傷物令嬢は騎士に夢をみるのを諦めました

みん

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婚約

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「シルフィー、俺の婚約者になれ。」

一体、王弟殿下この人は誰に何を言っているんだろうか?12の年の差がある──いや、それは貴族社会においては無い事もない。今は先生と生徒で、王族と傷物で──。私を婚約者にしても、どこからどう見ても、王弟殿下にとってのメリットが見当たらない。

ーあぁ、そうか。虫除け─お飾りの妻にと言う事かしら?ー

いや、それでも…デメリットの方が多いのではないだろうか?私じゃなくても、もっとこう─見目麗しいご令嬢が沢山居るし、王弟殿下なんて選り取りみどりじゃないだろうか?

あれ?そう言えば…何で他の人は何も言わない?あれ?驚いて…ない?あれ?

勿論、私の表情は変わっていないと思うけど、頭の中はパニックだ。

「──はぁ────。治療を受ける事になったと聞いた時から、まさかとは思ってましたけどね。」

父が長い溜め息を吐いた後、苦笑しながら言葉を続けた。

「なら、話が早いな。」

ニヤリと王弟殿下が笑う。

「シルフィー、お前はどうしたい?」

父が困った様に訊いて来るけど…相手は王弟殿下だ。断ると言う選択肢は無いよね?どんな理由で婚約者として望まれたのかは分からないけど。

「──断る理由は…ありませんね。」

としか言えないよね?
そう言うと、何故か国王陛下と王太子殿下と宰相は物凄く喜んだ。

ー何故だ!?ー

何だか…本当に何がなんだか全く分からないままに、その場で私と王弟殿下の婚約が調ってしまった。

ーえ?早くないですか?ー

それでも、焦って?いるのは私だけで、他の皆はいつも通りな感じで淡々と話を進めている。

ーあれ?これが…普通なんだろうか?ー

「よし。この婚約の見届け人は国王だからな。誰にも文句は言わせまい。良かったな、アシュレイ。」

「──ありがとうございます……兄上。」

ニヤニヤとしている国王陛下に、渋々と言った顔でお礼を言う王弟殿下。

「ただし、一つだけお願いがあります。シルフィーが学園を卒業する迄は、この婚約は…内密にしていただきたい。」

「内密に?どうしてだ?」

「学園内で流れているシルフィーの噂をご存知でしょう?その上でこの婚約の話が出ると、失礼ながら、ユシール殿下がどう出るか分かりませんからね。それに、マクウェル殿やルーラント公爵もね。私は、これ以上シルフィーが、謂れもない事で傷付くのが…許せませんからね。」

「お父様…」

自分は傷付いていない─とは言え、父や兄やお祖父様達にはとても心配を掛けていたのね…。申し訳ない気持ちはあるけど、有り難いなとも思う。

「分かった。婚約者だと言わなくても、守る事はできるからな。」

「“守る”ですか─ありがとうございます。宜しくお願いします。」

その時の父の顔は、とても優しい目をしていた。



















そして、その日はもう夜も遅いからと、そのまま王城内の客室に泊まる事になった。

寝る支度が終わり、王城付きの女官達が下がった後、私は一人テラスに出て夜空を眺める。


今日1日で色々な事が───あり過ぎた。
王妃陛下のお祝いの夜会に参加して、一つだけお願いをしたかっただけだった。そのお願いはすんなり許可がおりた。後は、邸に帰るだけだった筈なのに──。

「何で…婚約者になっちゃったのかしら?」

「嫌だったのか?」

ーへぁっ!?ー

変な声が出そうになるのを、必死に抑えた。そんな私は本当に偉い!───ではなくて!

「…何故…王弟殿下が……ここに?」

今は夜。しかも、この部屋には今、私しか居ない。つまり、2人キリと言う事だ。

「ん?婚約者の部屋に来ただけだが?」

「婚約者────って、何故私が?」

「何故って…俺がシルフィーを欲しいと思ったからだ。」

「─っ!?」

ー“欲しい”って!?ー

「何を……」

としか言葉にならなくて、後は口だけがハクハクと動くだけだった。

「お前の事だから、今は俺が何を言っても信じられないだろうし、俺が王弟で断れなかっただけなんだろう?」

ーそうですー

「あの場でお前を婚約者にと言ったのは、お前を逃さない為だった。それに、俺は初めて王弟─王族である事に感謝した。お前が断れない─と思っていたからな。」

「……」

「取り敢えず、お前を婚約者にさえすれば、後はこっちのもんだからな。お前の気持ちは、後々俺が良いと思ったんだ。だから─もう、俺から逃げられると思うなよ?俺は、逃がす気は微塵もないからな、シルフィー。」

ヒュッと息を呑む。

王弟殿下の瞳が、仄かな熱を持っているのが分かった。
冗談でも、虫除けでもないのだと─。

「知っていたか?魔力の相性が良いと言うのは、結構よくある事なんだが、魔力を流しても全く負担が無く、おまけにシルフィーは魔力が少しずつ回復している。これは、滅多に無い事なんだ。普通、どんなに相性が良くても副反応が出るから、応急処置程度しか行わない治療法なんだ。」

それは知らなかった。あぁ、だから、幼い頃色んな治療をしたけどうまくいかなかったのか。

「俺達の魔力の相性は、滅多にない程に良い。魔力の相性が良いと、他にも色んなメリットがある。」

「メリット?」

「まぁ…それは…追々…分かるだろう…」

そう言って、王弟殿下は目を細めて微笑みながら私の頬をスルリと撫でた。


















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