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43 婚約
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どうやら、テオファーヌさんは目と頭がおかしいようだ。
「さっきも言ったけど、リディアは、精霊の怒りを買った国の王女とは言っても加護持ちだったエリアーヌの実子で、リディア本人も加護持ちときたら、絶対に色んな貴族達が手を出して来るわ。勿論、リディアの嫌がる事や危険に晒される事はないけど」
加護持ちの私の嫌がる事をしようものなら、仕返しが待っているから。
「もうリディアも22歳でしょう?王女だったのに婚約者もなくここ迄来た事が珍しい位だわ。年齢的に結婚していてもおかしくはないから、直ぐに婚約者候補が押し寄せる事になるのは確実ね」
私に婚約者なんて居る筈がない。
何年生きられるか─そんな毎日を送っていたのだから。そんな私に婚約者。でも、それは、私が加護持ちだから。そこに、きっと愛なんてないのだろう。少し意味合いは違うかもしれないけど、政略結婚みたいなものだろう。
「一応、王女として生まれた身だから、結婚相手に関して我儘を言うつもりはないけど、できる限り優しい人が良いです」
愛情がなくても、お互い尊敬し合える人が良い。贅沢な暮らしや豪華な贈り物なんて要らない。時々、私と話をしてくれたり、1輪だけでも良いから花をくれるような人が────
『カミリア様』
「…………」
ー何故、ここでテオファーヌさんの事が?ー
不思議に思いながらテオファーヌさんに視線を向けると、バチッと視線が合った。そのテオファーヌさんは、何となく怒っているような顔をしていた。
*テオファーヌ視点*
リディア様に婚約者──
俺は、それを傍から見ている事ができるのか?いや、できない自信がある。
「一応、王女として生まれた身だから、結婚相手に関して我儘を言うつもりはないけど、できる限り優しい人が良いです」
優しい男なら誰でも良いのか?そう言ったリディア様の目には“諦め”の色が見える。本来の自分を取り戻したからと言って、すぐに自分を変える事ができないのは仕方無い。自分がいかに可愛らしいかも分かっていないのだから。カミリア様だった頃から、城内の騎士達の間では密かに人気があった。汚点と呼ばれていたと知った上でだ。スネフェリングに於いて、魔力無しであっても気にする者は滅多に居ない。
だから、本来の自分に戻ったリディア様なら、釣書が殺到するのは明らかだ。
「その婚約者、私では駄目ですか?」
「はい?」
キョトンとして固まるリディア様──以外はニヤニヤと笑っている。
ーなるほど…何故俺がこの場に呼ばれたのか、ようやく分かったー
「私は、宰相のドラクレイ公爵の弟で、第一騎士団の副団長だから、リディア様を護れるし、誰にも反対されないでしょう?」
「だからと言って、テオファーヌさんがそんな事─」
「それよりも、何よりも、私が我慢できないから。リディア様の横に居るのが、私以外の男は我慢できないので」
「え??」
一瞬固まった後、ポンッと顔が真っ赤になったリディア様。嫌がっているようには見えなくてホッとする。
「そうね。テオファーヌがリディアの相手なら、誰にも文句は言われないわね。まぁ…後はリディアの気持ち次第ね。いくらテオファーヌが良い条件の相手だったとしても、リディアが嫌と言うなら論外だから」
「え……いや……でも……その………」
オードリナ様も意地が悪い。そんな言い方をすれば、リディア様が例え嫌だとしても断れない。俺は、無理矢理な事はしたくない。
「勿論、リディア様が嫌だと言うなら、形だけでも良いんです。お互い風除け程度にはなるでしょうから……」
「い───嫌じゃないんです!寧ろ、嬉し──い気持ちの方が大きいかもしれません!すみません!」
「何でリディアが謝るの?」
オードリナ様が笑いながらが突っ込むのも仕方が無い。リディア様の反応がいちいち可愛いのが悪い。
「“嬉しい”と言う事は、私と同じ気持ちだと捉えて良いと?」
「ゔっ………はい…多分……そうです……」
ーよし、言質は取ったー
「では、兄上、皇帝陛下、私がリディア様の婚約者になる事を、許していただけますか?」
「勿論、私は異存ないよ」
「私も異存ない。故に、早速婚約の手続きを進めよう」
宰相と皇帝陛下から許可が下りれば、婚約が調うのに時間は掛からないだろう──と思っていた通り、リディア様との婚約は数日のうちに調った。
リディア=ユーハルム
ルテリアル王国の王女としてではなく、エリアーヌ様の実家であるユーハルム伯爵家から、スネフェリング帝国のドラクレイ公爵の弟に嫁ぐ形となった。
リディア様とルテリアルの王族とは関係無い─と言う意味だ。
「こんなにも早く話が進むとは思ってなかった…」
「やっぱり、迷惑な話だった?」
「迷惑!?ちがっ……違うんです!その…こんなに良い事尽くしで良いのかな?って!」
「“良い事尽くし”………」
ー素直過ぎて可愛過ぎないか?ー
「“良い事”だと思ってくれてるなら、嬉しいです」
「ゔっ……恥ずかしい!」
真っ赤になった顔を両手で隠すリディア様の周りを、リーフとフェンが嬉しそうに飛び回っていた。
「さっきも言ったけど、リディアは、精霊の怒りを買った国の王女とは言っても加護持ちだったエリアーヌの実子で、リディア本人も加護持ちときたら、絶対に色んな貴族達が手を出して来るわ。勿論、リディアの嫌がる事や危険に晒される事はないけど」
加護持ちの私の嫌がる事をしようものなら、仕返しが待っているから。
「もうリディアも22歳でしょう?王女だったのに婚約者もなくここ迄来た事が珍しい位だわ。年齢的に結婚していてもおかしくはないから、直ぐに婚約者候補が押し寄せる事になるのは確実ね」
私に婚約者なんて居る筈がない。
何年生きられるか─そんな毎日を送っていたのだから。そんな私に婚約者。でも、それは、私が加護持ちだから。そこに、きっと愛なんてないのだろう。少し意味合いは違うかもしれないけど、政略結婚みたいなものだろう。
「一応、王女として生まれた身だから、結婚相手に関して我儘を言うつもりはないけど、できる限り優しい人が良いです」
愛情がなくても、お互い尊敬し合える人が良い。贅沢な暮らしや豪華な贈り物なんて要らない。時々、私と話をしてくれたり、1輪だけでも良いから花をくれるような人が────
『カミリア様』
「…………」
ー何故、ここでテオファーヌさんの事が?ー
不思議に思いながらテオファーヌさんに視線を向けると、バチッと視線が合った。そのテオファーヌさんは、何となく怒っているような顔をしていた。
*テオファーヌ視点*
リディア様に婚約者──
俺は、それを傍から見ている事ができるのか?いや、できない自信がある。
「一応、王女として生まれた身だから、結婚相手に関して我儘を言うつもりはないけど、できる限り優しい人が良いです」
優しい男なら誰でも良いのか?そう言ったリディア様の目には“諦め”の色が見える。本来の自分を取り戻したからと言って、すぐに自分を変える事ができないのは仕方無い。自分がいかに可愛らしいかも分かっていないのだから。カミリア様だった頃から、城内の騎士達の間では密かに人気があった。汚点と呼ばれていたと知った上でだ。スネフェリングに於いて、魔力無しであっても気にする者は滅多に居ない。
だから、本来の自分に戻ったリディア様なら、釣書が殺到するのは明らかだ。
「その婚約者、私では駄目ですか?」
「はい?」
キョトンとして固まるリディア様──以外はニヤニヤと笑っている。
ーなるほど…何故俺がこの場に呼ばれたのか、ようやく分かったー
「私は、宰相のドラクレイ公爵の弟で、第一騎士団の副団長だから、リディア様を護れるし、誰にも反対されないでしょう?」
「だからと言って、テオファーヌさんがそんな事─」
「それよりも、何よりも、私が我慢できないから。リディア様の横に居るのが、私以外の男は我慢できないので」
「え??」
一瞬固まった後、ポンッと顔が真っ赤になったリディア様。嫌がっているようには見えなくてホッとする。
「そうね。テオファーヌがリディアの相手なら、誰にも文句は言われないわね。まぁ…後はリディアの気持ち次第ね。いくらテオファーヌが良い条件の相手だったとしても、リディアが嫌と言うなら論外だから」
「え……いや……でも……その………」
オードリナ様も意地が悪い。そんな言い方をすれば、リディア様が例え嫌だとしても断れない。俺は、無理矢理な事はしたくない。
「勿論、リディア様が嫌だと言うなら、形だけでも良いんです。お互い風除け程度にはなるでしょうから……」
「い───嫌じゃないんです!寧ろ、嬉し──い気持ちの方が大きいかもしれません!すみません!」
「何でリディアが謝るの?」
オードリナ様が笑いながらが突っ込むのも仕方が無い。リディア様の反応がいちいち可愛いのが悪い。
「“嬉しい”と言う事は、私と同じ気持ちだと捉えて良いと?」
「ゔっ………はい…多分……そうです……」
ーよし、言質は取ったー
「では、兄上、皇帝陛下、私がリディア様の婚約者になる事を、許していただけますか?」
「勿論、私は異存ないよ」
「私も異存ない。故に、早速婚約の手続きを進めよう」
宰相と皇帝陛下から許可が下りれば、婚約が調うのに時間は掛からないだろう──と思っていた通り、リディア様との婚約は数日のうちに調った。
リディア=ユーハルム
ルテリアル王国の王女としてではなく、エリアーヌ様の実家であるユーハルム伯爵家から、スネフェリング帝国のドラクレイ公爵の弟に嫁ぐ形となった。
リディア様とルテリアルの王族とは関係無い─と言う意味だ。
「こんなにも早く話が進むとは思ってなかった…」
「やっぱり、迷惑な話だった?」
「迷惑!?ちがっ……違うんです!その…こんなに良い事尽くしで良いのかな?って!」
「“良い事尽くし”………」
ー素直過ぎて可愛過ぎないか?ー
「“良い事”だと思ってくれてるなら、嬉しいです」
「ゔっ……恥ずかしい!」
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