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第114話 教会事変-ヤンデレ少女メリー再び②
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コスチュームとは、まだこの世界がゲームだった頃、ユグドラシル・ショップで販売されていたキャラクターの見た目を替える事ができる装備アイテム・衣装の事である。
俺はこの手のコスチュームを多く抱えていた。
決して趣味ではない。何故かはわからないが大量に倉庫に収められていた為だ。
『司祭』コスチュームを取り出すと、カイルが『ムームー』と呻く。
何故、縛られ何を呻いているのかわからないが、多分、『縄を解いてくれ』的な事を呻いているのだろう。しかし、今は後回しだ。
今も絶え間なく屋外・教会内に吹き荒れるナイフの嵐。教会内は廃屋のようにボロボロだ。
しかし、俺にはやらなければならない事がある。
モブ・フェンリルスーツの上から『司祭』コスチュームを装備すると、台車に乗せていた司祭様を降ろし、代わりに縛られたカイルを乗せて祭壇まで運んでいく。
そして、カイルの縄を解くと、祭壇の前に立たせた。
すると、司祭様を滅多刺しにしていた『ヤンデレ少女』メリーさんがカイルの横に立つ。
「よし。それじゃあ、始めよう」
「カケル……お前、何を……」
何を?
そんな事は決まっている。
「茶番劇をだよ……」
しかし、その茶番劇はメリーさんの怒りを鎮める為にも必要な茶番劇だ。
カイルの言葉を無視し、カイルの隣にメリーさんが立った事を確認すると、俺は軽く目を閉じ、祭壇に置いてあった本をカンペ代わりに朗読する。
「……汝カイルは、この女メリーを妻とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い、妻を想い、妻のみに添う事を神聖なる大樹ユグドラシルのもとに誓いますか?」
俺は『司祭』コスチュームを身に纏い、カイルに視線を向ける。すると、カイルはメリーさんに視線を向け「はい」と言って頷いた。
そして、次に俺はメリーさんに視線を向ける。
「汝メリーは、この男カイルを夫とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い、夫を想い、夫のみに添うことを神聖なる大樹ユグドラシルのもとに、誓いますか?」
そう言って視線を向けると、メリーさんは顔を赤らめながら『はい……』と言って頷いた。
今更ながら、カイルとメリーさんとの結婚を神聖なる大樹に誓っていいものなのだろうか?
メリーさんはヤンデレ『少女』。少女と結婚するカイルを祝福していいものか迷うが仕方がない。これでメリーさんの気持ちが治まるのであれば、それでいいのだ。怒りが収まらず、誰彼構わず惨殺されたらたまらない。
そんな気持ちで最後の文章を読み上げる。
「お二人の上に神の祝福を願い、結婚の絆によって結ばれたこのお二人を神聖なる大樹ユグドラシルが慈しみ深く守り、助けてくださるよう祈りましょう。万物を支える神聖なる大樹ユグドラシルは夫婦の愛を祝福してくださいました。今日結婚の誓いをかわした二人の上に、満ちあふれる祝福を注いでください。二人が愛に生き、健全な家庭を造りますように……。喜びにつけ悲しみにつけ信頼と感謝を忘れず、あなたに支えられて仕事に励み、困難にあっては慰めを見いだすことができますように……。また多くの友に恵まれ、結婚がもたらす恵みによって成長し、実り豊かな生活を送ることができますように……」
そう告げた瞬間、教会内を覆っていた重苦しい空気が軽くなる。宙を浮いていたナイフもバラバラと地に落ちた。
どうやらメリーさんの気が治まった様だ。
現に目の前では、祝福を受けた二人?がイチャイチャしている。
霊的、呪的何かとのイチャイチャ。
すげーなそれ、どうやってやるの?
「さて、カイル君? メリーさんの気が治まった様だし、これからの話をしようか」
「えっ? これからの話?」
「ああ、これからの話だ」
メリーさんとカイルが醸し出す甘い空気に水を差す様にそう告げると、周囲を見渡す。
そこには――
天井や壁、床に突き刺さったナイフの数々。
穴の開いた天井。
壊れた椅子にステンドグラス。
――『ヤンデレ少女』メリーさんの呪いの痕跡がはっきりと残っていた。
「あっ……」
俺の言いたい事が伝わったようで何より。
冷や汗を流すカイルに、満面の笑顔を浮かべるメリーさん。
そんな対称的な両名を見て俺は笑みを浮かべる。
「さて、この惨状はカイル。お前の婚約者であるメリーさんが引き起こした事だ。それでどうする?」
「えっ?」
「お前も結婚したんだ。一人の夫として、配偶者のやってしまった事に対し責任は負わないとな」
教会の司祭様に祝福してもらおうと教会に来た結果、強制的にカイルと引き剥がされそうになり、それを拒んだ結果、神聖な教会が荒廃した廃墟の様になってしまった。そのすべての責任がカイルにあるとは思っていない。
不幸な行き違いがあったとはいえ、勝手に呪いを解こうとした教会の司祭にも問題がある。何といっても、勝手に呪いを解こうとして、解呪に失敗した結果がこれだ。
まあ、そもそもカイルの奴が『メリーちゃんと結婚します。司祭様、祝福して下さい』なんて事を教会にお願いしなければこんな事にならなかった訳だけれど……。
「お、俺はどうすれば……」
俺の言った言葉に言い淀むカイル。
当然だ。被害がデカ過ぎてどうしたらいいかなんて俺にもわからない。
しかし、最低限、教会を建て直す為の費用や、教会が建つまでの生活費の工面は必要となるだろう。
「……カイル。俺なら何とかしてやれない事もないぞ? そうだな……。俺が必要とする時、メリーさんの力を貸してくれるというなら、この苦難。何とかして見せよう。どうする?」
嫌な言い方だが、俺には使い切れない程多くのコル(金)がある。
何故か?
それは、このゲーム世界での生活を主軸にしていないからだ。
元から結構なコルを持っていたし、マイルームの倉庫にあり得ない位のコルが収められていた。ついでに言えば、俺はこの世界で『微睡の宿』という宿を経営し、冒険者協会には、大量の回復薬を売り渡している。
つまり、コルは増える一方。
そのゲーム内通貨、コルの力を使いカイルの奴を助けて上げてもいい。
もちろん、最終的にコルは全額返してもらう予定だが、利息を付ける気はないし、毎月定額支払ってくれれば、まったく問題ない。
そう告げると、カイルは顔を真っ青にして呟いた。
「い、一体、いくら位必要なんだ……」
「そうだな……」
この教会の規模を見るに一億コルといった所だろうか?
その半分は司祭様に請求するとして五千万コルは下らないだろうな……。
まあ、教会修繕にいくら係るのかについては、そこに寝ている司祭様に直接聞いて見る事にしよう……っと、その前に。
俺は、『司祭』コスチュームを外すとアイテムストレージに収納すると、エレメンタルに護られ、一人、床で『スースー』寝ている司祭様に近付いていく。
「ほら、司祭様。起きて下さいよ。すべて終わりましたよー」
そう言って、司祭様の頬を軽くペチペチ叩き起こそうとすると、司祭様は――
「むっー。ぬふふふ……マミちゃーん……ネックレスが欲しい? そんなのすぐに買ってあげるから大丈夫……すやー」
――と訳の分からない寝言を呟き、また寝てしまう。
「……おい。聞いたか? 今の……」
司祭様を起こすのを中断すると、無表情のままカイルに話しかける。
「あ、ああっ……」
そう呟くも、カイルはカイルでなんだか言い難そうだ。
そう言えば、以前、カイルが入れ揚げていたキャバ嬢の名前もマミちゃんだった様な……。
「生臭坊主ならぬ生臭司祭様だった訳だ……」
いいネタが手に入った。
確か、司祭は一生独身だった筈。結婚して子供ができた後、妻と死別し司祭となるケースもあるだろうが、この司祭はどう考えても違う。
こいつ……献金してもらったコルをそのままキャバ嬢のマミちゃんに貢いでやがる……。
司祭様の顔をよく見れば、顔の造形も無駄に良く。モテるのをいい事に町の女を次々とモノにする生臭神父ユルバン・グランディエを彷彿とさせる美青年だ。
よし。とりあえず、あれだ。
カイルの件は、何とかなりそうだな。
「とりあえず、カイル……。メリーさんに言って壁や天井、床に突き刺さったままのナイフを消してくれ。流石にこんな現状では、お前の事を庇いきれないからな」
「あ、ああ、わかった。メリー。お願いできるか?」
カイルがそうお願いすると、メリーは両手を上げる。
すると、突き刺さったままとなっていたナイフがガタガタ震えて宙に浮きメリーさんの頭上に集まってきた。
そして、集まったナイフはメリーさんの頭上で黒い粒となり空気に溶け込むように消えていく。
「……あ、ありがとう。カイル君。メリーさん」
うん。やっぱり怖いな。メリーさんは……。
呪いがあまりに強力過ぎる。
それこそ、メリーさんがいればダンジョンなんて簡単に攻略できるのではないかと錯覚してしまう位の強さだ。
どうやってこんな強力な呪いを手懐けたんだ。意味がわからん。
まあとりあえず、カイルの奴には恩を売っておくか。
金を貸す位でいいなら安いものだ。
メリーさん強力だし、メリーさんが上級ダンジョン攻略を手伝ってくれるなら百人力だ。
「さてと、改めて、この生臭司祭を起こしますか……おーい。司教様ぁー起きて下さいよー。これ以上、寝言を言っちゃうと拙いんじゃないですかー?」
再度、胸倉を掴みガクガク揺らしながら起こすと、生臭司祭が目を覚ました。
「う、うーん……私は一体何を……確か強力な呪いを解いていた最中、誰かに刺された様な……」
凄いな。自分が倒れる前の事を正確に理解している様だ。
生臭司祭から手を離すと、生臭司祭は荒れ果てた教会内部を眺め茫然とした表情を浮かべる。
「こ、これは一体……私が眠っている間に何があったんだっ……」
「いやー、実はその件で話したい事がありまして……」
そう言って、俺は生臭司祭の肩に手を回すと、一枚の契約書を見せる。
「起きて早々、申し訳ないのですが、ちょっと、半壊しちゃった教会の件でお話し合いをしましょうか……」
すると、生臭司祭は唖然とした視線を俺に向けてきた。
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2022年7月10日AM7時更新となります。
俺はこの手のコスチュームを多く抱えていた。
決して趣味ではない。何故かはわからないが大量に倉庫に収められていた為だ。
『司祭』コスチュームを取り出すと、カイルが『ムームー』と呻く。
何故、縛られ何を呻いているのかわからないが、多分、『縄を解いてくれ』的な事を呻いているのだろう。しかし、今は後回しだ。
今も絶え間なく屋外・教会内に吹き荒れるナイフの嵐。教会内は廃屋のようにボロボロだ。
しかし、俺にはやらなければならない事がある。
モブ・フェンリルスーツの上から『司祭』コスチュームを装備すると、台車に乗せていた司祭様を降ろし、代わりに縛られたカイルを乗せて祭壇まで運んでいく。
そして、カイルの縄を解くと、祭壇の前に立たせた。
すると、司祭様を滅多刺しにしていた『ヤンデレ少女』メリーさんがカイルの横に立つ。
「よし。それじゃあ、始めよう」
「カケル……お前、何を……」
何を?
そんな事は決まっている。
「茶番劇をだよ……」
しかし、その茶番劇はメリーさんの怒りを鎮める為にも必要な茶番劇だ。
カイルの言葉を無視し、カイルの隣にメリーさんが立った事を確認すると、俺は軽く目を閉じ、祭壇に置いてあった本をカンペ代わりに朗読する。
「……汝カイルは、この女メリーを妻とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い、妻を想い、妻のみに添う事を神聖なる大樹ユグドラシルのもとに誓いますか?」
俺は『司祭』コスチュームを身に纏い、カイルに視線を向ける。すると、カイルはメリーさんに視線を向け「はい」と言って頷いた。
そして、次に俺はメリーさんに視線を向ける。
「汝メリーは、この男カイルを夫とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い、夫を想い、夫のみに添うことを神聖なる大樹ユグドラシルのもとに、誓いますか?」
そう言って視線を向けると、メリーさんは顔を赤らめながら『はい……』と言って頷いた。
今更ながら、カイルとメリーさんとの結婚を神聖なる大樹に誓っていいものなのだろうか?
メリーさんはヤンデレ『少女』。少女と結婚するカイルを祝福していいものか迷うが仕方がない。これでメリーさんの気持ちが治まるのであれば、それでいいのだ。怒りが収まらず、誰彼構わず惨殺されたらたまらない。
そんな気持ちで最後の文章を読み上げる。
「お二人の上に神の祝福を願い、結婚の絆によって結ばれたこのお二人を神聖なる大樹ユグドラシルが慈しみ深く守り、助けてくださるよう祈りましょう。万物を支える神聖なる大樹ユグドラシルは夫婦の愛を祝福してくださいました。今日結婚の誓いをかわした二人の上に、満ちあふれる祝福を注いでください。二人が愛に生き、健全な家庭を造りますように……。喜びにつけ悲しみにつけ信頼と感謝を忘れず、あなたに支えられて仕事に励み、困難にあっては慰めを見いだすことができますように……。また多くの友に恵まれ、結婚がもたらす恵みによって成長し、実り豊かな生活を送ることができますように……」
そう告げた瞬間、教会内を覆っていた重苦しい空気が軽くなる。宙を浮いていたナイフもバラバラと地に落ちた。
どうやらメリーさんの気が治まった様だ。
現に目の前では、祝福を受けた二人?がイチャイチャしている。
霊的、呪的何かとのイチャイチャ。
すげーなそれ、どうやってやるの?
「さて、カイル君? メリーさんの気が治まった様だし、これからの話をしようか」
「えっ? これからの話?」
「ああ、これからの話だ」
メリーさんとカイルが醸し出す甘い空気に水を差す様にそう告げると、周囲を見渡す。
そこには――
天井や壁、床に突き刺さったナイフの数々。
穴の開いた天井。
壊れた椅子にステンドグラス。
――『ヤンデレ少女』メリーさんの呪いの痕跡がはっきりと残っていた。
「あっ……」
俺の言いたい事が伝わったようで何より。
冷や汗を流すカイルに、満面の笑顔を浮かべるメリーさん。
そんな対称的な両名を見て俺は笑みを浮かべる。
「さて、この惨状はカイル。お前の婚約者であるメリーさんが引き起こした事だ。それでどうする?」
「えっ?」
「お前も結婚したんだ。一人の夫として、配偶者のやってしまった事に対し責任は負わないとな」
教会の司祭様に祝福してもらおうと教会に来た結果、強制的にカイルと引き剥がされそうになり、それを拒んだ結果、神聖な教会が荒廃した廃墟の様になってしまった。そのすべての責任がカイルにあるとは思っていない。
不幸な行き違いがあったとはいえ、勝手に呪いを解こうとした教会の司祭にも問題がある。何といっても、勝手に呪いを解こうとして、解呪に失敗した結果がこれだ。
まあ、そもそもカイルの奴が『メリーちゃんと結婚します。司祭様、祝福して下さい』なんて事を教会にお願いしなければこんな事にならなかった訳だけれど……。
「お、俺はどうすれば……」
俺の言った言葉に言い淀むカイル。
当然だ。被害がデカ過ぎてどうしたらいいかなんて俺にもわからない。
しかし、最低限、教会を建て直す為の費用や、教会が建つまでの生活費の工面は必要となるだろう。
「……カイル。俺なら何とかしてやれない事もないぞ? そうだな……。俺が必要とする時、メリーさんの力を貸してくれるというなら、この苦難。何とかして見せよう。どうする?」
嫌な言い方だが、俺には使い切れない程多くのコル(金)がある。
何故か?
それは、このゲーム世界での生活を主軸にしていないからだ。
元から結構なコルを持っていたし、マイルームの倉庫にあり得ない位のコルが収められていた。ついでに言えば、俺はこの世界で『微睡の宿』という宿を経営し、冒険者協会には、大量の回復薬を売り渡している。
つまり、コルは増える一方。
そのゲーム内通貨、コルの力を使いカイルの奴を助けて上げてもいい。
もちろん、最終的にコルは全額返してもらう予定だが、利息を付ける気はないし、毎月定額支払ってくれれば、まったく問題ない。
そう告げると、カイルは顔を真っ青にして呟いた。
「い、一体、いくら位必要なんだ……」
「そうだな……」
この教会の規模を見るに一億コルといった所だろうか?
その半分は司祭様に請求するとして五千万コルは下らないだろうな……。
まあ、教会修繕にいくら係るのかについては、そこに寝ている司祭様に直接聞いて見る事にしよう……っと、その前に。
俺は、『司祭』コスチュームを外すとアイテムストレージに収納すると、エレメンタルに護られ、一人、床で『スースー』寝ている司祭様に近付いていく。
「ほら、司祭様。起きて下さいよ。すべて終わりましたよー」
そう言って、司祭様の頬を軽くペチペチ叩き起こそうとすると、司祭様は――
「むっー。ぬふふふ……マミちゃーん……ネックレスが欲しい? そんなのすぐに買ってあげるから大丈夫……すやー」
――と訳の分からない寝言を呟き、また寝てしまう。
「……おい。聞いたか? 今の……」
司祭様を起こすのを中断すると、無表情のままカイルに話しかける。
「あ、ああっ……」
そう呟くも、カイルはカイルでなんだか言い難そうだ。
そう言えば、以前、カイルが入れ揚げていたキャバ嬢の名前もマミちゃんだった様な……。
「生臭坊主ならぬ生臭司祭様だった訳だ……」
いいネタが手に入った。
確か、司祭は一生独身だった筈。結婚して子供ができた後、妻と死別し司祭となるケースもあるだろうが、この司祭はどう考えても違う。
こいつ……献金してもらったコルをそのままキャバ嬢のマミちゃんに貢いでやがる……。
司祭様の顔をよく見れば、顔の造形も無駄に良く。モテるのをいい事に町の女を次々とモノにする生臭神父ユルバン・グランディエを彷彿とさせる美青年だ。
よし。とりあえず、あれだ。
カイルの件は、何とかなりそうだな。
「とりあえず、カイル……。メリーさんに言って壁や天井、床に突き刺さったままのナイフを消してくれ。流石にこんな現状では、お前の事を庇いきれないからな」
「あ、ああ、わかった。メリー。お願いできるか?」
カイルがそうお願いすると、メリーは両手を上げる。
すると、突き刺さったままとなっていたナイフがガタガタ震えて宙に浮きメリーさんの頭上に集まってきた。
そして、集まったナイフはメリーさんの頭上で黒い粒となり空気に溶け込むように消えていく。
「……あ、ありがとう。カイル君。メリーさん」
うん。やっぱり怖いな。メリーさんは……。
呪いがあまりに強力過ぎる。
それこそ、メリーさんがいればダンジョンなんて簡単に攻略できるのではないかと錯覚してしまう位の強さだ。
どうやってこんな強力な呪いを手懐けたんだ。意味がわからん。
まあとりあえず、カイルの奴には恩を売っておくか。
金を貸す位でいいなら安いものだ。
メリーさん強力だし、メリーさんが上級ダンジョン攻略を手伝ってくれるなら百人力だ。
「さてと、改めて、この生臭司祭を起こしますか……おーい。司教様ぁー起きて下さいよー。これ以上、寝言を言っちゃうと拙いんじゃないですかー?」
再度、胸倉を掴みガクガク揺らしながら起こすと、生臭司祭が目を覚ました。
「う、うーん……私は一体何を……確か強力な呪いを解いていた最中、誰かに刺された様な……」
凄いな。自分が倒れる前の事を正確に理解している様だ。
生臭司祭から手を離すと、生臭司祭は荒れ果てた教会内部を眺め茫然とした表情を浮かべる。
「こ、これは一体……私が眠っている間に何があったんだっ……」
「いやー、実はその件で話したい事がありまして……」
そう言って、俺は生臭司祭の肩に手を回すと、一枚の契約書を見せる。
「起きて早々、申し訳ないのですが、ちょっと、半壊しちゃった教会の件でお話し合いをしましょうか……」
すると、生臭司祭は唖然とした視線を俺に向けてきた。
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2022年7月10日AM7時更新となります。
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