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「こんにちは」
「?はい」
ぴょこぴょこと学園内を歩き回っていたレイナードが返事をすると、そこに立っていたのは、同じ年頃に見える可愛らしい制服姿の女子生徒が3人。その内2人は少し緊張した面持ちで、互いに顔を見合わせている。
「ヴィルヘルム様の弟君ですよね?」
中心に立つ、栗色の髪の生徒が代表して尋ねてきた。
「はい、そうですけど……何か?」
(やっぱり、兄さんのせいで、僕目立ってる…?)
「まあ、やっぱり! ヴィルヘルム様からお話は色々聞いてますわ」
「あんなに素敵な人がお兄さまだなんて羨ましい…」
「は、はい…」
「それで、あの、弟君。雪で足止めされて、お退屈ではないかと……」
「もしよろしければ、私たちがこの学園をご案内いたしますわ!」
「え…!」
案内、という言葉に、レイナードの心は少し動いた。正直、見ず知らずの場所の探検も限界だった。この歴史ある学園の内部を見ておくのは、今後の活動の役に立つかもしれない。ヴィルヘルムに黙ってうろつくのは気が引けるが、兄のファンの彼女たちと一緒なら問題ないだろう。
(…いいよね、多分)
「いいんですか?」
目を輝かせてレイナードは微笑む。すると少女達はなぜかうめき声をあげた。
「ぐっ…かわいい…」
「これが、ヴィル様を骨抜きにした…」
「しっかりして!あなたたち!」
「?どうかされましたか?」
レイナードはきょとんとした顔で首を傾げる。するとまたうめき声がした。
「あ、あざとすぎる…負けませんわ…」
「??」
「とんでもない! 光栄ですわ!」
「ささ、こちらへどうぞ!」
女子生徒たちは気を取り直すと微笑んでレイナードを促した。一抹の不安はあったものの、退屈しのぎと下見のつもりで、レイナードは彼女たちについていくことにした。
***
「わぁ…」
まずはと図書室や講堂など、立派な施設を案内された。歴史を感じさせる重厚な建物に、レイナードは感心しきりだった。女子生徒たちも、ヴィルヘルムの弟であるレイナードに親切に説明してくれる。
「すごいですね、この学園……」
「ええ、伝統ある学び舎ですのよ」
「ヴィルヘルム様は優秀な成績を修められて……」
しかし、しばらく歩くうちに、案内される場所が徐々に校舎の端の方、人気のないエリアへと移っていった。廊下は薄暗くなり、使われていない教室が並んでいる。
「あの……こっちは?」
レイナードが不安になって尋ねると、先頭を歩いていた生徒が振り返った。
「ああ、こっちは古い校舎なんですの。今はあまり使われていなくて」
「でも、ちょっと面白いものがあるんですよ」
「私たちと一緒じゃないと入れないんですよ」
そう言って、彼女たちは一つの古びた木のドアの前で立ち止まった。分厚い、頑丈そうなドアだ。「旧倉庫」と掠れた文字が書かれた札がぶら下がっている。
「ここですわ」
「中に、昔の生徒が作った面白い仕掛けがあるとかないとか……」
「ちょっと見てみませんか?」
「ね、ね?どうかしら?」
怪しい、とは思った。けれど、ここまで来て引き返すのも角が立つ。それに、もし本当に何か面白いものがあるなら見てみたい気もした。
「……じゃあ、少しだけ」
レイナードがためらいがちに言うと、女子生徒の一人がぎい、と音を立てて重いドアを開けた。中は真っ暗で、カビ臭い匂いが漂ってきた。
「どうぞ、お先に」
促され、レイナードは恐る恐る一歩、倉庫の中に足を踏み入れた。床がきしむ音が響く。
「暗いですね……」
そう呟いて振り返ろうとした瞬間だった。
バタン!
背後で、勢いよくドアが閉められた。
「えっ!?」
驚いてドアノブに手をかけるが回らない。外からガチャリ、と鍵をかける音が響いた。
「ちょっと! 開けてください!」
レイナードは必死にドアを叩いた。
「何するんですか!」
ドアの向こうから、くすくすという笑い声が聞こえてきた。
「ふふ、ちょっとしたお仕置きですわよ」
「ヴィルヘルム様に馴れ馴れしくするから…」
「私たちだって、仲良くしたいのに…!」
(そんな…!)
悪意に気づき、レイナードは愕然とした。
(兄さんへの嫉妬から、こんな嫌がらせを…)
「あ、開けてください!」
「大丈夫よ、すぐに出してあげるから」
「ちょっとだけ、ね?」
だが、扉越しでくすくす笑っていた少女達は、突然慌てたようだった。
「やだ、先生だ…!」
「早く行かなきゃ!」
「ど、どうするの、あの子…」
「しーっ! 後で来ればいいわよ!」
そして、バタバタという慌ただしい足音が完全に聞こえなくなった。
静寂が戻る。レイナードは、真っ暗な倉庫の中に一人、取り残された。
「……うそ……」
ドアを叩いても、叫んでも、何の反応もない。冷たい空気が肌を刺し、恐怖と絶望感がじわじわと心を蝕んでいく。
(どうしよう……どうしようどうしよう…)
心細さと寒さで、全身が震え始めた。レイナードは、冷たい暗闇の中で、真っ青になっていた。
「?はい」
ぴょこぴょこと学園内を歩き回っていたレイナードが返事をすると、そこに立っていたのは、同じ年頃に見える可愛らしい制服姿の女子生徒が3人。その内2人は少し緊張した面持ちで、互いに顔を見合わせている。
「ヴィルヘルム様の弟君ですよね?」
中心に立つ、栗色の髪の生徒が代表して尋ねてきた。
「はい、そうですけど……何か?」
(やっぱり、兄さんのせいで、僕目立ってる…?)
「まあ、やっぱり! ヴィルヘルム様からお話は色々聞いてますわ」
「あんなに素敵な人がお兄さまだなんて羨ましい…」
「は、はい…」
「それで、あの、弟君。雪で足止めされて、お退屈ではないかと……」
「もしよろしければ、私たちがこの学園をご案内いたしますわ!」
「え…!」
案内、という言葉に、レイナードの心は少し動いた。正直、見ず知らずの場所の探検も限界だった。この歴史ある学園の内部を見ておくのは、今後の活動の役に立つかもしれない。ヴィルヘルムに黙ってうろつくのは気が引けるが、兄のファンの彼女たちと一緒なら問題ないだろう。
(…いいよね、多分)
「いいんですか?」
目を輝かせてレイナードは微笑む。すると少女達はなぜかうめき声をあげた。
「ぐっ…かわいい…」
「これが、ヴィル様を骨抜きにした…」
「しっかりして!あなたたち!」
「?どうかされましたか?」
レイナードはきょとんとした顔で首を傾げる。するとまたうめき声がした。
「あ、あざとすぎる…負けませんわ…」
「??」
「とんでもない! 光栄ですわ!」
「ささ、こちらへどうぞ!」
女子生徒たちは気を取り直すと微笑んでレイナードを促した。一抹の不安はあったものの、退屈しのぎと下見のつもりで、レイナードは彼女たちについていくことにした。
***
「わぁ…」
まずはと図書室や講堂など、立派な施設を案内された。歴史を感じさせる重厚な建物に、レイナードは感心しきりだった。女子生徒たちも、ヴィルヘルムの弟であるレイナードに親切に説明してくれる。
「すごいですね、この学園……」
「ええ、伝統ある学び舎ですのよ」
「ヴィルヘルム様は優秀な成績を修められて……」
しかし、しばらく歩くうちに、案内される場所が徐々に校舎の端の方、人気のないエリアへと移っていった。廊下は薄暗くなり、使われていない教室が並んでいる。
「あの……こっちは?」
レイナードが不安になって尋ねると、先頭を歩いていた生徒が振り返った。
「ああ、こっちは古い校舎なんですの。今はあまり使われていなくて」
「でも、ちょっと面白いものがあるんですよ」
「私たちと一緒じゃないと入れないんですよ」
そう言って、彼女たちは一つの古びた木のドアの前で立ち止まった。分厚い、頑丈そうなドアだ。「旧倉庫」と掠れた文字が書かれた札がぶら下がっている。
「ここですわ」
「中に、昔の生徒が作った面白い仕掛けがあるとかないとか……」
「ちょっと見てみませんか?」
「ね、ね?どうかしら?」
怪しい、とは思った。けれど、ここまで来て引き返すのも角が立つ。それに、もし本当に何か面白いものがあるなら見てみたい気もした。
「……じゃあ、少しだけ」
レイナードがためらいがちに言うと、女子生徒の一人がぎい、と音を立てて重いドアを開けた。中は真っ暗で、カビ臭い匂いが漂ってきた。
「どうぞ、お先に」
促され、レイナードは恐る恐る一歩、倉庫の中に足を踏み入れた。床がきしむ音が響く。
「暗いですね……」
そう呟いて振り返ろうとした瞬間だった。
バタン!
背後で、勢いよくドアが閉められた。
「えっ!?」
驚いてドアノブに手をかけるが回らない。外からガチャリ、と鍵をかける音が響いた。
「ちょっと! 開けてください!」
レイナードは必死にドアを叩いた。
「何するんですか!」
ドアの向こうから、くすくすという笑い声が聞こえてきた。
「ふふ、ちょっとしたお仕置きですわよ」
「ヴィルヘルム様に馴れ馴れしくするから…」
「私たちだって、仲良くしたいのに…!」
(そんな…!)
悪意に気づき、レイナードは愕然とした。
(兄さんへの嫉妬から、こんな嫌がらせを…)
「あ、開けてください!」
「大丈夫よ、すぐに出してあげるから」
「ちょっとだけ、ね?」
だが、扉越しでくすくす笑っていた少女達は、突然慌てたようだった。
「やだ、先生だ…!」
「早く行かなきゃ!」
「ど、どうするの、あの子…」
「しーっ! 後で来ればいいわよ!」
そして、バタバタという慌ただしい足音が完全に聞こえなくなった。
静寂が戻る。レイナードは、真っ暗な倉庫の中に一人、取り残された。
「……うそ……」
ドアを叩いても、叫んでも、何の反応もない。冷たい空気が肌を刺し、恐怖と絶望感がじわじわと心を蝕んでいく。
(どうしよう……どうしようどうしよう…)
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