モブで薬師な魔法使いと、氷の騎士の物語

みん

文字の大きさ
83 / 123
第二章ー同棲ー

SIDEエディオル

しおりを挟む
コトネが熱を出した。

ベッドの上で、顔を赤くして少し息苦しそうに寝ている。

「コトネ、すまないが…行って来る。」

コトネが眠ってから2日目。前から予定していた泊まり掛けの視察。勿論コトネの事は心配だが、近衛としての矜持を持っているし、これで休めば“私のせいで…”と、コトネが気に病むだろう。

ー帰って来る時には、また、元気なコトネに会えるだろうか?ー

そう思うながら、俺はコトネの部屋を出て城へと向かった。










視察も無事に終え、帰る準備を整えているとルナ殿から魔術での手紙が届いた。

どうやら、コトネが未だに回復する気配が無い為、パルヴァンで保管している、コトネが作ったポーションを取りに行くと。





「ハル様が作る回復のポーションが…100本に1本の割合で、とんでもないレベルの質の物があるんですよ。なので、必ず私が鑑定して、とんでもない物は、いざと言う時の為に他の場所で保管してるんですよ。」



と、前にゼン殿が遠い目をしながら言っていた事を思い出す。そんなポーションだ。飲めばすぐ良くなるかもしれないな─と、少し安心しながら帰りの支度を続けた。













「エディオル、今日はこのまま帰って良いぞ。」

城門に辿り着いた時に、ランバルトが声を掛けてきた。

「ハル殿が心配だろう?報告書は少し遅くなっても構わないから。すぐに帰ってやれ。」

その言葉に、素直に有難いと思い

「ラン─王太子殿下、ありがとうございます。お言葉に甘えて──」



『──ノア───騎士────主を───助けてくれ───』

ネージュ殿の声が頭に響き渡った。














流石は天馬。ノアの足は衰え知らずの疲れ知らずで、一瞬にして蒼の邸に辿り着いた。




『主を離せ!』

「ネージュ!いいから!落ち着いて!お願い!」


「──ノア!ディ──!!」



今迄聞いた事のないコトネの悲痛な叫び声が響いた。その瞬間殺気が一気に溢れ出し、そのまま声のある方へと走って行く。




そこで目にした光景は──ネージュ殿は怒りのせいか魔力が溢れていた。その近くに居た2人の男が慌てるように逃げ出そうとして、そのうちの1人がコトネを担ぎ上げた。


ーコトネに触るなー


細身の男の方には、軽く鳩尾を蹴りあげて伸しておく。
コトネを担いでいる男の方は──

ーコトネは返してもらう。その手…要らないよな?ー

「あああああああああーっ」

コトネを取り戻す為に、その男の腕ごと切り落とし、ズルリと落下するコトネを俺の腕で抱き留める。

ドサッ──

「っ──????痛く…ない?」

と言いながら、ギュッと瞑っていた目を開けて、ソロソロと上げた顔を見て、ホッとしたのは一瞬で

「ハル、大丈夫…じゃないな…」

真っ赤に腫れている頬にソッと触れてから、左腕で抱き締める。

「もう少しだけ…我慢してくれ。」

そう言って、コトネを左腕だけで抱き上げる。本当は、このままここで待ってもらった方が良いのだろうが…離したくなかった。
すると、コトネも俺の首にギュッと、しがみついて来た。

「そう。そのまま…俺に掴まってて。直ぐに…終わるから。」

そのまま、男の方に視線を向ける。

「あああああっ…腕…が…っ」

「左腕は残念だったな。バランス良く…右腕も…いっとくか?」

「ひぃぃ──っ止めろ!止めてくれ!!」

「何故…お前の言う事を…聞かなければいけないんだ?あぁ、そうか。利き腕は…止めておこうか?代わりに…足は要らないな。これから先の人生、お前にはもう、自由はないから。」

ーコトネとネージュ殿に手を出したのだ。もう、自由なんて無い。コトネが赦そうともー

「それに…俺が何もしなくても…次から次へとから、覚悟しておいた方が良いぞ?」

「なっ…何を…」



「おやおや…。私は…ハル様が病気だ─としか聞いていなかったのですが…。」

タイミング良くゼン殿が現れた。

「エディオル殿。これ、頼まれていたポーションです。部屋に戻って…ハル様に飲ませて頂けますか?後の事は────俺に任せてくれるよな?」

殺気を含んだ笑みを湛えている。

「あぁ、勿論、ゼン殿に任せますよ。今の俺は、ハルが第一優先なので…。ポーション、ありがとうございます。後は…宜しくお願いします。」

そう言うと、俺は邸の方へとゆっくりと歩きだした。

「ハル、遅くなって…すまない。もう大丈夫だからな。部屋に戻ろう。」

「────っ」

ギュッと、俺の首にしがみついたまま、コトネはコクコクと頷いた。











「─ディは…ここに…側に…居てくれる?」

俺の服をギュッと握っているコトネの手を、俺の手で包み込む。

「何処にも行かない。ずっとここに居るから。おやすみ、コトネ。」

「ありがとう。」

ふにゃりと笑った後、コトネは目を閉じた。













「エディオル様もお疲れでしょう?ハル様の為にも…いっそのこと、しちゃって下さい。その方が…私達も安心なので…。私もリディも…ゼンさんと…で離れますので、ハル様の事、宜しくお願いします。」

と、ルナ殿とリディ殿に笑顔で言われ、断る理由もないから、コトネの横に入り込んだ。そのまま後ろから抱き締める。
その柔らかい身体と、コトネの香りにホッとする。

きっと、俺が動かなくても皆が動くだろう。ならば、俺は…コトネの側に居るだけだ。それに─

ーコトネが側に居て欲しいと言うのは…俺だけだろうからー

とは、口に出しては言わないでおこう。

「──コトネ。ゆっくり…おやすみ。」

そう囁いて更にコトネを抱き寄せてから、俺も目を閉じた。












しおりを挟む
感想 134

あなたにおすすめの小説

喪女なのに狼さんたちに溺愛されています

和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です! 聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。 ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。 森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ? ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。

【完結】秀才の男装治療師が女性恐怖症のわんこ弟子に溺愛されるまで

恋愛
「神に祈るだけで曖昧にしか治らない。そんなものは治療とは言わない」  男尊女卑が強い国で、女であることを隠し、独自の魔法を使いトップクラスの治療師となり治療をしていたクリス。  ある日、新人のルドがやってきて教育係を押し付けられる。ルドは魔法騎士団のエースだが治療魔法が一切使えない。しかも、女性恐怖症。  それでも治療魔法が使えるようになりたいと懇願するルドに根負けしたクリスは特別な治療魔法を教える。  クリスを男だと思い込み、純粋に師匠として慕ってくるルド。  そんなルドに振り回されるクリス。  こんな二人が無自覚両片思いになり、両思いになるまでの話。 ※最初の頃はガチ医療系、徐々に恋愛成分多めになっていきます ※主人公は現代に近い医学知識を使いますが、転生者ではありません ※一部変更&数話追加してます(11/24現在) ※※小説家になろうで完結まで掲載 改稿して投稿していきます

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

元貧乏貴族の大公夫人、大富豪の旦那様に溺愛されながら人生を謳歌する!

楠ノ木雫
恋愛
 貧乏な実家を救うための結婚だった……はずなのに!?  貧乏貴族に生まれたテトラは実は転生者。毎日身を粉にして領民達と一緒に働いてきた。だけど、この家には借金があり、借金取りである商会の商会長から結婚の話を出されてしまっている。彼らはこの貴族の爵位が欲しいらしいけれど、結婚なんてしたくない。  けれどとある日、奴らのせいで仕事を潰された。これでは生活が出来ない。絶体絶命だったその時、とあるお偉いさんが手紙を持ってきた。その中に書いてあったのは……この国の大公様との結婚話ですって!?  ※他サイトにも投稿しています。

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

キズモノ転生令嬢は趣味を活かして幸せともふもふを手に入れる

藤 ゆみ子
恋愛
セレーナ・カーソンは前世、心臓が弱く手術と入退院を繰り返していた。 将来は好きな人と結婚して幸せな家庭を築きたい。そんな夢を持っていたが、胸元に大きな手術痕のある自分には無理だと諦めていた。 入院中、暇潰しのために始めた刺繍が唯一の楽しみだったが、その後十八歳で亡くなってしまう。 セレーナが八歳で前世の記憶を思い出したのは、前世と同じように胸元に大きな傷ができたときだった。 家族から虐げられ、キズモノになり、全てを諦めかけていたが、十八歳を過ぎた時家を出ることを決意する。 得意な裁縫を活かし、仕事をみつけるが、そこは秘密を抱えたもふもふたちの住みかだった。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

処理中です...