114 / 411
第114話 教会事変-ヤンデレ少女メリー再び②
しおりを挟む
コスチュームとは、まだこの世界がゲームだった頃、ユグドラシル・ショップで販売されていたキャラクターの見た目を替える事ができる装備アイテム・衣装の事である。
俺はこの手のコスチュームを多く抱えていた。
決して趣味ではない。何故かはわからないが大量に倉庫に収められていた為だ。
『司祭』コスチュームを取り出すと、カイルが『ムームー』と呻く。
何故、縛られ何を呻いているのかわからないが、多分、『縄を解いてくれ』的な事を呻いているのだろう。しかし、今は後回しだ。
今も絶え間なく屋外・教会内に吹き荒れるナイフの嵐。教会内は廃屋のようにボロボロだ。
しかし、俺にはやらなければならない事がある。
モブ・フェンリルスーツの上から『司祭』コスチュームを装備すると、台車に乗せていた司祭様を降ろし、代わりに縛られたカイルを乗せて祭壇まで運んでいく。
そして、カイルの縄を解くと、祭壇の前に立たせた。
すると、司祭様を滅多刺しにしていた『ヤンデレ少女』メリーさんがカイルの横に立つ。
「よし。それじゃあ、始めよう」
「カケル……お前、何を……」
何を?
そんな事は決まっている。
「茶番劇をだよ……」
しかし、その茶番劇はメリーさんの怒りを鎮める為にも必要な茶番劇だ。
カイルの言葉を無視し、カイルの隣にメリーさんが立った事を確認すると、俺は軽く目を閉じ、祭壇に置いてあった本をカンペ代わりに朗読する。
「……汝カイルは、この女メリーを妻とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い、妻を想い、妻のみに添う事を神聖なる大樹ユグドラシルのもとに誓いますか?」
俺は『司祭』コスチュームを身に纏い、カイルに視線を向ける。すると、カイルはメリーさんに視線を向け「はい」と言って頷いた。
そして、次に俺はメリーさんに視線を向ける。
「汝メリーは、この男カイルを夫とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い、夫を想い、夫のみに添うことを神聖なる大樹ユグドラシルのもとに、誓いますか?」
そう言って視線を向けると、メリーさんは顔を赤らめながら『はい……』と言って頷いた。
今更ながら、カイルとメリーさんとの結婚を神聖なる大樹に誓っていいものなのだろうか?
メリーさんはヤンデレ『少女』。少女と結婚するカイルを祝福していいものか迷うが仕方がない。これでメリーさんの気持ちが治まるのであれば、それでいいのだ。怒りが収まらず、誰彼構わず惨殺されたらたまらない。
そんな気持ちで最後の文章を読み上げる。
「お二人の上に神の祝福を願い、結婚の絆によって結ばれたこのお二人を神聖なる大樹ユグドラシルが慈しみ深く守り、助けてくださるよう祈りましょう。万物を支える神聖なる大樹ユグドラシルは夫婦の愛を祝福してくださいました。今日結婚の誓いをかわした二人の上に、満ちあふれる祝福を注いでください。二人が愛に生き、健全な家庭を造りますように……。喜びにつけ悲しみにつけ信頼と感謝を忘れず、あなたに支えられて仕事に励み、困難にあっては慰めを見いだすことができますように……。また多くの友に恵まれ、結婚がもたらす恵みによって成長し、実り豊かな生活を送ることができますように……」
そう告げた瞬間、教会内を覆っていた重苦しい空気が軽くなる。宙を浮いていたナイフもバラバラと地に落ちた。
どうやらメリーさんの気が治まった様だ。
現に目の前では、祝福を受けた二人?がイチャイチャしている。
霊的、呪的何かとのイチャイチャ。
すげーなそれ、どうやってやるの?
「さて、カイル君? メリーさんの気が治まった様だし、これからの話をしようか」
「えっ? これからの話?」
「ああ、これからの話だ」
メリーさんとカイルが醸し出す甘い空気に水を差す様にそう告げると、周囲を見渡す。
そこには――
天井や壁、床に突き刺さったナイフの数々。
穴の開いた天井。
壊れた椅子にステンドグラス。
――『ヤンデレ少女』メリーさんの呪いの痕跡がはっきりと残っていた。
「あっ……」
俺の言いたい事が伝わったようで何より。
冷や汗を流すカイルに、満面の笑顔を浮かべるメリーさん。
そんな対称的な両名を見て俺は笑みを浮かべる。
「さて、この惨状はカイル。お前の婚約者であるメリーさんが引き起こした事だ。それでどうする?」
「えっ?」
「お前も結婚したんだ。一人の夫として、配偶者のやってしまった事に対し責任は負わないとな」
教会の司祭様に祝福してもらおうと教会に来た結果、強制的にカイルと引き剥がされそうになり、それを拒んだ結果、神聖な教会が荒廃した廃墟の様になってしまった。そのすべての責任がカイルにあるとは思っていない。
不幸な行き違いがあったとはいえ、勝手に呪いを解こうとした教会の司祭にも問題がある。何といっても、勝手に呪いを解こうとして、解呪に失敗した結果がこれだ。
まあ、そもそもカイルの奴が『メリーちゃんと結婚します。司祭様、祝福して下さい』なんて事を教会にお願いしなければこんな事にならなかった訳だけれど……。
「お、俺はどうすれば……」
俺の言った言葉に言い淀むカイル。
当然だ。被害がデカ過ぎてどうしたらいいかなんて俺にもわからない。
しかし、最低限、教会を建て直す為の費用や、教会が建つまでの生活費の工面は必要となるだろう。
「……カイル。俺なら何とかしてやれない事もないぞ? そうだな……。俺が必要とする時、メリーさんの力を貸してくれるというなら、この苦難。何とかして見せよう。どうする?」
嫌な言い方だが、俺には使い切れない程多くのコル(金)がある。
何故か?
それは、このゲーム世界での生活を主軸にしていないからだ。
元から結構なコルを持っていたし、マイルームの倉庫にあり得ない位のコルが収められていた。ついでに言えば、俺はこの世界で『微睡の宿』という宿を経営し、冒険者協会には、大量の回復薬を売り渡している。
つまり、コルは増える一方。
そのゲーム内通貨、コルの力を使いカイルの奴を助けて上げてもいい。
もちろん、最終的にコルは全額返してもらう予定だが、利息を付ける気はないし、毎月定額支払ってくれれば、まったく問題ない。
そう告げると、カイルは顔を真っ青にして呟いた。
「い、一体、いくら位必要なんだ……」
「そうだな……」
この教会の規模を見るに一億コルといった所だろうか?
その半分は司祭様に請求するとして五千万コルは下らないだろうな……。
まあ、教会修繕にいくら係るのかについては、そこに寝ている司祭様に直接聞いて見る事にしよう……っと、その前に。
俺は、『司祭』コスチュームを外すとアイテムストレージに収納すると、エレメンタルに護られ、一人、床で『スースー』寝ている司祭様に近付いていく。
「ほら、司祭様。起きて下さいよ。すべて終わりましたよー」
そう言って、司祭様の頬を軽くペチペチ叩き起こそうとすると、司祭様は――
「むっー。ぬふふふ……マミちゃーん……ネックレスが欲しい? そんなのすぐに買ってあげるから大丈夫……すやー」
――と訳の分からない寝言を呟き、また寝てしまう。
「……おい。聞いたか? 今の……」
司祭様を起こすのを中断すると、無表情のままカイルに話しかける。
「あ、ああっ……」
そう呟くも、カイルはカイルでなんだか言い難そうだ。
そう言えば、以前、カイルが入れ揚げていたキャバ嬢の名前もマミちゃんだった様な……。
「生臭坊主ならぬ生臭司祭様だった訳だ……」
いいネタが手に入った。
確か、司祭は一生独身だった筈。結婚して子供ができた後、妻と死別し司祭となるケースもあるだろうが、この司祭はどう考えても違う。
こいつ……献金してもらったコルをそのままキャバ嬢のマミちゃんに貢いでやがる……。
司祭様の顔をよく見れば、顔の造形も無駄に良く。モテるのをいい事に町の女を次々とモノにする生臭神父ユルバン・グランディエを彷彿とさせる美青年だ。
よし。とりあえず、あれだ。
カイルの件は、何とかなりそうだな。
「とりあえず、カイル……。メリーさんに言って壁や天井、床に突き刺さったままのナイフを消してくれ。流石にこんな現状では、お前の事を庇いきれないからな」
「あ、ああ、わかった。メリー。お願いできるか?」
カイルがそうお願いすると、メリーは両手を上げる。
すると、突き刺さったままとなっていたナイフがガタガタ震えて宙に浮きメリーさんの頭上に集まってきた。
そして、集まったナイフはメリーさんの頭上で黒い粒となり空気に溶け込むように消えていく。
「……あ、ありがとう。カイル君。メリーさん」
うん。やっぱり怖いな。メリーさんは……。
呪いがあまりに強力過ぎる。
それこそ、メリーさんがいればダンジョンなんて簡単に攻略できるのではないかと錯覚してしまう位の強さだ。
どうやってこんな強力な呪いを手懐けたんだ。意味がわからん。
まあとりあえず、カイルの奴には恩を売っておくか。
金を貸す位でいいなら安いものだ。
メリーさん強力だし、メリーさんが上級ダンジョン攻略を手伝ってくれるなら百人力だ。
「さてと、改めて、この生臭司祭を起こしますか……おーい。司教様ぁー起きて下さいよー。これ以上、寝言を言っちゃうと拙いんじゃないですかー?」
再度、胸倉を掴みガクガク揺らしながら起こすと、生臭司祭が目を覚ました。
「う、うーん……私は一体何を……確か強力な呪いを解いていた最中、誰かに刺された様な……」
凄いな。自分が倒れる前の事を正確に理解している様だ。
生臭司祭から手を離すと、生臭司祭は荒れ果てた教会内部を眺め茫然とした表情を浮かべる。
「こ、これは一体……私が眠っている間に何があったんだっ……」
「いやー、実はその件で話したい事がありまして……」
そう言って、俺は生臭司祭の肩に手を回すと、一枚の契約書を見せる。
「起きて早々、申し訳ないのですが、ちょっと、半壊しちゃった教会の件でお話し合いをしましょうか……」
すると、生臭司祭は唖然とした視線を俺に向けてきた。
---------------------------------------------------------------
2022年7月10日AM7時更新となります。
俺はこの手のコスチュームを多く抱えていた。
決して趣味ではない。何故かはわからないが大量に倉庫に収められていた為だ。
『司祭』コスチュームを取り出すと、カイルが『ムームー』と呻く。
何故、縛られ何を呻いているのかわからないが、多分、『縄を解いてくれ』的な事を呻いているのだろう。しかし、今は後回しだ。
今も絶え間なく屋外・教会内に吹き荒れるナイフの嵐。教会内は廃屋のようにボロボロだ。
しかし、俺にはやらなければならない事がある。
モブ・フェンリルスーツの上から『司祭』コスチュームを装備すると、台車に乗せていた司祭様を降ろし、代わりに縛られたカイルを乗せて祭壇まで運んでいく。
そして、カイルの縄を解くと、祭壇の前に立たせた。
すると、司祭様を滅多刺しにしていた『ヤンデレ少女』メリーさんがカイルの横に立つ。
「よし。それじゃあ、始めよう」
「カケル……お前、何を……」
何を?
そんな事は決まっている。
「茶番劇をだよ……」
しかし、その茶番劇はメリーさんの怒りを鎮める為にも必要な茶番劇だ。
カイルの言葉を無視し、カイルの隣にメリーさんが立った事を確認すると、俺は軽く目を閉じ、祭壇に置いてあった本をカンペ代わりに朗読する。
「……汝カイルは、この女メリーを妻とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い、妻を想い、妻のみに添う事を神聖なる大樹ユグドラシルのもとに誓いますか?」
俺は『司祭』コスチュームを身に纏い、カイルに視線を向ける。すると、カイルはメリーさんに視線を向け「はい」と言って頷いた。
そして、次に俺はメリーさんに視線を向ける。
「汝メリーは、この男カイルを夫とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い、夫を想い、夫のみに添うことを神聖なる大樹ユグドラシルのもとに、誓いますか?」
そう言って視線を向けると、メリーさんは顔を赤らめながら『はい……』と言って頷いた。
今更ながら、カイルとメリーさんとの結婚を神聖なる大樹に誓っていいものなのだろうか?
メリーさんはヤンデレ『少女』。少女と結婚するカイルを祝福していいものか迷うが仕方がない。これでメリーさんの気持ちが治まるのであれば、それでいいのだ。怒りが収まらず、誰彼構わず惨殺されたらたまらない。
そんな気持ちで最後の文章を読み上げる。
「お二人の上に神の祝福を願い、結婚の絆によって結ばれたこのお二人を神聖なる大樹ユグドラシルが慈しみ深く守り、助けてくださるよう祈りましょう。万物を支える神聖なる大樹ユグドラシルは夫婦の愛を祝福してくださいました。今日結婚の誓いをかわした二人の上に、満ちあふれる祝福を注いでください。二人が愛に生き、健全な家庭を造りますように……。喜びにつけ悲しみにつけ信頼と感謝を忘れず、あなたに支えられて仕事に励み、困難にあっては慰めを見いだすことができますように……。また多くの友に恵まれ、結婚がもたらす恵みによって成長し、実り豊かな生活を送ることができますように……」
そう告げた瞬間、教会内を覆っていた重苦しい空気が軽くなる。宙を浮いていたナイフもバラバラと地に落ちた。
どうやらメリーさんの気が治まった様だ。
現に目の前では、祝福を受けた二人?がイチャイチャしている。
霊的、呪的何かとのイチャイチャ。
すげーなそれ、どうやってやるの?
「さて、カイル君? メリーさんの気が治まった様だし、これからの話をしようか」
「えっ? これからの話?」
「ああ、これからの話だ」
メリーさんとカイルが醸し出す甘い空気に水を差す様にそう告げると、周囲を見渡す。
そこには――
天井や壁、床に突き刺さったナイフの数々。
穴の開いた天井。
壊れた椅子にステンドグラス。
――『ヤンデレ少女』メリーさんの呪いの痕跡がはっきりと残っていた。
「あっ……」
俺の言いたい事が伝わったようで何より。
冷や汗を流すカイルに、満面の笑顔を浮かべるメリーさん。
そんな対称的な両名を見て俺は笑みを浮かべる。
「さて、この惨状はカイル。お前の婚約者であるメリーさんが引き起こした事だ。それでどうする?」
「えっ?」
「お前も結婚したんだ。一人の夫として、配偶者のやってしまった事に対し責任は負わないとな」
教会の司祭様に祝福してもらおうと教会に来た結果、強制的にカイルと引き剥がされそうになり、それを拒んだ結果、神聖な教会が荒廃した廃墟の様になってしまった。そのすべての責任がカイルにあるとは思っていない。
不幸な行き違いがあったとはいえ、勝手に呪いを解こうとした教会の司祭にも問題がある。何といっても、勝手に呪いを解こうとして、解呪に失敗した結果がこれだ。
まあ、そもそもカイルの奴が『メリーちゃんと結婚します。司祭様、祝福して下さい』なんて事を教会にお願いしなければこんな事にならなかった訳だけれど……。
「お、俺はどうすれば……」
俺の言った言葉に言い淀むカイル。
当然だ。被害がデカ過ぎてどうしたらいいかなんて俺にもわからない。
しかし、最低限、教会を建て直す為の費用や、教会が建つまでの生活費の工面は必要となるだろう。
「……カイル。俺なら何とかしてやれない事もないぞ? そうだな……。俺が必要とする時、メリーさんの力を貸してくれるというなら、この苦難。何とかして見せよう。どうする?」
嫌な言い方だが、俺には使い切れない程多くのコル(金)がある。
何故か?
それは、このゲーム世界での生活を主軸にしていないからだ。
元から結構なコルを持っていたし、マイルームの倉庫にあり得ない位のコルが収められていた。ついでに言えば、俺はこの世界で『微睡の宿』という宿を経営し、冒険者協会には、大量の回復薬を売り渡している。
つまり、コルは増える一方。
そのゲーム内通貨、コルの力を使いカイルの奴を助けて上げてもいい。
もちろん、最終的にコルは全額返してもらう予定だが、利息を付ける気はないし、毎月定額支払ってくれれば、まったく問題ない。
そう告げると、カイルは顔を真っ青にして呟いた。
「い、一体、いくら位必要なんだ……」
「そうだな……」
この教会の規模を見るに一億コルといった所だろうか?
その半分は司祭様に請求するとして五千万コルは下らないだろうな……。
まあ、教会修繕にいくら係るのかについては、そこに寝ている司祭様に直接聞いて見る事にしよう……っと、その前に。
俺は、『司祭』コスチュームを外すとアイテムストレージに収納すると、エレメンタルに護られ、一人、床で『スースー』寝ている司祭様に近付いていく。
「ほら、司祭様。起きて下さいよ。すべて終わりましたよー」
そう言って、司祭様の頬を軽くペチペチ叩き起こそうとすると、司祭様は――
「むっー。ぬふふふ……マミちゃーん……ネックレスが欲しい? そんなのすぐに買ってあげるから大丈夫……すやー」
――と訳の分からない寝言を呟き、また寝てしまう。
「……おい。聞いたか? 今の……」
司祭様を起こすのを中断すると、無表情のままカイルに話しかける。
「あ、ああっ……」
そう呟くも、カイルはカイルでなんだか言い難そうだ。
そう言えば、以前、カイルが入れ揚げていたキャバ嬢の名前もマミちゃんだった様な……。
「生臭坊主ならぬ生臭司祭様だった訳だ……」
いいネタが手に入った。
確か、司祭は一生独身だった筈。結婚して子供ができた後、妻と死別し司祭となるケースもあるだろうが、この司祭はどう考えても違う。
こいつ……献金してもらったコルをそのままキャバ嬢のマミちゃんに貢いでやがる……。
司祭様の顔をよく見れば、顔の造形も無駄に良く。モテるのをいい事に町の女を次々とモノにする生臭神父ユルバン・グランディエを彷彿とさせる美青年だ。
よし。とりあえず、あれだ。
カイルの件は、何とかなりそうだな。
「とりあえず、カイル……。メリーさんに言って壁や天井、床に突き刺さったままのナイフを消してくれ。流石にこんな現状では、お前の事を庇いきれないからな」
「あ、ああ、わかった。メリー。お願いできるか?」
カイルがそうお願いすると、メリーは両手を上げる。
すると、突き刺さったままとなっていたナイフがガタガタ震えて宙に浮きメリーさんの頭上に集まってきた。
そして、集まったナイフはメリーさんの頭上で黒い粒となり空気に溶け込むように消えていく。
「……あ、ありがとう。カイル君。メリーさん」
うん。やっぱり怖いな。メリーさんは……。
呪いがあまりに強力過ぎる。
それこそ、メリーさんがいればダンジョンなんて簡単に攻略できるのではないかと錯覚してしまう位の強さだ。
どうやってこんな強力な呪いを手懐けたんだ。意味がわからん。
まあとりあえず、カイルの奴には恩を売っておくか。
金を貸す位でいいなら安いものだ。
メリーさん強力だし、メリーさんが上級ダンジョン攻略を手伝ってくれるなら百人力だ。
「さてと、改めて、この生臭司祭を起こしますか……おーい。司教様ぁー起きて下さいよー。これ以上、寝言を言っちゃうと拙いんじゃないですかー?」
再度、胸倉を掴みガクガク揺らしながら起こすと、生臭司祭が目を覚ました。
「う、うーん……私は一体何を……確か強力な呪いを解いていた最中、誰かに刺された様な……」
凄いな。自分が倒れる前の事を正確に理解している様だ。
生臭司祭から手を離すと、生臭司祭は荒れ果てた教会内部を眺め茫然とした表情を浮かべる。
「こ、これは一体……私が眠っている間に何があったんだっ……」
「いやー、実はその件で話したい事がありまして……」
そう言って、俺は生臭司祭の肩に手を回すと、一枚の契約書を見せる。
「起きて早々、申し訳ないのですが、ちょっと、半壊しちゃった教会の件でお話し合いをしましょうか……」
すると、生臭司祭は唖然とした視線を俺に向けてきた。
---------------------------------------------------------------
2022年7月10日AM7時更新となります。
60
あなたにおすすめの小説
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】
のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。
そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。
幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、
“とっておき”のチートで人生を再起動。
剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。
そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。
これは、理想を形にするために動き出した少年の、
少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。
【なろう掲載】
俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!
くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作)
異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス
於田縫紀
ファンタジー
雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。
場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる