見捨てられた(無自覚な)王女は、溺愛には気付かない

みん

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カティエが私のお母様ではなかった

エリアーヌ様が私のお母様だった

私は、白属性の魔力持ちだった

私は“カミリア”ではなかった




ー私は、一体何者なの?ー


信じていたカティエお母様が、私から全てを奪った人だった。
本当は白属性の魔力を持って生まれたのに、魔力無しの汚点と呼ばれて生きて来た。

『『カミリア……』』

水色と黄緑色の小さな子達が、私の頭を優しく撫でてくれて、フルトゥーレが私の肩に止まっている。ルテリアルの時と同じように、私を慰めてくれてるようだ。

ーありがとうー


「それで……私の本当の名前は分かっているんですか?」
「カティエが隠し持っていたのを、オードリナ様が見付けてくれたんだ」
「カミリアに付いているフルトゥーレが、見付けてくれたのよ」
「この子が?ありがとう」

お礼を言うと、フルトゥーレは嬉しそうにクルクルと飛び回り、一緒に黄緑色の子もクルクルと飛び回っている。

「だから、カミリアに本当の名を還せば、全てが元通りになる。名を、受け入れるかい?」

受け入れない──と言う選択肢は私には無い。

「はい。受け入れます」

すると、また私の足下に魔法陣が顕れた。今度は淡い水色の光がキラキラと輝いている。

『………リディア』
「────っ!」


“リディア”


たったそれだけだった。アマデュー様がその名を口にしただけで、私の中に光が灯ったようにじわじわと体が温かくなり、何かがゆっくりと動き出したような感覚がした。きっと、これが魔力の流れだろう。

「……リディア…………」

それが、私の本当の名前。

『これで、ようやくお願いができるわ』
『リディア、私達にも名前を付けてくれる?』

ー水色と黄緑の子達にも名前を?ー

『リディアが私達に名前を付けてくれると、これからもずっとリディアの側に居られるようになるの。だから、お願い、名前を付けて?』

これからもずっと一緒に居られるのなら、喜んで名前を付けよう。

「じゃあ………黄緑色あなたは“リーフ”で、水色あなたは“フェン”でどうかな?」

『リーフ!』
『フェン!』
『『ありがとう!これで、私達もリディアを護れる(わ)!』』

名前は気に入ってもらえたようで、キラキラと光りながら飛ぶリーフとフェン。

「え?妖精?」
「妖精が……2人も!?」

そこで、私以外にも2人が見えるようになったようで、皇帝陛下と宰相様が驚いたように声を上げた。

「この子達が見えるんですか?と言うか、貴方達妖精だったの!?」
「いやいや!妖精の事もそうですが、その前に!カミ──リディア様が色々変わってるんですが、それに関しては何もないんですか!?」

皇帝陛下と宰相様達は妖精の存在に驚いているけど、テオファーヌさんは違う事に驚いているようだ。

「私が変わってる?」
「あぁ、テオは知らなかったんだね。まぁ…私も聞いていただけで、実際目の当たりにして驚いているのはいるんだけどね。これが、リディア様の本当の色─姿なんだそうだよ」

宰相様がテオファーヌさんに説明すると、オードリナ様が「本当にエリアーヌにそっくりだわ」と言いながら、私に手鏡を差し出した。

「───え?」

その手鏡に映っているのは、アクアブルーの髪色。淡い紫色から淡い青色のグラデーションになっている瞳の私だった。

「エリアーヌの髪色と同じだわ。エリアーヌのエメラルドグリーンの瞳も綺麗だったけど、リディアの瞳の色も綺麗ね。これは……加護持ちではないかしら?」
「「「加護持ち!?」」」

それは無いんじゃないかな?実は私の母だったと言うエリアーヌ様が加護持ちだったそうだけど、親子だからと加護を授かる事は無い。今迄、加護があると感じた事もない。

『リディアは加護を持ってるよ』
『今迄、本当の名前を失っていたから、加護が打ち消されていただけだよ』
「え!?」

それが本当の事だとしても、自分に加護があるのかどうかなんて分からない。「あげる」と言われた事もない。

「ひょっとして……アマデューは、カミ─リディアが加護持ちだと分かった上で、ルテリアルから出国させてスネフェリング我が国に保護させて、更にはルテリアルとリディアを切り離したのか?」

皇帝陛下の質問に、アマデュー様が微笑む。

私が“リディア”であれば、ルテリアルから出る事はできないから、“カミリア”のままで出国できるように仕向け、ルテリアルから縁を切ってから“リディア”に戻した。

「これで、ルテリアルは完璧に4大精霊の加護を失ったんだ」

4大精霊が護っていたのは“ルテリアル”ではなく“リディアわたし”だった─にも関わらず、そのリディアから名を奪い、魔力や色も奪って虐げていた。それは、4大精霊達にとっては赦されざる事だった。だから、ルテリアルの加護が薄くなり──

「あぁ!だから、スネフェリングの寒季が穏やかになって来ているのか!?」

アマデュー様はまた、微笑んだ。



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