召喚から外れたら、もふもふになりました?

みん

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王都へ

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「王太子の命が関わる事が無い限り、決して動く事はない“影”が動いた。これの意味するところは?もしくは、その影は王太子ではなく、婚約者であるリナに付いていたのかもしれないわね」

アシーナさんは少し思案した後「ま、影については、今は置いといて─」と言い、更に話を進めた。


気を失った状態で邸に戻って来たリナティアさん。そのまま2日程眠り続けた。そして、目が覚めたかと思うと、ハラハラと涙を流しながら

「学校には行きたくない」
「もう、殿下とは無理です」
「ルーナに……会いたい……」

と、繰り返し呟いているそうだ。


『リナティアさん………』

「だから、無理強いはしないけど、ルーナも一緒に来てくれないかしら?」

『勿論、一緒に行きます!!』

“行かない”なんて選択肢はない!白狼もふもふの月属性万歳だ!遠慮無く私の力を発揮させていただきます!

「ふふっ。ルーナ、ありがとう。じゃあ、すぐに王都に行く準備をしましょうか」

『王都へは、何日位で行けるんですか?』

この世界の主な交通手段は馬車か馬。この東の森があるイスタンス領は国の端ではないが、王都からは少し離れた位置にある。1日…2日は掛かるんじゃないかなぁ?

「移動は、一瞬よ?」

『はい?いっしゅん?一週間??』

「ふふっ。ルーナ、私が何者なのか忘れた?」

そこには、不敵?に微笑むアシーナさん─東の森の魔女が居た。





******


『ふわぁー!!』


イスタンス領から王都へは、本当に………一瞬で来れました。
ファンタジー炸裂です。

王都に行く準備が整うと、アシーナさんに側に来るようにと言われ、アシーナさんの足元に寄り添うと、アシーナさんは静かに魔力を練り上げ始めた。すると、私の中に流れる魔力が反応するかのように、体中がゾワゾワと波打つ。すると、足下に幾つもの円が重なり合ったような文様が浮かび上がり、そこから一気に光が溢れた。

ーこれは……私がこの世界に来る時に見たモノと同じようなモノ─魔法陣だ!ー


そう思った瞬間、今回は落ちるような感覚ではなく、浮遊するような感覚に襲われ、ビックリしてギュッと目を瞑り、その浮遊感が無くなりゾワゾワした感じも無くなり、ゆるゆると目を開けると

「叔母上、来ていただき、ありがとうございます。ルーナもありがとう」

と、私の頭をワシャワシャと優しく撫でるリュークレインさんが居た。

どうやら、さっき展開させた魔法陣は、アシーナさんの家と、アリスタ邸この邸を繋ぐモノだったらしい。勿論、お互いの許可が無い限りいくら魔力を流しても繋がる事はない。特に緊急を要する場合でなければ使う事は無いし、実際、リュークレインさん達が避暑として東の森に来た時も馬車で来ていた。

今回は、姪を心配する叔母と、娘を心配する親として少しでも早く何とかしたい─と言う事で、魔法陣による転移となったのだった。

「私は先にお兄様達と話をしてくるから、ルーナは先にリナの所に行ってあげてくれる?」

『勿論です!』

と、私がコクコクと頷くと「それじゃあ、俺がリナの所まで案内するよ」と言うリュークレインさんと一緒に、私は先にリナティアさんの部屋へと向かった。

ちなみに、私の言っている事は、アシーナさんにしか聞こえていないようで、「白狼ルーナと意思疎通を図れるのは、魔女だからか?」と、リナティアさんとリュークレインさんは、少し残念そうだった。



「リナ、入るよ?」

リュークレインさんが、リナティアさんの部屋の扉をノックした後声を掛け、扉を開けて私を中へ促した後、自分も部屋の中へと入って来た。その入ってすぐの部屋には侍女らしき女の子が居た。

「リナは…寝室に居る?」

「はい。先程起きられまして、軽く食事をされています」

「そうか。この子が、リナが言っていた“ルーナ”だ。叔母上が連れて来てくれたんだ。後で、ルーナ用に果物を用意して来てくれ」

ー果物!?ー

嬉しくて自然と尻尾が揺れて、“お願いします”の意味を込めてペコリと軽く頭を下げると、

「──くっ……」
「──かわっ………」

と、リュークレインさんと侍女さんが小さく呻いた後、手で口を覆った。

「──失礼しました。えっと……リュークレイン様、それでは私は果物を用意して参りますので、リナティア様の事宜しくお願いします」

「あぁ、分かった。」

そして、その侍女さんに軽く頭を撫でられ、リュークレインさんにはしっかり撫でられた後、私はリナティアさんのいる寝室へと入って行った。


「ルーナ!!」

私の姿を確認したリナティアさんは、文字通りに転がるようにベッドから下りて来て私に抱きついて来た。
そのリナティアさんは、やっぱりポロポロと涙を流している。そんなリナティアさんを見ると、私の胸がキュッと痛くなる。

ー東の森では、笑っていたのにー

私は暫くの間、そのままリナティアさんに体を預けた。


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