傷物令嬢は騎士に夢をみるのを諦めました

みん

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逃がさない

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「王弟殿下と……婚約……!?」

「私もよく分からないうちに…何故か、その場で誰の反対も無く直ぐに決まって、もう書類も出来上がってて…。その上見届け人が国王陛下だったから、そのまま受理されて婚約者になったの。」


王城に泊まった翌日は学園が休みだった為、帰りにアヤメさんの居るハイネルの別邸へとやってきた。

「それで、アヤメさんは知ってるかもしれないけど、マクウェル様がルーラント公爵を継ぐ条件の一つが、マクウェル様がハイネルかキリクスの直系─エレーナか私と結婚する事だから…アヤメさんは、ハイネル伯爵に戻されると思う。あ、でも、王弟殿下と私の婚約は、私の卒園迄は秘密にする事になったけど。」

「─でしょうね…。その方が有り難いわ。でも…王弟殿下がねぇ…。こうなったら、女狐がどう足掻こうとも、マクウェル様と結婚するしか…ないわね。と言っても…あの女狐がこれでおとなしくなるとも思えないけど。逆に、もっとやらかして来そうよね。」


エレーナは、あれからどうやったのか、マクウェル様は勿論の事、ユシール殿下も味方?につけたようだ。まぁ…ベルフォーネ様が軽くあしらっているけど。

「ストーリー通りなら、シルフィーちゃん達の卒業式で、大勢の人達の前でベルフォーネ嬢とシルフィーちゃんは断罪されるの。エレーナヒロインを苛めたって。」

「卒業式と言う事は…ストーリー通りなら、後一年半って事?」

「そう。シルフィーちゃん達が3年生になってから、ヒロインへのあたりが強くなるのよ。」

「それなら…卒業式の断罪劇は…回避できるかもしれないわ。」

「え?」

「アヤメさんには言っておくわね。アーロンにも秘密なんだけど────」




















「ふふふっ。本当に、どんどん本来のストーリーから外れていくから、楽しいわね!女狐の悔しがる顔が見たいわー。」

女狐──一応はアヤメさんの娘の…筈なんだけど…。本当に嬉しそに笑ってるから…良い…のかな?

「兎に角、女狐が焦って何をしてくるか分からないから、本当に気を付けてね。まぁ、王弟殿下が居るから、大丈夫でしょうねどね。」



ー王弟殿下か…ー

本当に、何故私なのか…。



『取り敢えず、お前を婚約者にさえすれば、後はこっちのもんだからな。お前の気持ちは、後々俺が良いと思ったんだ。だから─もう、俺から逃げられると思うなよ?俺は、逃がす気は微塵もないからな、シルフィー。』


目を逸らすこと無く真っ直ぐに見つめられた。

胸が苦しいのに、ほんのりと温かい熱を持った。



ー私も、“いばら姫”の様に…なれるのだろうか?ー














*アシュレイ視点*




『シルフィーが思っている通り、マクウェル殿がルーラント公爵を引き継ぐ条件が…キリクスかハイネルの直系の者との婚姻だ。』

それを耳にした時、一瞬にして怒りが溢れ出た。
そのせいで、直ぐ近くに居た兄上とレオナールの顔色が悪くなっていた。

俺は知らなかった。シルフィーがマクウェル=ルーラントの婚約者候補の一人だった事を。
俺の圧に耐えかねたレオナールが、話を変えるように口を挟んだ。

ーあぁ、これは本当に認めざるを得ないなー

12も年下だとか、今のシルフィーの気持ちを考えている暇はない。シルフィーに、逃げる隙を与える必要もない。

兄上とレオナールの事だ。俺が自覚するより前に気付いていたんだろう。二人の思い通りになる事には…何となく腹立たしい気持ちもあるが…少しだけ感謝しておこう。


自覚して認めてしまえば、後は簡単だった。


『なら、シルフィーは俺が。』


『シルフィー、俺の婚約者になれ。』


兄上とレオナールと宰相がニヤニヤと笑っている─後でキッチリシメよう。

シルフィーは…軽く目を瞠って固まっている。

ーうん、可愛いー

本当に、殆ど表情が変わらない。でも、その微々たる変化ですら可愛く見えるのは──俺がヤバいのだろうか?
これから、シルフィーはどんな表情を俺に見せてくれるのか…いや。俺が変えさせてやろう──。



予想通り、俺とシルフィーの婚約はその場で直ぐに決まった。兄上の用意周到さには…驚きよりも少し呆れたが、これでシルフィーは逃げられなくなった。

後は、俺に来るようにするだけだ。











「俺達の魔力の相性は、滅多にない程に良い。魔力の相性が良いと、他にも色んなメリットがある。」

「メリット?」

「まぁ…それは…追々…分かるだろう…」

キョトンとしているシルフィーの頬を撫でる。
普通の女性なら顔を赤らめたりするが、このシルフィーは更にキョトンとするだけだった。

本当に俺に興味が無いのだろう。その事がまた面白い。どうすれば、この表情を崩す事ができるのか─。

本当に、シルフィーは厄介なに捕われてしまったな。

もう、何があっても





逃がさない────















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