寂しいを分け与えた

こじらせた処女

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「よか、…た…」
 師匠と一緒に寝た日から1週間が経った。幸いなことにあれからは一回も失敗していない。でも、夜中に一度は目が覚める。それも、厠に急ぐ夢を見て。
 夜は何も飲んでいない。なのに、この水分はどこからやってくるのだろう。厠に走ればけたたましい小便が溢れ出す。それを見たら余計に、眠るのが怖くなる。
 師匠にはいつでも布団に来なさいと言われた。でも、また汚してしまったらどうしようと思ってしまって、あれからは一度も潜り込んでいない。
 朝から晩まで小便の心配ばかり。日中も眠くてどうしようもない時間が増えた。休憩中の小さな仮眠だって出来ない。少しずつ、少しずつ。疲れが溜まってずっとしんどい。


 昼食後、畑仕事の前の休憩時間。縁側に座っているとだんだん意識が遠のいて、ガクリと頭が落ちて我に帰るを繰り返す。眠い。頬をつねっても、周りをぐるぐると歩いていても、まるで夢の中かのようにぼーっとしてしまう。それに体がだるい。動きたくない。廊下の壁にもたれてまた、瞼が閉じる。いつ寝たかなんて分からなかった。自分にとってはほんの瞬きのつもりだったけれど、眠ってしまっていたらしい。気がついたら地面がしとしとと濡れていたから。あ、俺やっちゃったんだと悟った。

「あ、え、」
それも、だらしなく出し続けている最中で。慌ててぎゅうぎゅうと出口を押さえる。俺の体、バカじゃねーの?何で、あれだけ頑張って寝るの我慢したのに。努力も我慢も全部無駄。どこでも小便を撒き散らすだなんて、幼子じゃん。頭がクラクラして、でもどうすればいいかわかんなくてその場に座り尽くした。

「灯ー!休憩明けたぞー!!」
あ、そうだ。行かなきゃ。畑行かなきゃ。外から師匠の声がする。足音が近づいてくる。でも動けない。どうしようって頭が真っ白で、でももう嫌だって思って。手も服も床も全部、恨めしい。
「おい、灯!!って…」
あ、見られた。そりゃそうだけど。声でわかる。怒ってる。
「灯?こっち向けるか?」
あ、優しくなった。気遣うような声が、言葉が苦しい。いっそ怒鳴って欲しい。厠でしろって叩いて欲しい。
「具合でも悪いか?」
惨めだからやめて欲しい。自分の体が嫌いになりそう。
「着替えるか。来なさい」
脇の間に手を入れられて、立たされる。手を引かれて脱衣所に行く途中、さっき無理やり止めた残りが急にせり上がって、腕を振り払って厠に走った。
 でちゃう。漏らしちゃう。前を押さえながら、でも、遅かった。乾いた廊下に勝手におしっこが新しく注がれる。
「ぁ、ぁあ、」
師匠に見られている。何もどこも悪くないのに、何で。これ以上俺の体、バカにならないでくれ。
「灯、大丈夫だから、おいで、」
背を撫でられている。優しくされている。それが今は辛かった。
「…俺の体に、怒ってください、」
「…怒るわけないだろ」
「おれ!!頭わるいから!!厳しくされないと分かんない、から…」
 怒られたらもうしないって覚えてくれるかもしれない。お漏らしもおねしょも悪いことって怒ってくれたら。
「そんなことしたら余計に悪くなるだろ」
「も゛、やだ、なんで、」
頭の中がぐちゃぐちゃだ。何でこんなに泣きじゃくっているのかも、癇癪じみた事を言っているのかも分からない。出来ないこと、増えている。
「灯、」
師匠の胸に顔を当てられる。師匠は俺が泣くと必ずこうする。こうしたら静かになるって分かっているみたいに。
ギュッて抱きしめられたら安心するのも、離れられたら悲しくて泣きたくなるのも。上も下もびしょびしょのまま。まるで赤ん坊みたいだと頭の端っこの自分がバカにした。
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