見捨てられた(無自覚な)王女は、溺愛には気付かない

みん

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10 4年

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スネフェリング帝国

この国もまた、先々代の国王が戦闘狂で、その代で一気に領土を拡大させた国だった。
その拡大した領土や各国の運営を先代の皇帝が整え、現皇帝になってからは、領地拡大を目的とした侵略等は一切していない。それ故に、現皇帝は平和主義者とされているが、帝国の軍事力は他国の追随を許さない程である為、ギライマに勝つ為には、スネフェリング帝国を味方につけるのが一番なのだ。

ただ、一つ問題があるとすれば──

スネフェリング帝国は、1年の半分が寒季で食物が育ちにくい。数年前、寒波が酷く食料不足に陥った時、スネフェリング帝国から援助を求められた時があったのだが、それを先代のルテリアル国王が拒否したのだ。
ただ、その時、既に大神官だったアマデューが“神殿から”と言う名目で援助をしたのだけど──

「現皇帝が、素直にルテリアル国王のお願いを聞いてくれるかしら?」
「今後、食料物資を支援すると言えば、快く受け入れてくれるだろう」

その自信のようなものは、どこから来るのか。

「誰も訊かないから、敢えて私から訊くけど、オーウェンとヘレンティナの無事は確認しているけど、カミリアも大丈夫なの?」
「……何かあったと言う報告は受けていない」
「………」

“受けていない”ではなく、“訊いていない”のだろう。

「一つだけ言わせてもらうわ。魔力を持っていなくても、カミリアは王族である前に1人の人間で、エイダンの子供よ。魔力を持っていないからこそ、もっと大切にするべきよ」

弱い者を力ある者が護る──

それが、本来の王族の姿ではないのだろうか?かつて、始祖の国王が4大精霊に護られたように。そんな恩恵を忘れてしまったから、加護が薄れているのでは?

「エイダンが会って確認しないと言うなら、私が無事を確認しに会いに行っても良いわね?」
「好きにすると良い……」
「ええ、好きにさせてもらうわ」

第二王女カミリアの住まいは離宮オニキス。

10歳の誕生会の時に会いに行こう─と思っていたところでギライマからの侵略を受け、会いに行く事ができないまま4年も経ってしまった。会いに行こうとするタイミングで、いつも何かが起こり会いに行けなかったのだ。何も起こらなければ、そのタイミングでカミリア自身の体調が良くないと言われ、カティエに止められオーウェンとヘレンティナの相手をする事になったりしていた。

ーようやく、会えるのねー

私と同じように、レオノールとアマデューも、まだカミリアに会えていないだろう。レオノールの言葉も気にはなるけど、取り敢えずは私だけで会いに行こう。

何かの邪魔が入る前に───





*離宮オニキス*


「あれから4年か……」

4年前の誕生会では、聖女の出現で喜びに溢れていたのに、たった数日で平和が崩れ落ちた。それでも、争いに慣れていないルテリアルが持ち堪えたのは、大魔女と大神官と聖女のお陰だと言われている。

「私とは……大違いね」



『精霊に見放されたお前の存在が、この国を危機に追いやっているのだ!暫くの間、王都から出て行ってもらう』

国王陛下からそう言われて、私は3年程辺境地にある王族所有の離宮へと追いやられていた。その辺境地は、既にギライマからの侵略が始まり戦地となろうとしていた領地だった。“国の為に死ね”と言われたようなものだった。

『“汚点”王女がやって来た』
『この領地は終わりだ』
『国王陛下は我々を見捨てたのか』

と、様々な言葉を耳にした。勿論、死も覚悟した。

でも───

獣人相手に劣勢を強いられていたけど、何とか盛り返しギライマを打ち負かし、それからも魔法使い達の活躍で領地を護りきった。

『まだ4大精霊の加護は生きている』

と、領民や魔法使い達は喜んでいた。

そして、停戦となり離宮オニキスに戻って来たのは、たった1週間程前だ。ここは、3年前と何も変わっていない。いや…更に使用人が減ったようで、以前にも増して静かになっている。どうやら、今回侵略を受けたのも、汚点王女のせいなんだそうだ。汚点王女は、不幸を呼び寄せるそうだ。

オニキスに戻って来てから1週間。未だ、お母様にも会えていない。この1年、手紙のやり取りも滞っていた。

「お母様は……元気にしてるかなぁ?」
「そう言うのは……第二王女のカミリアかしら?」
「─っ!だっ…誰!?」

ここは離宮と言う名の幽閉城。私以外にはごく限られたの少数の使用人が居るだけ。その少数の使用人が、私に声を掛ける事は無い。しかも、私の部屋に入って来るのは食事を持って来る時だけだ。今はまだ食事の時間ではないし、部屋に誰かを迎え入れた記憶は無い。

「驚かせてしまってごめんなさい。怪しい者ではないわ─と言っても、急に現れた本人が言っても信じられないわよね?」

ふふっ─と、悪戯っ子の様な顔をして笑っているのは、キラキラと輝く白色の髪に、キラキラと輝く金色の瞳をした綺麗な女性だった。

「初めまして。私はオードリナ。大魔女と呼ばれているわ。ようやく貴方に会えたわ」

と、今度は優しい笑顔を浮かべた。




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