見捨てられた(無自覚な)王女は、溺愛には気付かない

みん

文字の大きさ
42 / 46

42 これからのルテリアル

しおりを挟む
一年中温暖な気候だったルテリアルに慣れていた私やレオノールにとっては、寒季が例年より穏やかだと言わても、寒い事には変わりなかったから、それがどれ程スネフェリングにとって良い事なのかよく分からなかった。

積雪量が減った
天気が荒れる日が減った
寒さが少しマシだ
寒季でも作物が育つ
寒季でも晴れの日が増えた

「それらは、加護持ちのリディアのお陰だったのか…」

勿論、そんな事を言われても、私には全く自覚はない。

加護を与えた精霊達にとって、ルテリアルに居た頃から私を護りたくても本当の名ではなかった為に護れず、かと言ってルテリアルに制裁を加えようにも、私が居る場所と言うところで何もできない状態だったと言う。

「大精霊と言っても万能ではない─と言う事だね」

力や能力が高いと言われる存在の大精霊も、人間と似ているところがあるのかもしれない。

「兎に角、リディア様はこれで本来の姿に戻ったから、ルテリアルの加護は完全に失われた。それに、4大精霊の怒りを買ったから、マトモではなくなるだろうね。一番の被害者は平民だね……」

精霊にとって興味があるのは、自身が加護を与えた人間だけなんだそうだ。
“好きか嫌いか”ではなく、“興味があるか無いか”
興味がある人間には愛情を注ぎ、何者からも護るけど、興味が無ければ何もしない。その者が倒れようと死のうがどうでも良い─と言う感じなんだそうだ。

「簡単に言えば“気まぐれ”なんだ」

だから、例え加護を与えた人間に子供ができても、その者に興味がなければ、その子を護る事もしない。
ただ、始祖であるジュヌベール様と、“ジュヌベールの子孫を護る”と言う約束があって、今迄ルテリアルが護られていたそうだ。それが、加護を与えたエリアーヌが死んでしまい、新たに加護を与えた者は名を奪われた上に虐げられた──となれば、4大精霊が怒るのも仕方無い。

「死んでしまったジュヌベール様との約束より、今生きているリディア様の方が優先されるべき事だからね。リディア様がスネフェリングに来れた時点で、ルテリアルは傾きかけ、リディア様が本来の姿になった瞬間、精霊達は動き出しただろうね」
「ルテリアルは……衰退の一途を辿るのみか……」

皇帝陛下の低い声が、その場に酷く響いた。

何故、私がルテリアルに居る間に本来の姿に戻さなかったのか──

「ルテリアルに居る間に戻してしまうと、リディア様を護る為にエイダンやカティエや国も護られる事になってしまうからね。それは……4大精霊としては不本意なんだろうね」
「仕返しができなくなる─と言う事だな?」
「「「…………」」」

『特に、サラマンダー様の怒りが凄かったから、ルテリアルは暑い国になるかも』
「暑い……国………」

ふふっ─と笑いながら恐ろしい事を言うのはフェン。寒季が長いスネフェリングも食糧難などで苦労して来たけど、暑過ぎるのもまた、色んな問題が出て来るだろう。やっぱり、一番の被害者は平民達だ。

「平民達は気の毒だけど、この真実が国に伝われば、今の王族を倒し、新たな国造りをする事ができるんじゃないかな?」
「そんな簡単に行きますか?」
「私が動けば良いのだろう?あぁ、勿論直ぐには動かないよ?精霊達が、仕返しを済んでからの方が良いんだろうから……」
「皇帝陛下の理解が早くて助かります」

4大精霊の怒りを買って、これから衰退の一途を辿るルテリアルを助ける国は無い。スネフェリングも然り。

そのうち、国内が荒れて王族を倒そうとする者達が出て来たところで、その者達をスネフェリングの皇帝陛下が支持をする。スネフェリング帝国には、精霊の加護を受けた私が居るから、私が居る国の王が支持をするなら、その者がルテリアルの王になる事が赦され、更に、精霊達も仕返しを終えるだろう──と言う事だ。

「精霊達も、スネフェリングがリディア様を保護して護ってくれた事は承知しているから、皇帝陛下が動いてくれれば、新しく立つであろう王や平民は、そこからまた立ち直れるかと……」

これから大変な事になるだろうルテリアル。でも、そんな話を聞いても、心が痛まない私は薄情者なのかもしれない。

「──と、暗い話はここ迄にして──次はリディアに関しての話を進めましょう」

と言ったのは大魔女オードリナ様。

「私?」
「そうよ。これからのリディアの話が一番重要なのよ」

ー国の一大事より重要な話ってある?無いよね?ー

「今回の話が知れ渡れば、リディアが加護持ちで、2人の妖精と契約まで結んだ上に白属性の魔力持ち。更には……この可愛いらしい容姿と来たら………」
「「「放っておかれる筈がない」」」
「はい?」

ー“可愛らしい容姿”とは?ー

「確かに……カミリアの時の暗い容姿よりはマシになったかもだけど、可愛らしいとまでは……」
「え?何を言ってるんだ?リディア様はカミリア様の時から可愛らしいからな!」
「はい???」

何故か、テオファーヌさんに、素の口調で突っ込まれた。



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

忌むべき番

藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」 メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。 彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。 ※ 8/4 誤字修正しました。 ※ なろうにも投稿しています。

私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください

迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。 アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。 断るに断れない状況での婚姻の申し込み。 仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。 優しい人。 貞節と名高い人。 一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。 細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。 私も愛しております。 そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。 「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」 そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。 優しかったアナタは幻ですか? どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。

私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?

きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。 しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……

【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる

kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。 いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。 実はこれは二回目の人生だ。 回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。 彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。 そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。 その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯ そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。 ※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。 ※ 設定ゆるゆるです。

【長編版】この戦いが終わったら一緒になろうと約束していた勇者は、私の目の前で皇女様との結婚を選んだ

・めぐめぐ・
恋愛
神官アウラは、勇者で幼馴染であるダグと将来を誓い合った仲だったが、彼は魔王討伐の褒美としてイリス皇女との結婚を打診され、それをアウラの目の前で快諾する。 アウラと交わした結婚の約束は、神聖魔法の使い手である彼女を魔王討伐パーティーに引き入れるためにダグがついた嘘だったのだ。 『お前みたいな、ヤれば魔法を使えなくなる女となんて、誰が結婚するんだよ。神聖魔法を使うことしか取り柄のない役立たずのくせに』 そう書かれた手紙によって捨てらたアウラ。 傷心する彼女に、同じパーティー仲間の盾役マーヴィが、自分の故郷にやってこないかと声をかける。 アウラは心の傷を癒すため、マーヴィとともに彼の故郷へと向かうのだった。 捨てられた主人公がパーティー仲間の盾役と幸せになる、ちょいざまぁありの恋愛ファンタジー長編版。 --注意-- こちらは、以前アップした同タイトル短編作品の長編版です。 一部設定が変更になっていますが、短編版の文章を流用してる部分が多分にあります。 二人の関わりを短編版よりも増しましたので(当社比)、ご興味あれば是非♪ ※色々とガバガバです。頭空っぽにしてお読みください。 ※力があれば平民が皇帝になれるような世界観です。

【完結】番が見ているのでさようなら

堀 和三盆
恋愛
 その視線に気が付いたのはいつ頃のことだっただろう。  焦がれるような。縋るような。睨みつけるような。  どこかから注がれる――番からのその視線。  俺は猫の獣人だ。  そして、その見た目の良さから獣人だけでなく人間からだってしょっちゅう告白をされる。いわゆるモテモテってやつだ。  だから女に困ったことはないし、生涯をたった一人に縛られるなんてバカみてえ。そんな風に思っていた。  なのに。  ある日、彼女の一人とのデート中にどこからかその視線を向けられた。正直、信じられなかった。急に体中が熱くなり、自分が興奮しているのが分かった。  しかし、感じるのは常に視線のみ。  コチラを見るだけで一向に姿を見せない番を無視し、俺は彼女達との逢瀬を楽しんだ――というよりは見せつけた。  ……そうすることで番からの視線に変化が起きるから。

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

この子、貴方の子供です。私とは寝てない? いいえ、貴方と妹の子です。

サイコちゃん
恋愛
貧乏暮らしをしていたエルティアナは赤ん坊を連れて、オーガスト伯爵の屋敷を訪ねた。その赤ん坊をオーガストの子供だと言い張るが、彼は身に覚えがない。するとエルティアナはこの赤ん坊は妹メルティアナとオーガストの子供だと告げる。当時、妹は第一王子の婚約者であり、現在はこの国の王妃である。ようやく事態を理解したオーガストは動揺し、彼女を追い返そうとするが――

処理中です...