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リナティアの願い
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*引き続き、アシーナ視点となります*
「王太子殿下。何を置いても、そのロゼリア=アークルハイン嬢を側に置きたいのであれば、我が姪でもあるリナティアを…自由にしてやって下さいませんか」
ヒュッ─と、息を呑んだのは兄だったか、王太子殿下だったか。
「アシーナ殿…今は、ルーナと言う白狼と水の精霊の話で、リナの話はまた後で……」
「失礼ながら、王太子殿下。まだアシーナにも伝えてはいなかったので、アシーナもまだ知らぬ事でありましたが…。既に、王太子殿下とリナティアの婚約に関しては“解消”に向かって動いております」
「なっ──!?」
ーえ?解消に動いてるの!?聞いてなかったけど!?ー
と、キッ─と横に居る兄を睨みつけると、「えへっ」みたいな顔で笑う兄。
ーいやいや、全く可愛くないからね?ー
聞いていなかったのは私だけではなく、王太子もだったようで、慌てるように父である国王陛下に「どうして!?」と、詰め寄っている。
「アデルバート、私が何も知らぬと思っているのか?」
「何も…とは?」
「アシーナ殿の言う通り、お前はリナティア嬢を蔑ろにし過ぎたのだ。お前は……リナティア嬢が王妃の元で教育を受けている間、何をしていた?」
「何を─────」
「もっと分かりやすく質問しようか?アデルバート。気を失い階段から落ちそうになったリナティア嬢を“影”が動き助けた時、お前は、何処で、何をしていた?」
「──何処で………な…に……を……っ!」
ようやく思い出したのか、王太子は一気に顔色を悪くさせた。その顔を見た国王陛下は、深いため息を吐いた。そうして黙った国王陛下の代わりに、また兄が話し出す。
「そう言う事です。リナティアは、あの日、生徒会室に行ったのですよ。それも、外で待機していた者に“どうぞ”と、許可を得て中に入ったそうですよ。あぁ、その、外で待機していた者は…王太子殿下とロゼリア嬢の仲を認めていた者だったようです。それで、どうしても……王太子殿下とロゼリア嬢の仲を、リナティアに見せつけたかったそうですよ?」
と、兄は知らない人が見れば、うっとり見惚れてしまいそうな程の綺麗な笑顔をしている。私にとっては、恐怖でしかないけど。
「あ……あれは……ちがっ………」
「違う?何が違うのでしょうか?2人きりで部屋に閉じ篭っていた事?2人が抱き合っていた事?それとも───キスをしていた事……ですか?」
「──なっ!!」
「それとも、リナティアが嘘をついているとでも?」
「そっ……その可能性もあるだろう!?」
あくまでも認めない王太子。
ー本当に……クズだわー
私だけではなく、国王陛下と兄もため息を吐く。
「アデルバート、私は言ったな?“リナティア嬢を助ける為に影が動いた”と。その意味が…分からぬのか?ならば、教えてやろう。お前の行動を、影は全て見ていたんだ。全て─な。それで、ロゼリア嬢の行動が気になった為に、私は影の1人をリナティア嬢に付けていたのだ。勿論、影の者達が私に対して嘘をつく事はない」
そこまで言われて、ようやく王太子が黙り込み、項垂れるようにして椅子に腰を下ろした。
「王妃から、学園での学友との付き合いについて、何度か注意を受けたであろう?お前は、それを悉く無視をしていたようだがな。まぁ……それ程迄に、お前はロゼリア嬢の事が好きだと言う事なんだろう?故に、私とアリスタ公爵は、その願いを叶えてやろうと思ったのだよ」
と、国王陛下が微笑んだ時
「陛下、失礼します」
と、王妃陛下がやって来た。
「あぁ、王妃、丁度良い時に来てくれたな」
国王陛下はスっと立ち上がり、王妃陛下の側へと行くと、王妃陛下に手を差し出しエスコートをし、自分の座っていた椅子の横に王妃陛下を座らせた。
そして、もう1人──アデルバートの妹のカミリア王女が居た。このカミリア王女は、友好関係である国へ留学して、今はこの国には居ない筈だった。
「どうして…カミリアが?」
と、兄であるアデルバートが不思議そうな顔をしている。
「お兄様、お久し振りですわね。と言っても……こんな形ではお会いしたくなかったのですけど……」
ニッコリ微笑む王女と、何も理解していない王太子。
ー本当に、この王太子は馬鹿だー
「アデルバート。お前は……廃嫡─廃太子となり、一代限りの領地無しの公爵とする。勿論……婚姻相手はロゼリア嬢だ。それ以外の者は認めない。その者以外を求めると言うならば、一代限りの公爵位も与えない。お前は平民に下り、ロゼリア嬢は修道院送りになる」
「そんな……父上!!」
「アデルバート、これは、リナティアが望んだ事よ」
王太子が父親である国王陛下に詰め寄ろうとした時、王妃陛下が口をはさんだ。
「リナティアが、“どうか、殿下には愛する人と幸せになって欲しい”と私に願ったのよ。貴方達の事は…一切責めたりもしなかったわ。だから、私から陛下に、貴方達2人の婚姻をお願いしたのよ。本来なら……二人共修道院送りにしたい位だったのだけれどね」
「王太子殿下。何を置いても、そのロゼリア=アークルハイン嬢を側に置きたいのであれば、我が姪でもあるリナティアを…自由にしてやって下さいませんか」
ヒュッ─と、息を呑んだのは兄だったか、王太子殿下だったか。
「アシーナ殿…今は、ルーナと言う白狼と水の精霊の話で、リナの話はまた後で……」
「失礼ながら、王太子殿下。まだアシーナにも伝えてはいなかったので、アシーナもまだ知らぬ事でありましたが…。既に、王太子殿下とリナティアの婚約に関しては“解消”に向かって動いております」
「なっ──!?」
ーえ?解消に動いてるの!?聞いてなかったけど!?ー
と、キッ─と横に居る兄を睨みつけると、「えへっ」みたいな顔で笑う兄。
ーいやいや、全く可愛くないからね?ー
聞いていなかったのは私だけではなく、王太子もだったようで、慌てるように父である国王陛下に「どうして!?」と、詰め寄っている。
「アデルバート、私が何も知らぬと思っているのか?」
「何も…とは?」
「アシーナ殿の言う通り、お前はリナティア嬢を蔑ろにし過ぎたのだ。お前は……リナティア嬢が王妃の元で教育を受けている間、何をしていた?」
「何を─────」
「もっと分かりやすく質問しようか?アデルバート。気を失い階段から落ちそうになったリナティア嬢を“影”が動き助けた時、お前は、何処で、何をしていた?」
「──何処で………な…に……を……っ!」
ようやく思い出したのか、王太子は一気に顔色を悪くさせた。その顔を見た国王陛下は、深いため息を吐いた。そうして黙った国王陛下の代わりに、また兄が話し出す。
「そう言う事です。リナティアは、あの日、生徒会室に行ったのですよ。それも、外で待機していた者に“どうぞ”と、許可を得て中に入ったそうですよ。あぁ、その、外で待機していた者は…王太子殿下とロゼリア嬢の仲を認めていた者だったようです。それで、どうしても……王太子殿下とロゼリア嬢の仲を、リナティアに見せつけたかったそうですよ?」
と、兄は知らない人が見れば、うっとり見惚れてしまいそうな程の綺麗な笑顔をしている。私にとっては、恐怖でしかないけど。
「あ……あれは……ちがっ………」
「違う?何が違うのでしょうか?2人きりで部屋に閉じ篭っていた事?2人が抱き合っていた事?それとも───キスをしていた事……ですか?」
「──なっ!!」
「それとも、リナティアが嘘をついているとでも?」
「そっ……その可能性もあるだろう!?」
あくまでも認めない王太子。
ー本当に……クズだわー
私だけではなく、国王陛下と兄もため息を吐く。
「アデルバート、私は言ったな?“リナティア嬢を助ける為に影が動いた”と。その意味が…分からぬのか?ならば、教えてやろう。お前の行動を、影は全て見ていたんだ。全て─な。それで、ロゼリア嬢の行動が気になった為に、私は影の1人をリナティア嬢に付けていたのだ。勿論、影の者達が私に対して嘘をつく事はない」
そこまで言われて、ようやく王太子が黙り込み、項垂れるようにして椅子に腰を下ろした。
「王妃から、学園での学友との付き合いについて、何度か注意を受けたであろう?お前は、それを悉く無視をしていたようだがな。まぁ……それ程迄に、お前はロゼリア嬢の事が好きだと言う事なんだろう?故に、私とアリスタ公爵は、その願いを叶えてやろうと思ったのだよ」
と、国王陛下が微笑んだ時
「陛下、失礼します」
と、王妃陛下がやって来た。
「あぁ、王妃、丁度良い時に来てくれたな」
国王陛下はスっと立ち上がり、王妃陛下の側へと行くと、王妃陛下に手を差し出しエスコートをし、自分の座っていた椅子の横に王妃陛下を座らせた。
そして、もう1人──アデルバートの妹のカミリア王女が居た。このカミリア王女は、友好関係である国へ留学して、今はこの国には居ない筈だった。
「どうして…カミリアが?」
と、兄であるアデルバートが不思議そうな顔をしている。
「お兄様、お久し振りですわね。と言っても……こんな形ではお会いしたくなかったのですけど……」
ニッコリ微笑む王女と、何も理解していない王太子。
ー本当に、この王太子は馬鹿だー
「アデルバート。お前は……廃嫡─廃太子となり、一代限りの領地無しの公爵とする。勿論……婚姻相手はロゼリア嬢だ。それ以外の者は認めない。その者以外を求めると言うならば、一代限りの公爵位も与えない。お前は平民に下り、ロゼリア嬢は修道院送りになる」
「そんな……父上!!」
「アデルバート、これは、リナティアが望んだ事よ」
王太子が父親である国王陛下に詰め寄ろうとした時、王妃陛下が口をはさんだ。
「リナティアが、“どうか、殿下には愛する人と幸せになって欲しい”と私に願ったのよ。貴方達の事は…一切責めたりもしなかったわ。だから、私から陛下に、貴方達2人の婚姻をお願いしたのよ。本来なら……二人共修道院送りにしたい位だったのだけれどね」
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