傷物令嬢は騎士に夢をみるのを諦めました

みん

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ヒロイン

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3年生卒業式迄、後1ヶ月──





*アヤメ視点*


「エレーナ、アーロン。あなた達が2年生になる前の春休みの間に、ハイネル伯爵家の席に戻る事になったわ。だから、あなた達2人は、新学年からは貴族枠での通園になるから。」

「「え?」」

エレーナもアーロンも驚く。

「これは、現ハイネル伯爵当主である私の兄─あなた達の伯父上が決めた事よ。拒否権は無いわ。」

そう言いながら、私はエレーナ女狐に視線を向ける。勿論、女狐は顔面蒼白だ。女狐は知っているのだ。

“ハイネル伯爵席に入る=マクウェルの婚約者になる”

と言う事を。ソレが、漫画では書かれていたから。本当のエレーナだったら知らなかった条件だけど、中身転移者の女狐なら必ず知っている筈。

ー王弟殿下狙いだったアナタには、残念な事になったわね?ー

ニヤけそうになるのを我慢する。

漫画のように、ベルフォーネ嬢とシルフィーちゃんのラスト一年の学園生活は、エレーナを平民だと見下しキツくあたって来る─ように仕向けるつもりだったんでしょうけど…マクウェル様との婚約が正式に決まると、エレーナと王弟殿下とのルートは完全に閉ざされる。その前に、王弟殿下は既にシルフィーちゃんと婚約しているから、どう転んでも女狐が王弟殿下と結婚する事は絶対に無い。

確か、ゲーム版の口コミで

王弟殿下アシュレイの溺愛がたまらない!”

“溺愛ぶりが半端ない”

と書かれていたから、きっと、その王弟殿下に捕まったシルフィーちゃんは…彼からはもう逃げられないと思う。

シルフィー本人には言わないけどー

「あら?エレーナ、顔色が悪いようだけど、大丈夫?ふふっ。エレーナは、幼い頃から…貴族になりたいと言っていたものね?良かったわね?」

「……お母様…それは……。」

「ふふっ。これで、堂々とマクウェル様の側に居る事ができるわね?」

これでもか!と、ニッコリと微笑むと、女狐は手をグッと握り締める。

ー自分の為に他人ひとを陥れようとする貴方を、私は絶対に許さないー

「伯爵の席に入ると言っても、今迄の生活と殆ど変わらないわ。ただ、これからは貴族としての意識を持って、今以上慎重に行動するようにね。」






*エレーナ視点*


『エレーナ、アーロン。あなた達が2年生になる前の春休みの間に、伯爵家の席に戻る事になったわ。だから、あなた達2人は、新学年からは貴族枠での通園になるから。』


息が詰まった。
私達が伯爵席に入ると言う事は、マクウェルの婚約者がエレーナに決まったと言う事を意味するから。

「何故?私は…私は………」









この世界─漫画が大好きだった。勿論、ゲーム版も配信日からやった。そこで出て来た隠しキャラの王弟殿下─アシュレイが特にお気に入りだった。
マクウェルもイケメンで優しいから好きだけど、実際自分が結婚するなら、アシュレイが良い。優しいだけのマクウェルよりも、少し意地悪で地位も身分もお金も持っているアシュレイの方が断然良い。

運良く腕を怪我して、傷痕ができて、運良くマクウェルがをしてくれたお陰で、マクウェルの私に対する好感度が一気に上がったのに。そのお陰で、色々相談するうちに、ユシールの好感度を上げる事も成功したのに。

レオナールとベルフォーネを仲違えするのは…無理だったけど、ベルフォーネとシルフィーを悪役にさせるのは簡単だった。表立って公爵令嬢であるベルフォーネを非難する人はいないけど、悪い噂はまだまだ残っている。シルフィーに至っては…ほぼ地に落ちている…筈。

魔力を上げる為に魔法学を選んだら、ストーリーとは違って、臨時講師としてアシュレイがやって来たのは、運命だと思った。私はやっぱりヒロインなんだ!と。


でも──


どんなに授業を頑張っても、貴族の奴等より魔力が上になっても、アシュレイは私をただただ一生徒としか褒めてはくれなかった。

「やっぱり、シルフィーやベルフォーネが私を苛めて来ないから、うまくいかないのよ…。」

マクウェルだって、イケメンだし将来は公爵だし、結婚しても良いんだけど…やっぱりアシュレイが一番良いよね…。アシュレイが駄目だった時は、マクウェルが居る。そのマクウェルとの婚約迄後2ヶ月程。その2ヶ月の間に──

「ベルフォーネとシルフィーには、もっと…もっと悪者になってもらうわ。」

私はヒロインだ。何とかなるかもしれない。



私はまだ、アシュレイを諦めない─。



















*アーロン視点*


「僕が伯爵席に……。」

「そうよ、アーロン。」

「お母様、これで少しは…シルフィーを助ける事ができるかなぁ?」

「ふふっ。その気持ちだけで、シルフィーは助かっていると思うわよ?」


従姉のシルフィーは、初めて会った時から優しかった。平民で、まだ字も読めなかった僕達に本を読んでくれた。字の書き方も教えてくれたりもした。いつ遊びに誘っても、嫌な顔をする事もなく遊んでくれた。確かに、あまり表情豊かではなかったけど、シルフィーはいつだって僕達に優しかった。

エレーナは、それを忘れてしまったのだろうか?エレーナも、僕にとっては大事な双子の姉だけど…。エレーナが、今以上にシルフィーを陥れようとするなら、僕も…黙ってはいられない。


















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