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傷物
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「ベル様、予定通りに終了しました。」
「まぁ、流石はシルね!おめでとう。」
「私の不在の間、問題はありませんでしたか?」
「問題ねぇ…私の中では問題ではなかったわ。」
ベルフォーネ様は、コテンと首を傾げて笑っている。
どうやら、その問題にもならなかった問題は愉しかったようだ。
「それじゃあ、シルはこれからもまた、私に付いてくれると言う事で良いのね?」
「はい。宜しくお願いします。」
パシャンッ
「──あっ!」
ベルフォーネ様と話をしていると、私達の背後で何かの音と声がした。
声がした方へと視線を向けると、エレーナが居た。
ここは学園内にある中庭で、学年や身分関係無く誰もが自由に入って自由に過ごす事ができる大きな庭で、あちこちにベンチがあり、中央には噴水もある。
何故かエレーナは、その噴水を覗き込んでいる。
今は朝の少し早い時間の為、あまり生徒が居ない。
ー嫌な予感しかしないわー
チラリとベルフォーネ様に視線を向けると…何やら愉しそうな顔をしてエレーナを見ていた。
ーいや、愉しんでいるんだわー
無視しようとも思ったけど、ベルフォーネ様が愉しそうにしている為、私はそのままエレーナの元へと向かった。
「エレーナ、どうしたの?」
「あ、シルフィー?あ…何でも無いわ。」
エレーナが慌てて私から目を逸らす。その逸した方を見ると、噴水の中に何冊かの本─教科書?が水中に沈んでいた。
「これ──」
何故教科書が噴水に?と不思議に思いながら、その水の中の教科書に手を伸ばした時
「シルフィー!?」
エレーナが、態とらしく大きな声で私の名前を叫んだ。
そして、その直後にまた名を呼ばれる。
「シルフィー!」
ーまたかー
正直、こうなるだろうと思っていた。おそらく、ベルフォーネ様も。
私は、溜め息吐きながら後ろを振り返った。
「……マク…ルーラント様。お久し振りでございます。」
私は、彼に幼馴染みではなく、侯爵家嫡男としての態度をとった。そんな私の態度に、一瞬動きを止めたが、すぐに歩みを進めてエレーナの元へまでやって来た。
ベルフォーネ様は、そのまま何も言わずに見ているだけだ。
「教科書が…どうして…」
「何でもないの。マクウェル様は気にしないで。」
哀しそうな顔をするエレーナ。そんなエレーナを優しい目で見つめた後、私に向けたのは冷たい目だった。
「シルフィー、君は本当に変わってしまったんだね。どうして…従妹のエレーナを苛めるんだ?」
見たままでしか理解しないマクウェル様。私が悪だと決めつけている。
ーこんな人だったとはー
呆れた気持ちで2人に視線を向けると、エレーナの左手が視界に入った。
「エレーナ…その手にある傷は──」
と、思わずエレーナの方に手を伸ばすと
「エレーナに触るな!」
マクウェル様が私からエレーナを守る様に自身の背中に庇い、私を睨みつけてきた。
「一体、シルフィーはどれだけエレーナを傷付ければ気が済むんだ?」
「……」
「いつも黙って何も言わないんだな。」
ー何を言っても聞くつもりはないでしょう?ー
「それに…このエレーナの傷は…シルフィーみたいな傷物が触れて良い傷ではない!君とは…違うんだ!」
ヒュッと息を呑んだのは…誰だったのか───
ーソレを…マクウェルに言われるなんてー
『ルー』
一緒に笑って、一緒に居てくれたあなたが好きだった。
その思い出までも…あなたは……
ー苦しいー
クラリ─と、体が揺れるのが分かる。
「シル!」
「え!?ベルフォーネ嬢!?何処から?」
そう。マクウェル様とエレーナは、ベルフォーネ様が隠れて見ていた事には全く気付いていなかったのだ。でも、隠れていた筈のベルフォーネ様は、どうして出て来てしまったのだろうか?
「誰か!おう────あの方を呼んで来てちょうだい!今すぐに!」
ベルフォーネ様の声に、“影”が反応した気配がしたのを感じたと同時に、私の意識がそこで途切れた。
「──ん?」
ここは……
「医務室?」
「そうだ。」
「え?」
私の囁きに答えたのは
「王弟殿下…。」
「気分はどうだ?大丈夫か?」
起き上がろうとすると、王弟殿下は私の背中に手を添えて体を支えてくれた。
「私…どうして?」
何故、医務室のベッドに居るのかが分からない。
「覚えてないか?シルフィーは、中庭で気を失ったんだ。それで、側に居たベルフォーネ嬢の“影”が俺を呼びに来て、気を失っていたお前をここ迄運んで来た。」
『それに…このエレーナの傷は…シルフィーみたいな傷物が触れて良い傷ではない!君とは…違うんだ!』
思い出した─。あの言葉の後、胸が苦しくなって──。
ギュッと布団を握り締めると、その手に王弟殿下がそっと手を重ねて来た。
「話は─ベルフォーネ嬢と影から聞いた。」
ビクッと肩が揺れる。
「ひょっとして…左肩の傷は……」
少し目を閉じて軽く息を吐き、ゆっくりと目を開けて、そのまま王弟殿下と視線を合わせると、そこには心配そうに私を見つめる王弟殿下が居た。
「まぁ、流石はシルね!おめでとう。」
「私の不在の間、問題はありませんでしたか?」
「問題ねぇ…私の中では問題ではなかったわ。」
ベルフォーネ様は、コテンと首を傾げて笑っている。
どうやら、その問題にもならなかった問題は愉しかったようだ。
「それじゃあ、シルはこれからもまた、私に付いてくれると言う事で良いのね?」
「はい。宜しくお願いします。」
パシャンッ
「──あっ!」
ベルフォーネ様と話をしていると、私達の背後で何かの音と声がした。
声がした方へと視線を向けると、エレーナが居た。
ここは学園内にある中庭で、学年や身分関係無く誰もが自由に入って自由に過ごす事ができる大きな庭で、あちこちにベンチがあり、中央には噴水もある。
何故かエレーナは、その噴水を覗き込んでいる。
今は朝の少し早い時間の為、あまり生徒が居ない。
ー嫌な予感しかしないわー
チラリとベルフォーネ様に視線を向けると…何やら愉しそうな顔をしてエレーナを見ていた。
ーいや、愉しんでいるんだわー
無視しようとも思ったけど、ベルフォーネ様が愉しそうにしている為、私はそのままエレーナの元へと向かった。
「エレーナ、どうしたの?」
「あ、シルフィー?あ…何でも無いわ。」
エレーナが慌てて私から目を逸らす。その逸した方を見ると、噴水の中に何冊かの本─教科書?が水中に沈んでいた。
「これ──」
何故教科書が噴水に?と不思議に思いながら、その水の中の教科書に手を伸ばした時
「シルフィー!?」
エレーナが、態とらしく大きな声で私の名前を叫んだ。
そして、その直後にまた名を呼ばれる。
「シルフィー!」
ーまたかー
正直、こうなるだろうと思っていた。おそらく、ベルフォーネ様も。
私は、溜め息吐きながら後ろを振り返った。
「……マク…ルーラント様。お久し振りでございます。」
私は、彼に幼馴染みではなく、侯爵家嫡男としての態度をとった。そんな私の態度に、一瞬動きを止めたが、すぐに歩みを進めてエレーナの元へまでやって来た。
ベルフォーネ様は、そのまま何も言わずに見ているだけだ。
「教科書が…どうして…」
「何でもないの。マクウェル様は気にしないで。」
哀しそうな顔をするエレーナ。そんなエレーナを優しい目で見つめた後、私に向けたのは冷たい目だった。
「シルフィー、君は本当に変わってしまったんだね。どうして…従妹のエレーナを苛めるんだ?」
見たままでしか理解しないマクウェル様。私が悪だと決めつけている。
ーこんな人だったとはー
呆れた気持ちで2人に視線を向けると、エレーナの左手が視界に入った。
「エレーナ…その手にある傷は──」
と、思わずエレーナの方に手を伸ばすと
「エレーナに触るな!」
マクウェル様が私からエレーナを守る様に自身の背中に庇い、私を睨みつけてきた。
「一体、シルフィーはどれだけエレーナを傷付ければ気が済むんだ?」
「……」
「いつも黙って何も言わないんだな。」
ー何を言っても聞くつもりはないでしょう?ー
「それに…このエレーナの傷は…シルフィーみたいな傷物が触れて良い傷ではない!君とは…違うんだ!」
ヒュッと息を呑んだのは…誰だったのか───
ーソレを…マクウェルに言われるなんてー
『ルー』
一緒に笑って、一緒に居てくれたあなたが好きだった。
その思い出までも…あなたは……
ー苦しいー
クラリ─と、体が揺れるのが分かる。
「シル!」
「え!?ベルフォーネ嬢!?何処から?」
そう。マクウェル様とエレーナは、ベルフォーネ様が隠れて見ていた事には全く気付いていなかったのだ。でも、隠れていた筈のベルフォーネ様は、どうして出て来てしまったのだろうか?
「誰か!おう────あの方を呼んで来てちょうだい!今すぐに!」
ベルフォーネ様の声に、“影”が反応した気配がしたのを感じたと同時に、私の意識がそこで途切れた。
「──ん?」
ここは……
「医務室?」
「そうだ。」
「え?」
私の囁きに答えたのは
「王弟殿下…。」
「気分はどうだ?大丈夫か?」
起き上がろうとすると、王弟殿下は私の背中に手を添えて体を支えてくれた。
「私…どうして?」
何故、医務室のベッドに居るのかが分からない。
「覚えてないか?シルフィーは、中庭で気を失ったんだ。それで、側に居たベルフォーネ嬢の“影”が俺を呼びに来て、気を失っていたお前をここ迄運んで来た。」
『それに…このエレーナの傷は…シルフィーみたいな傷物が触れて良い傷ではない!君とは…違うんだ!』
思い出した─。あの言葉の後、胸が苦しくなって──。
ギュッと布団を握り締めると、その手に王弟殿下がそっと手を重ねて来た。
「話は─ベルフォーネ嬢と影から聞いた。」
ビクッと肩が揺れる。
「ひょっとして…左肩の傷は……」
少し目を閉じて軽く息を吐き、ゆっくりと目を開けて、そのまま王弟殿下と視線を合わせると、そこには心配そうに私を見つめる王弟殿下が居た。
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