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9 侵略
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双子の誕生会から1ヶ月もしないうちに、ルテリアル王国の平穏な生活が一変する出来事が起こった。3000年ぶりに、他国からの侵略を受けたのだ。
あれから、大魔女オードリナが国王に「気を付けた方が良い」「そろそろ危機感を強めるべきだ」と忠告していたが、国王は「大丈夫だろうが、分かった」と、軽く受け止めるだけだった。そうして、ゆるゆるとしたまま日は過ぎて行き──気付いた時には敵国がルテリアル王国に侵入していたのだ。
ギライマ王国
虎族の王が君臨する獣人国。三代前の国王の時代に跡目争いが激化し、その争いに勝ち抜き国王になったのが好戦的な王子だった。比較的小さい国だったものを、近隣の小国を数年で侵略していき、今では元よりも1.5倍程の領土を手に入れている。その国王が亡くなった後に国王となったのが、その息子で現国王なのだが、父王よりも好戦的で、火属性の魔力持ち。おまけにその魔力もかなり強いようで、更なる領地拡大を狙っていて、近隣の国とは常に警戒し合っている状態だ。
ただ、獣人は人間よりも身体能力が優れていて、力が強いと言っても、人間の魔法使いとは互角であり、魔法使いの多い国にはなかなか手を出す事ができなかった。
ギライマ王国は常夏の国。食料に困る事はないが、魔石などの資源が少ない上に、魔力持ちも少ない。国内を発展させようにも、元となる物がない為に、他国よりも文化や工業などが遅れているのが問題となっている。そこで、ギライマの現国王が目を付けたのが、ルテリアル王国だった。
勿論、4大精霊に護られた国だと知っている為、武力で攻め行って──と言う事はしなかった。
“4大精霊の加護が薄れている”
その真相を確かめる為に、ルテリアルに人間の密偵部隊を送り込み、国内調査をさせた。それは、急がせる事なく、ゆっくりゆっくりと数年かけて行われた。
そして、調査の結果
“やはり加護は薄れている可能性が高い”
“ついに、王族の魔力、加護無しが生まれた”
この結果により、ギライマ国王は慎重にルテリアルに手を伸ばす事にした。
平和的に友好関係を築こうとしたが、親書を送ってもルテリアルから返って来たのは「否」だった。
“侵略国家とは手を結ぶ事はない”
“野蛮民族は信用に値しない”
ギライマ国王はそれに怒りはしたが、その反面
“ルテリアル国王は、自国の現状把握ができていない”
と判断した。
加護があるから─と、自らは国を護る為の事は何もしていないだろう。3000年もの間、何一つ困る事のなかった平和な国。
そんな国を突くのは簡単だった。
それでも、焦らずに慎重に動いた。薄れているとは言え、加護の力が残っているのは確かだからだ。
そうして、ゆっくりじわじわと、ギライマはルテリアルに入り込んで行った。
「ルテリアルに侵攻しても、加護の力が働く様子は無い」
と判断したのは、双子の誕生会から1ヶ月程が過ぎてからだった。
加護の力を過信していた島国のルテリアル。最初に侵攻された辺境地はあっと言う間にギライマの手に落ちた。しかし、そこから一気に──とはいかなかった。平和に慣れた国とは言え、優秀な魔法使いが多く居た為に、それ以降の侵略は簡単にはいかなかった。
そして、最大の壁となったのが、大魔女と大神官と聖女の存在だった。
大魔女は血の制約がある為、直接ギライマに手を出す事はできなかったが、魔法使いを導く事はできた。大神官と聖女は怪我人達を救い、穢れた土地を浄化し国を護った。そうして、暫く続いた争いは、ギライマの被害が大きくなったところで、一旦停戦へと持ち込まれた。それでも、お互い引く事がなく、“終戦”ではなく“停戦”となった。
********
「ある程度の提案を受け入れるべきだったのではありませんか?」
「あの様な提案を受け入れてしまえば、王族の血が断たれて、加護の力が更に弱まる可能性がある。加護の力が薄くなっているとは言え、まだあるのは、我々王族が居るからこそだ。国や民を護る為に、我々の血を絶やすことはできない」
「エイダン……」
大魔女オードリナは、そっとため息を吐いた。
“国(国民)を護る為”と言いながら、ただ単に王位を失いたくないだけなのだ。加護が殆ど無いと分かっていないのか、未だに王族のお陰で今回の侵略を防げたと思っている。
ーここまで愚かな者だったとはー
正直、よくここまで耐えたなと思う。加護が殆ど無い状態で。大魔女と大神官と聖女が居たから…だろうけど。
争いが落ち着いた今、アマデューとレオノールは荒れた大神殿の復旧作業をしている。
ー本当に、あの2人が居なければ、被害はもっと大きかったはずー
「それじゃあ、これからどうなさるつもりですか?ギライマはまだ諦めてませんよ?次は、更なる武力でやって来ますよ?もう、加護の力を恐れる必要がないと……思っているでしょうから」
「分かっている。だから……スネフェリングに親書を送るつもりだ」
あれから、大魔女オードリナが国王に「気を付けた方が良い」「そろそろ危機感を強めるべきだ」と忠告していたが、国王は「大丈夫だろうが、分かった」と、軽く受け止めるだけだった。そうして、ゆるゆるとしたまま日は過ぎて行き──気付いた時には敵国がルテリアル王国に侵入していたのだ。
ギライマ王国
虎族の王が君臨する獣人国。三代前の国王の時代に跡目争いが激化し、その争いに勝ち抜き国王になったのが好戦的な王子だった。比較的小さい国だったものを、近隣の小国を数年で侵略していき、今では元よりも1.5倍程の領土を手に入れている。その国王が亡くなった後に国王となったのが、その息子で現国王なのだが、父王よりも好戦的で、火属性の魔力持ち。おまけにその魔力もかなり強いようで、更なる領地拡大を狙っていて、近隣の国とは常に警戒し合っている状態だ。
ただ、獣人は人間よりも身体能力が優れていて、力が強いと言っても、人間の魔法使いとは互角であり、魔法使いの多い国にはなかなか手を出す事ができなかった。
ギライマ王国は常夏の国。食料に困る事はないが、魔石などの資源が少ない上に、魔力持ちも少ない。国内を発展させようにも、元となる物がない為に、他国よりも文化や工業などが遅れているのが問題となっている。そこで、ギライマの現国王が目を付けたのが、ルテリアル王国だった。
勿論、4大精霊に護られた国だと知っている為、武力で攻め行って──と言う事はしなかった。
“4大精霊の加護が薄れている”
その真相を確かめる為に、ルテリアルに人間の密偵部隊を送り込み、国内調査をさせた。それは、急がせる事なく、ゆっくりゆっくりと数年かけて行われた。
そして、調査の結果
“やはり加護は薄れている可能性が高い”
“ついに、王族の魔力、加護無しが生まれた”
この結果により、ギライマ国王は慎重にルテリアルに手を伸ばす事にした。
平和的に友好関係を築こうとしたが、親書を送ってもルテリアルから返って来たのは「否」だった。
“侵略国家とは手を結ぶ事はない”
“野蛮民族は信用に値しない”
ギライマ国王はそれに怒りはしたが、その反面
“ルテリアル国王は、自国の現状把握ができていない”
と判断した。
加護があるから─と、自らは国を護る為の事は何もしていないだろう。3000年もの間、何一つ困る事のなかった平和な国。
そんな国を突くのは簡単だった。
それでも、焦らずに慎重に動いた。薄れているとは言え、加護の力が残っているのは確かだからだ。
そうして、ゆっくりじわじわと、ギライマはルテリアルに入り込んで行った。
「ルテリアルに侵攻しても、加護の力が働く様子は無い」
と判断したのは、双子の誕生会から1ヶ月程が過ぎてからだった。
加護の力を過信していた島国のルテリアル。最初に侵攻された辺境地はあっと言う間にギライマの手に落ちた。しかし、そこから一気に──とはいかなかった。平和に慣れた国とは言え、優秀な魔法使いが多く居た為に、それ以降の侵略は簡単にはいかなかった。
そして、最大の壁となったのが、大魔女と大神官と聖女の存在だった。
大魔女は血の制約がある為、直接ギライマに手を出す事はできなかったが、魔法使いを導く事はできた。大神官と聖女は怪我人達を救い、穢れた土地を浄化し国を護った。そうして、暫く続いた争いは、ギライマの被害が大きくなったところで、一旦停戦へと持ち込まれた。それでも、お互い引く事がなく、“終戦”ではなく“停戦”となった。
********
「ある程度の提案を受け入れるべきだったのではありませんか?」
「あの様な提案を受け入れてしまえば、王族の血が断たれて、加護の力が更に弱まる可能性がある。加護の力が薄くなっているとは言え、まだあるのは、我々王族が居るからこそだ。国や民を護る為に、我々の血を絶やすことはできない」
「エイダン……」
大魔女オードリナは、そっとため息を吐いた。
“国(国民)を護る為”と言いながら、ただ単に王位を失いたくないだけなのだ。加護が殆ど無いと分かっていないのか、未だに王族のお陰で今回の侵略を防げたと思っている。
ーここまで愚かな者だったとはー
正直、よくここまで耐えたなと思う。加護が殆ど無い状態で。大魔女と大神官と聖女が居たから…だろうけど。
争いが落ち着いた今、アマデューとレオノールは荒れた大神殿の復旧作業をしている。
ー本当に、あの2人が居なければ、被害はもっと大きかったはずー
「それじゃあ、これからどうなさるつもりですか?ギライマはまだ諦めてませんよ?次は、更なる武力でやって来ますよ?もう、加護の力を恐れる必要がないと……思っているでしょうから」
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