寂しいを分け与えた

こじらせた処女

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 下半身をびしょびしょにしながらわぁわぁと泣きじゃくる姿は、今の年齢からは5つ6つの差異がある。目線を合わせ抱き止めてやると、ぐずぐずと鼻を鳴らす音だけで静かになる。しばらく背を撫でたのち、腕を引いて脱衣所へ連れていく。濡れた服を全て脱がしてやり、綺麗な布で清めてやる頃には涙もしゃくりも止まったようだ。
「…ごめんなさい、」
我に帰ったのだろうか。消え入るような声で目も合わないまま、謝罪の言葉が部屋に溶けた。
 過ぎた時間を取り戻そうと畑仕事をする灯は、どこか焦っていて、無理して強がっているようで痛々しい。
 こういう時父だったらどうするだろうか。何気ない日常会話を挟んで心を開かせるのだろうか。あれだけ多弁だった父から、どうしてこうも無口な男が産まれたのだろう。久しぶりに自分を強く嫌いになった。


 灯は他の子供と比べて精神年齢が高いように思う。まあ、乏しい人生経験であるため、比較対象の母数は少ないが。少なくとも私の幼少期よりは大人しいということは分かる。
 めんどくさい作業を嫌がることも、反発して口答えをすることもない。大人しく、黙々とこなす子供。うちで一緒に暮らすようになってからもその印象は変わらなかった。


 急に家に帰りたいと言ったかと思えば、飯が食べられなくなって、一緒に寝たかと思えば夜尿に怯えて。小さな小さな精神の揺らぎが日に日に大きくなっている気がする。いっそ退行したままだったらうまく甘えられただろうか。幼い灯と今の灯を行ったり来たりしているから。だから余計に戸惑って、どうすればいいのかが分からないのだろう。



「おやすみなさい」
いつものように挨拶を受ける。飯の間も、片付けも、風呂も。流れるように時間は過ぎて、気づけば就寝時間だった。
「灯、」
このまま1人で寝室に帰していいものかと咄嗟に声をかけた。
「はい、」
なんて言えばいいだろうか。乏しい語彙力を搾り出そうとするが、頭は霧がかかっている。
「…茶でも飲むか?」
「…いえ、」
あ、間違えた。下腹の辺りに手を当てる仕草。自分の愚かさに頭を抱えた。
「眠れなかったらいつでも来なさい」
「はい、ありがとうございます」
あ、この返事は絶対に来ないやつだ。軽く礼をした灯はあっけなく自分の部屋に戻ってしまった。









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