高く感じるから不思議だ。
日本経済新聞のテレビ面に視線を向けながら本日の珈琲を飲んでいると、横から声がかかる。
「あれ? もしかして、高橋?」
「うん?」
日本経済新聞のテレビ面から視線を外し、声のした方を向くと、そこにはどこかで見たような身なりの良いスーツ姿の男が立っていた。
うーん。まったく思い出せない。
誰だこいつ?
そんな事を考えていると、男は勝手に俺の対面に座る。
「高橋、やっぱり高橋じゃないか! 俺だよ俺。工藤だよ」
「工藤? ああ……」
そういえば、高校時代。そんな奴が教室にいたな。
確か高校卒業後、二年制の専門学校に進学し、二年留年した揚句、除籍された奴だ。
なんだか、インパクトのある経歴の奴だったから覚えてる。
「なんか久しぶりだなぁ! 高橋は今、何をやってるんだ?」
「俺? 俺は……」
無職だけど、とは言いにくい雰囲気だ。
すると、工藤は笑顔で会話を続ける。
「冗談、冗談! 友達から聞いたんだけど、お前さ、上場企業で働いてるんだろ? いいよなぁ上場企業! なんかカッコいいじゃん」
スゲーな。
『上場企業で働いてるんだろ? いいよなぁ上場企業! なんかカッコいいじゃん』なんてポジティブな意見初めて聞いた。
そんなに良くないぞ。上場企業。
上場企業なんてピンキリなんだから、一部の超優良企業と一緒にしない方がいい。
上場企業に夢を見るなよ。遣り甲斐搾取されるぞ。
「……ああ、そうだな。お前こそ、なんかいいスーツ着てるじゃん」
俺なんか一着一万円以下の情熱価格スーツしか持ってないぞ。高いスーツ買う意味わかんないし。時計もスマホがあれば十分だしな。
そんなポジティブなテンションについて行けず、珈琲を飲みながら適当に返事をすると、何を勘違いしたのか工藤が前のめりになり饒舌に話し始めた。
「そうなんだよ。実はこれアルママーニのスーツでさ、こっちはロレエックスの時計なんだ。どちらも高かったなぁ~」
「へえ~。そうなんだ……」
心底どうでもいいです……。
っていうか、アルママーニって何?
ロレエックスってどこのブランド??
海外の偽ブランドか何かだろうか?
高く購入しちゃったって事は何?
もしかしてコイツ。騙されちゃったの??
そんな事を考えるも饒舌になった工藤は止まらない。
「そうなんだよっ! 実はここだけの話なんだけどさ……。今、俺、すげー利回りのいい所に投資してるんだ……」
そう言うと急に工藤が小声で話し始める。
「へえ、投資してるんだ。なんだか凄いね……」
俺なんて自社株買ってとんでもない目にあったぞ。
社長に薦められて買ったけど、毎年毎年、株価がどんどん下がっていくんだ。
しかも、経理部員として決算発表をしてる立場だったから、タイミングを見て売る事もできなかった。
それにしても凄い熱意だな。
珈琲啜りながら適当に話を聞いているのに、未だ熱意が冷めない。
「そうなんだよ! しかも元本保証で三十パーセント以上の高額配当が毎月貰えるんだ! スゲーだろ! 四ヶ月で元が取れるんだよ!」
いやそれ、ポンジ・スキームッッッッ!!
元本保証で高額配当って、それ普通に投資詐欺だからっ!
マジで?
もしかしてコイツ。俺を嵌めようとしてる?
それともコイツ自身が嵌ってる??
つーか、さっきの小声はどうした。
ここだけの話を大声で喋っちゃってるぞ!
「実は俺、消費者金融から二百万円借りて投資してるんだけどさ、ホントにスゲーんだよ! 本当はあまり教えたくないんだけどさ、紹介すると一人につき毎月二パーセント配当が増えるみたいなんだ。もしよかったら、高橋の事を紹介させてくれよ!」
いや、マジかコイツ。
消費者金融から二百万円借りて投資してるの?
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頭大丈夫??
ふと、そんな事を思った。
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しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
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