56 / 64
選んだ道
しおりを挟む美緒さん、樹君、アシーナさん達が浄化巡礼に出てから半年程経った。
一週間に一度は、アシーナさんか美緒さんから魔法による手紙が飛んで来る。その文字通りに手紙が本当に飛んでやって来るのだ。初めて目にした時はあまりにも感動し過ぎて、リュークレインさんに笑われた後「キョウコが可愛い」と言って、ガッツリ愛でられた。リュークレインさんの前では、うかうかと感動する事もできないなと学習しました。
モテモテ、ハイスペイケメンなリュークレインさんとの婚約。
「何処の馬の骨とも分からない貴方なんて!」
「平民如きが!」
「リュークレイン様は私のモノよ!」
なんて、突撃されるのでは!?なんて思ったりもしてたけど、そんな事は全く無かった。寧ろ、あらゆる貴族の家から続々とお祝いの品が届いているらしい。
ーん?不幸体質だった故に、“物足りない?”“ちょっぴり残念?”なんて思ってないですよ?ー
「平和が一番だよね?」
兎に角、浄化巡礼は順調に進んでいるとの事だった。
4人の聖女さん達が完璧に浄化をこなし、魔獣や魔物が出現しても、陽真と美緒さんと樹君をはじめ、騎士さんや魔導士さん達が問題無く対処していっているそうだ。怪我人は出ても、死人は出ていないようで本当に良かった。
このまま順調に行けば、後半年で終わるとの事だった。
浄化巡礼が終われば──
直ぐにではなく、数ヵ月空けてからになるけど、国をあげて、王太子であるカミリア王女の結婚式が執り行われる予定だ。
それが終わると、私とリュークレインさんとの結婚式も挙げる予定である。
「結婚かぁ………」
まさか、自分が異世界でこんなにも早く結婚するとは…。日本に居た頃は、陽真のお陰で恋愛の“れ”の字も無かったのに。
ー人生、どうなるかなんて、全く分からないよねー
「ん?もふもふな私でも……子供は………」
『できるわよ?』
「ひゃいっ!?」
またまたのウンディーネ様の登場である。
『キョウコは人間だから、普通に子供を生む事ができるわよ。白狼は、精霊が与えた加護の一種だから、キョウコの子が白狼─もふもふ?になる事もないわ』
「そうなんですね」
ー子供はもふもふじゃないのは……ちょっぴり残念ー
「ウンディーネ様、私に加護を与えて助けていただいて、本当にありがとうございました」
『どういたしまして』
ウンディーネ様はフワリと優しく微笑んだ。
この日、何故ウンディーネ様が現れたのか──その日の夜、リュークレインさんから聞いて分かった。
『彩香さんの処遇が決まったんですか?』
「聖女としての力を失って、体力が戻った後……3ヶ月位前だったかな?その頃に一度話し合いをしたんだ。これからどうするのか?と」
大森さんは召喚してやって来た者で、本来なら保護すべき対象ではあるが、聖女の力を精霊によって失った上、水の精霊と風の精霊の怒りも買っている為、王家としては無条件で保護する事が難しい事になってしまっていた。
風の精霊─シルフィード様からの最後通告以降はおとなしくなり、この世界について色々勉強もしていたそうで「美緒さんと私に、真摯に謝れば精霊の怒りも解けるのでは?」と謝罪を勧めたそうだが、大森さんはそれを拒否し、この世界で平民として生きて行く事を選んだそうだ。
幸い?大森さんは基本、理数系が得意で頭は良かった。その為、仕事を色々探してみた結果、王都から離れた街にある、とある商家の経理の職に就く事ができたそうだ。
『美緒達にも、アイツにも挨拶なんてしないわ』
と言って、今日、その商家のある街へと旅立ったらしい。
「それで、本当にサヤカが旅立ったのか、キョウコにまた手を出さないかと、ウンディーネ様が確認しにやって来ていたんだ」
『なるほど。だから、ウンディーネ様が私の所に来てくれたんですね』
「何も無くて良かった」
『…………』
はい。私は今、白狼の姿でリュークレインさんの膝の上に身を任せて、背中を撫で撫でしてもらってます。
『ふぅ───やっぱりリュークレインさんの手は……気持ち良いですね……』
「…………」
本当に気持ち良いから、いつもこのまま寝てしまい、翌朝は自分の部屋のベッドで目が覚める─が、ここ最近のルーティンになっている。
ー大森さんは、最後まで大森さんらしかったなぁー
やられた事は一生忘れないだろうし、赦す事もないだろうけど、なんとなく、そんな大森さんがいっその事清々しいなと思う。
ーそれに、今頃謝られても……ね……ー
と思いながら、今日もそのまま眠りに落ちた。
「そろそろ自覚してもらわないとな?」
と、リュークレインさんが楽しそうに囁いた声は、私の耳には届かなかった。
その事を後悔したのは、翌日の朝でした。
169
あなたにおすすめの小説
【長編版】この戦いが終わったら一緒になろうと約束していた勇者は、私の目の前で皇女様との結婚を選んだ
・めぐめぐ・
恋愛
神官アウラは、勇者で幼馴染であるダグと将来を誓い合った仲だったが、彼は魔王討伐の褒美としてイリス皇女との結婚を打診され、それをアウラの目の前で快諾する。
アウラと交わした結婚の約束は、神聖魔法の使い手である彼女を魔王討伐パーティーに引き入れるためにダグがついた嘘だったのだ。
『お前みたいな、ヤれば魔法を使えなくなる女となんて、誰が結婚するんだよ。神聖魔法を使うことしか取り柄のない役立たずのくせに』
そう書かれた手紙によって捨てらたアウラ。
傷心する彼女に、同じパーティー仲間の盾役マーヴィが、自分の故郷にやってこないかと声をかける。
アウラは心の傷を癒すため、マーヴィとともに彼の故郷へと向かうのだった。
捨てられた主人公がパーティー仲間の盾役と幸せになる、ちょいざまぁありの恋愛ファンタジー長編版。
--注意--
こちらは、以前アップした同タイトル短編作品の長編版です。
一部設定が変更になっていますが、短編版の文章を流用してる部分が多分にあります。
二人の関わりを短編版よりも増しましたので(当社比)、ご興味あれば是非♪
※色々とガバガバです。頭空っぽにしてお読みください。
※力があれば平民が皇帝になれるような世界観です。
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる
みおな
恋愛
聖女。
女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。
本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。
愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。
記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。
私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?
きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。
しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……
二周目聖女は恋愛小説家! ~探されてますが、前世で断罪されたのでもう名乗り出ません~
今川幸乃
恋愛
下級貴族令嬢のイリスは聖女として国のために祈りを捧げていたが、陰謀により婚約者でもあった王子アレクセイに偽聖女であると断罪されて死んだ。
こんなことなら聖女に名乗り出なければ良かった、と思ったイリスは突如、聖女に名乗り出る直前に巻き戻ってしまう。
「絶対に名乗り出ない」と思うイリスは部屋に籠り、怪しまれないよう恋愛小説を書いているという嘘をついてしまう。
が、嘘をごまかすために仕方なく書き始めた恋愛小説はなぜかどんどん人気になっていく。
「恥ずかしいからむしろ誰にも読まれないで欲しいんだけど……」
一方そのころ、本物の聖女が現れないため王子アレクセイらは必死で聖女を探していた。
※序盤の断罪以外はギャグ寄り。だいぶ前に書いたもののリメイク版です
出来損ないと言われて、国を追い出されました。魔物避けの効果も失われるので、魔物が押し寄せてきますが、頑張って倒してくださいね
猿喰 森繁
恋愛
「婚約破棄だ!」
広間に高らかに響く声。
私の婚約者であり、この国の王子である。
「そうですか」
「貴様は、魔法の一つもろくに使えないと聞く。そんな出来損ないは、俺にふさわしくない」
「… … …」
「よって、婚約は破棄だ!」
私は、周りを見渡す。
私を見下し、気持ち悪そうに見ているもの、冷ややかな笑いを浮かべているもの、私を守ってくれそうな人は、いないようだ。
「王様も同じ意見ということで、よろしいでしょうか?」
私のその言葉に王は言葉を返すでもなく、ただ一つ頷いた。それを確認して、私はため息をついた。たしかに私は魔法を使えない。魔力というものを持っていないからだ。
なにやら勘違いしているようだが、聖女は魔法なんて使えませんよ。
巻き込まれではなかった、その先で…
みん
恋愛
10歳の頃に記憶を失った状態で倒れていた私も、今では25歳になった。そんなある日、職場の上司の奥さんから、知り合いの息子だと言うイケメンを紹介されたところから、私の運命が動き出した。
懐かしい光に包まれて向かわされた、その先は………??
❋相変わらずのゆるふわ&独自設定有りです。
❋主人公以外の他視点のお話もあります。
❋気を付けてはいますが、誤字脱字があると思います。すみません。
❋基本は1日1話の更新ですが、余裕がある時は2話投稿する事もあります。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる