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第115話 教会事変-ヤンデレ少女メリー再び③
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「き、君は一体……」
「ああ、俺はカケル。そんでもって、そこにいる奴は、可哀相な被害者のカイル君だ。さて、時間も惜しいし手短に話を進めよう。司祭様、あなたにはこの半壊した教会を建て直す費用の二分の一を持って頂きたい。あなたがカイルの呪いを解こうと思わなければ、教会が半壊するような事はなかったんだ。とはいえ、呪いの装備を持って教会に祝福を求めたカイルにも非があると思ってる。それでいいですね?」
一方的にそう告げると、司祭様は慌てた表情を浮かべる。
「な、何を言っているのですかっ!? き、教会を建て直す費用の二分の一を私に持て? そんな事、できる筈がないでしょう! この教会は信徒による献金で運営されているのですよ?」
「しかし、司祭様はその教会の信徒による献金の一部を大人の社交場、キャバクラに貢いでいますよね。一体、いくらマミちゃんに貢いだんですか? 今度、ネックレスを買って上げるそうじゃないですか。その事を他の信徒が聞いたら……どう思うでしょうねぇ?」
すると途端に顔を蒼褪めさせる司祭様。
「な、何故、それを……」
「司祭様、寝言は寝てから言うものですが、言う場所は選んだ方がいいですよ? それに、司祭様の気持ちわかるなぁー。まだ随分とお若いようですし司祭として信徒や民衆から清廉潔白を求められるのはさぞ息苦しい事でしょう」
まあ、もちろん。思うだけだ。
同情はしない。そもそも同情心も持っていない。
「それに今回の件で、二千万コルの借金を負う事になった司祭様には同情の念が絶えません。しかし、司祭様の命には代えられません。まさか二回も呪い殺されそうになっているとは思いもしませんでした。辛いでしょう。悲しいでしょう。その気持ちはよくわかります」
「い、いや、ちょっと待って下さい! 二千万コルの借金? ど、どういう事ですか?」
司祭様にとって、寝耳に水。
さぞかし、驚いた事だろう。
しかし、そういう事である。
「司祭様はそこにいる彼の……カイル君に憑いている『ヤンデレ少女の呪い』を解呪しようとした結果、解呪に失敗し、ヤンデレ少女メリーさんに二度刺されてしまいました……」
そう告げると、司祭様は自分の腹部に視線を向ける。
そこには、破けた服とベットリと後の付いた血痕があった。
二度ほど刺されているので当然である。
「……実は、その傷を治すのに上級回復薬を二本使わせて頂きまして、一本当たり一千万コル。計二千万コルを司祭様に請求させて頂いております。こちらはその契約書です。一部始終をシスターが確認してますので、ご自身に何があったのか、聞いて頂ければわかると思います」
そう丁寧に、契約書の写しを渡すと、司祭様は茫然とした表情を浮かべる。
「ああ、教会はこんなになってしまいましたが、『ヤンデレ少女の呪い』鎮めておきましたから安心して下さい。これはアフターフォローです」
何のアフターフォローかは言わない。
カイルに呪いの装備を手渡した俺として、まあ、ちょっとほんの少し罪悪感を感じたからメリーさんを鎮める手を貸しただけだ。
まさか、呪いの装備がこんな弊害を生むとは正直思いもしなかった。
「とはいえ、不用意に手を出さなければ、あのような惨状を引き起こさなくて済んだ筈……」
そう。そもそも、こんな事になったのは、司祭様が勘違いをして頼んでもいない解呪を試みたのが始まりだ。呪いだろうと何だろうと素直に祝福して上げればこんな事にはならなかった。
まあ、今となっては、呪いの本元であるメリーさんと共に『祝福して下さい』とお願いに行ったカイルの脳に致命的な欠陥がある様な気がしてならないが、こうなってしまった以上、誰かが責任を取らなければ収まらない。
「と、いう事で、後の事はお願いします。教会を建て直す費用の算定が終わったら連絡を下さい。こちらとしては、教会建設中、臨時教会として俺が経営する宿の一室を貸し出す事も検討しています」
もちろん、思い付きではあるが、そんな思い付きも俺が経営している『微睡の宿』であれば、受け入れ可能だ。
何故なら俺は経営者なのだから。
もちろん、働いている従業員にそこまでの無理は言わないし、万が一、無理を強いる場合、それ相応の待遇を用意するつもりである。
「し、しかし、教会を建て直すとなれば、一体、幾らの金額となるか……それこそ、億単位の金がかかってもおかしくありません!」
半壊……とはいえ、ほぼ全壊に近い半壊。
一度更地にしてもう一度立て直すのだからそれ位はかかって当然。
まあ、そうなるよね?
「安心して下さい。その程度のお金であれば、全額こちらで用立てる事ができます。まあ今回は当座で一億コル貸し付けましょう」
ゲーム世界に貸金業法は存在しない。
それに教会の司祭様が借主であれば、踏み倒される事もない筈だ。
いざとなれば、『契約書』で契約してもいい。
笑顔いっぱいにそう言うと、司祭様はガックリうな垂れる。
二千万コルの借金に教会の建て直し。
やる事は沢山ある。キャバクラのマミちゃんにネックレスをプレゼントするほどの資金もない。
司祭様に残された道は、俺から教会の建て直し資金を借り教会の立て直しを図る事のみだ。
「さあ、どうしますか? 俺から金を借りますか? 教会の司祭様がお相手ですからね。利息はなしでも構いませんよ? まあ、毎月一定額を支払って頂ければ結構です。もちろん、司祭様のキャバクラ通いについても口外致しません」
もちろん、その契約は契約書で正式に結ぶ予定なので確実に取り立てる。
当然、今回の元凶であるカイル君からも、だ。
まあ、俺の目的は別にあるし?
それまで、ちゃんと働いてくれたら返して上げるよ。特別にな……まあ言わないけど。
再度、ニコリと微笑んでやると、司祭様は頬を震わせる。
「あ、ありがとうございます」
「そうですか。それは良かった。それでは、再度、契約を結びましょう」
アイテムストレージから『契約書』を二枚取り出すと、司祭様とカイルの前に置く。
「えっ? 俺も書くの?」
契約書を渡すと、カイルがそんな馬鹿な事を言った。
当たり前の事だ。
そもそも、カイルの馬鹿が教会に出向いて、メリーさんと結婚するから祝福してくれと言わなければこんな事にはならなかった。
カイルに呪いの装備を与えた俺にも多少の……いや、ほんの少しだけ責任があるかなって思ったからからこそ、潤沢な余剰資金のある俺が、それを貸し出すという形でケリを付けてやろうとしているのだ。
「当然だろ……」
呆れ気味にそう呟くと、カイルは汗を流しながら契約書に名前を書き込んでいく。
カイルの負債は五千万コル。いい勉強になっただろ。これに懲りて、これからはメリーさんをちゃんと制御して欲しいものだ。
それに、ヤンデレ少女メリーさんの力でちゃっかりSランク冒険者に返り咲いているみたいだしな。
首元に光るSランクの証がその証明だ。
まあSランクに返り咲いていれば、五千万コル位、簡単に稼げるだろう。
その一方で、絶望した表情を浮かべる司祭様。
「じ、実質、一億コル近くの借金……わ、私は一体、どうしたらよいのだ……」
突然背負う事になった七千万コル近くの借金に唖然とした表情を浮かべていた。
「こ、これにサインしたら確実に取り立てられる……しかし、サインしなければ私は破滅だ……ぐ、ぐうっ……」
震えながら契約書にサインするかどうかを逡巡する司祭様を見ているとなんだか不憫に思えてきた。
思えば、司祭様は悪意を持って『ヤンデレ少女の呪い』を解呪しようとしていた訳ではない。単に『ヤンデレ少女の呪い』が強すぎて解呪する事ができず、シャレにならない反撃を喰らっただけだ。
震える手で契約書を持つ司祭様の下によると、俺は新たな選択肢を提示する。
「もし、司祭様に覚悟があるのであれば、借金を簡単に返す事のできる方法を教えましょうか?」
「!? そ、そんな方法があるのですか?」
俺の言葉に驚く司祭様。
答えはYES。借金を簡単に返済する方法はある。
「ええ、もちろんあります。ただし、司祭様には相応のリスクを負って貰う事になるのですが、それでもやりますか?」
「そ、相応のリスク……ですか?」
おお、ちゃんとリスクについて確認するなんて、流石は司祭様だ。
『ああああ』やカイルだったら即、やると言っていた事だろう。
「はい。何、簡単な事です。冒険者となり稼げばいいんですよ」
「ぼ、冒険者!? 司祭である私に冒険者となれとそう言うのですか!?」
「はい。その通りです」
俺の部下が攻略した上級ダンジョン『デザートクレードル』。
そのお蔭で、今、冒険者協会は空前絶後の上級ダンジョン攻略に湧いている。
一方で、この国の冒険者ではどうしても入る事のできない上級ダンジョンが一つ存在している。
それは、ミズガルズ聖国にある上級ダンジョン『アイスアビス』。
冒険者協会は国に囚われない独立機関。しかし、唯一、ミズガルズ聖国に、冒険者協会は存在しない。
そして、ミズガルズ聖国の上級ダンジョン『アイスアビス』が攻略されなければ、新しい世界『スヴァルトアールヴヘイム』に向かう為の道は開かれない。
冒険者協会もミズガルズ聖国に働きかけているそうだが、これではいつミズガルズ聖国の上級ダンジョン『アイスアビス』が攻略されるかわからない。
現状、上級ダンジョン『アイスアビス』を攻略する資格を持つのは、ミズガルズ聖国の国民又は聖職者。そして、『ムーブ・ユグドラシル』でミズガルズ聖国に直接行く事のできる冒険者のみだ。
『ムーブ・ユグドラシル』は転移門『ユグドラシル』を通じ、国家間を自由に移動する事のできる唯一無二のアイテム。しかし、その希少さ故、所持している者はあまりに少ない。だからこそ――
「司祭様には冒険者協会で冒険者登録をして頂き、ミズガルズ聖国の上級ダンジョン『アイスアビス』を攻略して頂きたい」
俺がそう言うと、司祭様は素っ頓狂な声を上げる。
「な、何を言っているのですか!? 私が上級ダンジョン『アイスアビス』を攻略!? そんな事、できる筈がないじゃありませんかっ!」
できるできないは関係ない。そういう方法もありますよという提案だ。
上級ダンジョンを攻略すれば、冒険者協会からお金が出る。
それに上級ダンジョンを攻略できるほどの力があれば、七千万コル位、簡単に稼ぐ事ができる。
「普通、そう思いますよね? でも俺にはそれを実現するだけの力があります。どうです? 一度、騙されたと思ってやって見ませんか? 七千万コルの借金を返済するチャンスかもしれませんよ?」
そう言うと、司祭様は渋々、頷いた。
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2022年7月12日AM7時更新となります。
「ああ、俺はカケル。そんでもって、そこにいる奴は、可哀相な被害者のカイル君だ。さて、時間も惜しいし手短に話を進めよう。司祭様、あなたにはこの半壊した教会を建て直す費用の二分の一を持って頂きたい。あなたがカイルの呪いを解こうと思わなければ、教会が半壊するような事はなかったんだ。とはいえ、呪いの装備を持って教会に祝福を求めたカイルにも非があると思ってる。それでいいですね?」
一方的にそう告げると、司祭様は慌てた表情を浮かべる。
「な、何を言っているのですかっ!? き、教会を建て直す費用の二分の一を私に持て? そんな事、できる筈がないでしょう! この教会は信徒による献金で運営されているのですよ?」
「しかし、司祭様はその教会の信徒による献金の一部を大人の社交場、キャバクラに貢いでいますよね。一体、いくらマミちゃんに貢いだんですか? 今度、ネックレスを買って上げるそうじゃないですか。その事を他の信徒が聞いたら……どう思うでしょうねぇ?」
すると途端に顔を蒼褪めさせる司祭様。
「な、何故、それを……」
「司祭様、寝言は寝てから言うものですが、言う場所は選んだ方がいいですよ? それに、司祭様の気持ちわかるなぁー。まだ随分とお若いようですし司祭として信徒や民衆から清廉潔白を求められるのはさぞ息苦しい事でしょう」
まあ、もちろん。思うだけだ。
同情はしない。そもそも同情心も持っていない。
「それに今回の件で、二千万コルの借金を負う事になった司祭様には同情の念が絶えません。しかし、司祭様の命には代えられません。まさか二回も呪い殺されそうになっているとは思いもしませんでした。辛いでしょう。悲しいでしょう。その気持ちはよくわかります」
「い、いや、ちょっと待って下さい! 二千万コルの借金? ど、どういう事ですか?」
司祭様にとって、寝耳に水。
さぞかし、驚いた事だろう。
しかし、そういう事である。
「司祭様はそこにいる彼の……カイル君に憑いている『ヤンデレ少女の呪い』を解呪しようとした結果、解呪に失敗し、ヤンデレ少女メリーさんに二度刺されてしまいました……」
そう告げると、司祭様は自分の腹部に視線を向ける。
そこには、破けた服とベットリと後の付いた血痕があった。
二度ほど刺されているので当然である。
「……実は、その傷を治すのに上級回復薬を二本使わせて頂きまして、一本当たり一千万コル。計二千万コルを司祭様に請求させて頂いております。こちらはその契約書です。一部始終をシスターが確認してますので、ご自身に何があったのか、聞いて頂ければわかると思います」
そう丁寧に、契約書の写しを渡すと、司祭様は茫然とした表情を浮かべる。
「ああ、教会はこんなになってしまいましたが、『ヤンデレ少女の呪い』鎮めておきましたから安心して下さい。これはアフターフォローです」
何のアフターフォローかは言わない。
カイルに呪いの装備を手渡した俺として、まあ、ちょっとほんの少し罪悪感を感じたからメリーさんを鎮める手を貸しただけだ。
まさか、呪いの装備がこんな弊害を生むとは正直思いもしなかった。
「とはいえ、不用意に手を出さなければ、あのような惨状を引き起こさなくて済んだ筈……」
そう。そもそも、こんな事になったのは、司祭様が勘違いをして頼んでもいない解呪を試みたのが始まりだ。呪いだろうと何だろうと素直に祝福して上げればこんな事にはならなかった。
まあ、今となっては、呪いの本元であるメリーさんと共に『祝福して下さい』とお願いに行ったカイルの脳に致命的な欠陥がある様な気がしてならないが、こうなってしまった以上、誰かが責任を取らなければ収まらない。
「と、いう事で、後の事はお願いします。教会を建て直す費用の算定が終わったら連絡を下さい。こちらとしては、教会建設中、臨時教会として俺が経営する宿の一室を貸し出す事も検討しています」
もちろん、思い付きではあるが、そんな思い付きも俺が経営している『微睡の宿』であれば、受け入れ可能だ。
何故なら俺は経営者なのだから。
もちろん、働いている従業員にそこまでの無理は言わないし、万が一、無理を強いる場合、それ相応の待遇を用意するつもりである。
「し、しかし、教会を建て直すとなれば、一体、幾らの金額となるか……それこそ、億単位の金がかかってもおかしくありません!」
半壊……とはいえ、ほぼ全壊に近い半壊。
一度更地にしてもう一度立て直すのだからそれ位はかかって当然。
まあ、そうなるよね?
「安心して下さい。その程度のお金であれば、全額こちらで用立てる事ができます。まあ今回は当座で一億コル貸し付けましょう」
ゲーム世界に貸金業法は存在しない。
それに教会の司祭様が借主であれば、踏み倒される事もない筈だ。
いざとなれば、『契約書』で契約してもいい。
笑顔いっぱいにそう言うと、司祭様はガックリうな垂れる。
二千万コルの借金に教会の建て直し。
やる事は沢山ある。キャバクラのマミちゃんにネックレスをプレゼントするほどの資金もない。
司祭様に残された道は、俺から教会の建て直し資金を借り教会の立て直しを図る事のみだ。
「さあ、どうしますか? 俺から金を借りますか? 教会の司祭様がお相手ですからね。利息はなしでも構いませんよ? まあ、毎月一定額を支払って頂ければ結構です。もちろん、司祭様のキャバクラ通いについても口外致しません」
もちろん、その契約は契約書で正式に結ぶ予定なので確実に取り立てる。
当然、今回の元凶であるカイル君からも、だ。
まあ、俺の目的は別にあるし?
それまで、ちゃんと働いてくれたら返して上げるよ。特別にな……まあ言わないけど。
再度、ニコリと微笑んでやると、司祭様は頬を震わせる。
「あ、ありがとうございます」
「そうですか。それは良かった。それでは、再度、契約を結びましょう」
アイテムストレージから『契約書』を二枚取り出すと、司祭様とカイルの前に置く。
「えっ? 俺も書くの?」
契約書を渡すと、カイルがそんな馬鹿な事を言った。
当たり前の事だ。
そもそも、カイルの馬鹿が教会に出向いて、メリーさんと結婚するから祝福してくれと言わなければこんな事にはならなかった。
カイルに呪いの装備を与えた俺にも多少の……いや、ほんの少しだけ責任があるかなって思ったからからこそ、潤沢な余剰資金のある俺が、それを貸し出すという形でケリを付けてやろうとしているのだ。
「当然だろ……」
呆れ気味にそう呟くと、カイルは汗を流しながら契約書に名前を書き込んでいく。
カイルの負債は五千万コル。いい勉強になっただろ。これに懲りて、これからはメリーさんをちゃんと制御して欲しいものだ。
それに、ヤンデレ少女メリーさんの力でちゃっかりSランク冒険者に返り咲いているみたいだしな。
首元に光るSランクの証がその証明だ。
まあSランクに返り咲いていれば、五千万コル位、簡単に稼げるだろう。
その一方で、絶望した表情を浮かべる司祭様。
「じ、実質、一億コル近くの借金……わ、私は一体、どうしたらよいのだ……」
突然背負う事になった七千万コル近くの借金に唖然とした表情を浮かべていた。
「こ、これにサインしたら確実に取り立てられる……しかし、サインしなければ私は破滅だ……ぐ、ぐうっ……」
震えながら契約書にサインするかどうかを逡巡する司祭様を見ているとなんだか不憫に思えてきた。
思えば、司祭様は悪意を持って『ヤンデレ少女の呪い』を解呪しようとしていた訳ではない。単に『ヤンデレ少女の呪い』が強すぎて解呪する事ができず、シャレにならない反撃を喰らっただけだ。
震える手で契約書を持つ司祭様の下によると、俺は新たな選択肢を提示する。
「もし、司祭様に覚悟があるのであれば、借金を簡単に返す事のできる方法を教えましょうか?」
「!? そ、そんな方法があるのですか?」
俺の言葉に驚く司祭様。
答えはYES。借金を簡単に返済する方法はある。
「ええ、もちろんあります。ただし、司祭様には相応のリスクを負って貰う事になるのですが、それでもやりますか?」
「そ、相応のリスク……ですか?」
おお、ちゃんとリスクについて確認するなんて、流石は司祭様だ。
『ああああ』やカイルだったら即、やると言っていた事だろう。
「はい。何、簡単な事です。冒険者となり稼げばいいんですよ」
「ぼ、冒険者!? 司祭である私に冒険者となれとそう言うのですか!?」
「はい。その通りです」
俺の部下が攻略した上級ダンジョン『デザートクレードル』。
そのお蔭で、今、冒険者協会は空前絶後の上級ダンジョン攻略に湧いている。
一方で、この国の冒険者ではどうしても入る事のできない上級ダンジョンが一つ存在している。
それは、ミズガルズ聖国にある上級ダンジョン『アイスアビス』。
冒険者協会は国に囚われない独立機関。しかし、唯一、ミズガルズ聖国に、冒険者協会は存在しない。
そして、ミズガルズ聖国の上級ダンジョン『アイスアビス』が攻略されなければ、新しい世界『スヴァルトアールヴヘイム』に向かう為の道は開かれない。
冒険者協会もミズガルズ聖国に働きかけているそうだが、これではいつミズガルズ聖国の上級ダンジョン『アイスアビス』が攻略されるかわからない。
現状、上級ダンジョン『アイスアビス』を攻略する資格を持つのは、ミズガルズ聖国の国民又は聖職者。そして、『ムーブ・ユグドラシル』でミズガルズ聖国に直接行く事のできる冒険者のみだ。
『ムーブ・ユグドラシル』は転移門『ユグドラシル』を通じ、国家間を自由に移動する事のできる唯一無二のアイテム。しかし、その希少さ故、所持している者はあまりに少ない。だからこそ――
「司祭様には冒険者協会で冒険者登録をして頂き、ミズガルズ聖国の上級ダンジョン『アイスアビス』を攻略して頂きたい」
俺がそう言うと、司祭様は素っ頓狂な声を上げる。
「な、何を言っているのですか!? 私が上級ダンジョン『アイスアビス』を攻略!? そんな事、できる筈がないじゃありませんかっ!」
できるできないは関係ない。そういう方法もありますよという提案だ。
上級ダンジョンを攻略すれば、冒険者協会からお金が出る。
それに上級ダンジョンを攻略できるほどの力があれば、七千万コル位、簡単に稼ぐ事ができる。
「普通、そう思いますよね? でも俺にはそれを実現するだけの力があります。どうです? 一度、騙されたと思ってやって見ませんか? 七千万コルの借金を返済するチャンスかもしれませんよ?」
そう言うと、司祭様は渋々、頷いた。
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2022年7月12日AM7時更新となります。
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