55 / 64
最後通告
しおりを挟む
『本当に……反省しないのね?』
頭の中に響くような声。
ヒュッ─と息を呑んだのは、私だったのか、陽真だったのか──。
そこに現れたのは水の精霊ウンディーネ──ではなく、風の精霊であるシルフィードだった。
『あのね?もう、本当にいい加減にしてくれない?これ以上、ウンディーネを怒らせないでくれる?何故、素直に反省できないの?』
風の精霊シルフィード。オパールグリーンのロングヘアと瞳をした、ほっそりとした小柄な女性。幼く見えるが、されど精霊。そこに立っているだけで圧が掛かり、身に纏う空気がピリピリと肌を刺激する。
『キョウコとリュークレインの婚約、婚姻は私達精霊も祝福しているの。もし、その2人に手を出すと言うのなら、私達も黙っていられないのよね』
ふふっ─と笑うシルフィードは、見ただけでは可愛らしい少女だ。ただ、身に纏っている空気は相変わらず圧が凄い為、ただの少女ではない事が分かる。
『それに、サヤカが私の愛しい子─ミオに今迄して来た事も本当は怒ってるのよ?ただ、ミオが“もう終わった事だから”と言うから見逃してあげてるだけなの。分かる?あぁ、ハルマもそうよ?ウンディーネがハルマに何もしないのは、キョウコが、もうハルマに対して何も思ってないからよ。良かったわね。でなければ、ウンディーネがハルマを見逃す事なんて有り得ないもの』
フワフワと笑うシルフィードに対して、彩香と陽真は微動だにせず─できずに、ただただシルフィードを見つめて立ち尽くす。
『お馬鹿な貴方達でも、これで理解した?貴方達自身の行ないは、必ず自分に返って来るわ。これが、最後通告よ。ここに、ウンディーネとサラマンダーが来なかった事を…感謝しなさい』
じゃあね─と言って、シルフィードは姿を消した。
「ははっ──最後通告か……俺はお前みたいに馬鹿な事はしない。この世界で、“剣士”の肩書きを失えば存在価値すら無くなるから。俺はお前とは違う。俺は浄化巡礼に出て、剣士として生きて行く。俺は……お前を置いていくんだ」
陽真はそれだけ言うと、その部屋から出て行った。
「うわー……本当に陽真はクズだ。しかも、ちっさい男だったわ……本当に………笑えないわ………」
それでも、本当に好きだった。
分かっていた。陽真が何故、アイツをずっと側に置きながら、私達と付き合っていたのか。全ては、アイツに嫉妬させるためだ。自分を見て欲しかったから。
でも、アイツは陽真を嫌っていた。それがまた更にムカついて……アイツに嫌がらせをしていた。その事に陽真は全く気付いていなかった。
「ホント、今思うとクズっぷりが半端無いわ。黒歴史じゃない?」
『自分の行ないは自分に返って来る』
『ハッキリ言うと、これから先、彩香がどう言う扱いになるかは分からないけど、楽観的な考えはしない方が良いと思う』
これから、私がどうなるかは分からないけど、きっと美緒の言う通り楽観的な扱いにはならないだろう。それでも──
「アイツに謝ったりなんて……しない………」
そう呟いた後、もう一度布団に潜り込んだ。
******
『これで、あの2人もおとなしくなるんじゃない?』
『これでならないなら、馬鹿を通り越して崇めてやろうか?』
『サラマンダー?面白い事を言うのね?ふふっ─』
「「「…………」」」
大森さんが目を覚まし対面したと聞いて、私は美緒さんと樹君に会いに来た。今日は、巡礼に出る前日で、挨拶をしたかったのもあったからだけど、3人で話をしていると、そこに、ウンディーネ様とシルフィード様とサラマンダー様もやって来た。
ー最近、出現率が高くないですか?ー
美緒さんも樹君も知らなかったようだけど、どうやら、大森さんと陽真がまたやらかしそうだった為に、シルフィード様が最後通告をしに行ったそうだ。「どうしてシルフィード様が?」と3人で首を傾げると─
『ウンディーネがキレると止められないし、サラマンダーは城を灰にしそうじゃない?私が一番マトモだもの』
悪戯っ子の様な顔をして笑うシルフィード様。
ーえ?やっぱり、ウンディーネ様が最強なんですか!?ー
『最強かどうかではなくて、ウンディーネが四大精霊の中で一番の年長者なのよ。次いで私、サラマンダー、ノームね』
ー精霊でも、年功序列!?ー
精霊が子を生む事は無い。それなりに寿命があるらしく、力が不安定になると、次代の精霊の魂を自ら創り出すそうだ。その魂には、過去の精霊の記憶が刻まれるが、全く別の個体として生まれて来る為、記憶を持ちつつも全く別人なのだそうだ。
しかも、今代のサラマンダー様は、先代のサラマンダー様がとある国を一晩で消失させて「それは流石にやり過ぎだろう」と、ある意味咎を受けて世代交代?して生まれて来たそうだ。だからなのか、基本、火の精霊は沸点が低いそうだけど、今代のサラマンダー様は、比較的おとなしい性格……らしい。
因みに、あと一人の地の精霊のノーム様は、滅多に人間の世界には出て来ないそうだ。
『ノームが加護を与えるとしたら……モグラじゃないかしら?と思っちゃうわ』
精霊の世界も…色々あんですね?
❋精霊達の設定は、独自の設定になります❋
頭の中に響くような声。
ヒュッ─と息を呑んだのは、私だったのか、陽真だったのか──。
そこに現れたのは水の精霊ウンディーネ──ではなく、風の精霊であるシルフィードだった。
『あのね?もう、本当にいい加減にしてくれない?これ以上、ウンディーネを怒らせないでくれる?何故、素直に反省できないの?』
風の精霊シルフィード。オパールグリーンのロングヘアと瞳をした、ほっそりとした小柄な女性。幼く見えるが、されど精霊。そこに立っているだけで圧が掛かり、身に纏う空気がピリピリと肌を刺激する。
『キョウコとリュークレインの婚約、婚姻は私達精霊も祝福しているの。もし、その2人に手を出すと言うのなら、私達も黙っていられないのよね』
ふふっ─と笑うシルフィードは、見ただけでは可愛らしい少女だ。ただ、身に纏っている空気は相変わらず圧が凄い為、ただの少女ではない事が分かる。
『それに、サヤカが私の愛しい子─ミオに今迄して来た事も本当は怒ってるのよ?ただ、ミオが“もう終わった事だから”と言うから見逃してあげてるだけなの。分かる?あぁ、ハルマもそうよ?ウンディーネがハルマに何もしないのは、キョウコが、もうハルマに対して何も思ってないからよ。良かったわね。でなければ、ウンディーネがハルマを見逃す事なんて有り得ないもの』
フワフワと笑うシルフィードに対して、彩香と陽真は微動だにせず─できずに、ただただシルフィードを見つめて立ち尽くす。
『お馬鹿な貴方達でも、これで理解した?貴方達自身の行ないは、必ず自分に返って来るわ。これが、最後通告よ。ここに、ウンディーネとサラマンダーが来なかった事を…感謝しなさい』
じゃあね─と言って、シルフィードは姿を消した。
「ははっ──最後通告か……俺はお前みたいに馬鹿な事はしない。この世界で、“剣士”の肩書きを失えば存在価値すら無くなるから。俺はお前とは違う。俺は浄化巡礼に出て、剣士として生きて行く。俺は……お前を置いていくんだ」
陽真はそれだけ言うと、その部屋から出て行った。
「うわー……本当に陽真はクズだ。しかも、ちっさい男だったわ……本当に………笑えないわ………」
それでも、本当に好きだった。
分かっていた。陽真が何故、アイツをずっと側に置きながら、私達と付き合っていたのか。全ては、アイツに嫉妬させるためだ。自分を見て欲しかったから。
でも、アイツは陽真を嫌っていた。それがまた更にムカついて……アイツに嫌がらせをしていた。その事に陽真は全く気付いていなかった。
「ホント、今思うとクズっぷりが半端無いわ。黒歴史じゃない?」
『自分の行ないは自分に返って来る』
『ハッキリ言うと、これから先、彩香がどう言う扱いになるかは分からないけど、楽観的な考えはしない方が良いと思う』
これから、私がどうなるかは分からないけど、きっと美緒の言う通り楽観的な扱いにはならないだろう。それでも──
「アイツに謝ったりなんて……しない………」
そう呟いた後、もう一度布団に潜り込んだ。
******
『これで、あの2人もおとなしくなるんじゃない?』
『これでならないなら、馬鹿を通り越して崇めてやろうか?』
『サラマンダー?面白い事を言うのね?ふふっ─』
「「「…………」」」
大森さんが目を覚まし対面したと聞いて、私は美緒さんと樹君に会いに来た。今日は、巡礼に出る前日で、挨拶をしたかったのもあったからだけど、3人で話をしていると、そこに、ウンディーネ様とシルフィード様とサラマンダー様もやって来た。
ー最近、出現率が高くないですか?ー
美緒さんも樹君も知らなかったようだけど、どうやら、大森さんと陽真がまたやらかしそうだった為に、シルフィード様が最後通告をしに行ったそうだ。「どうしてシルフィード様が?」と3人で首を傾げると─
『ウンディーネがキレると止められないし、サラマンダーは城を灰にしそうじゃない?私が一番マトモだもの』
悪戯っ子の様な顔をして笑うシルフィード様。
ーえ?やっぱり、ウンディーネ様が最強なんですか!?ー
『最強かどうかではなくて、ウンディーネが四大精霊の中で一番の年長者なのよ。次いで私、サラマンダー、ノームね』
ー精霊でも、年功序列!?ー
精霊が子を生む事は無い。それなりに寿命があるらしく、力が不安定になると、次代の精霊の魂を自ら創り出すそうだ。その魂には、過去の精霊の記憶が刻まれるが、全く別の個体として生まれて来る為、記憶を持ちつつも全く別人なのだそうだ。
しかも、今代のサラマンダー様は、先代のサラマンダー様がとある国を一晩で消失させて「それは流石にやり過ぎだろう」と、ある意味咎を受けて世代交代?して生まれて来たそうだ。だからなのか、基本、火の精霊は沸点が低いそうだけど、今代のサラマンダー様は、比較的おとなしい性格……らしい。
因みに、あと一人の地の精霊のノーム様は、滅多に人間の世界には出て来ないそうだ。
『ノームが加護を与えるとしたら……モグラじゃないかしら?と思っちゃうわ』
精霊の世界も…色々あんですね?
❋精霊達の設定は、独自の設定になります❋
175
あなたにおすすめの小説
巻き込まれではなかった、その先で…
みん
恋愛
10歳の頃に記憶を失った状態で倒れていた私も、今では25歳になった。そんなある日、職場の上司の奥さんから、知り合いの息子だと言うイケメンを紹介されたところから、私の運命が動き出した。
懐かしい光に包まれて向かわされた、その先は………??
❋相変わらずのゆるふわ&独自設定有りです。
❋主人公以外の他視点のお話もあります。
❋気を付けてはいますが、誤字脱字があると思います。すみません。
❋基本は1日1話の更新ですが、余裕がある時は2話投稿する事もあります。
【長編版】この戦いが終わったら一緒になろうと約束していた勇者は、私の目の前で皇女様との結婚を選んだ
・めぐめぐ・
恋愛
神官アウラは、勇者で幼馴染であるダグと将来を誓い合った仲だったが、彼は魔王討伐の褒美としてイリス皇女との結婚を打診され、それをアウラの目の前で快諾する。
アウラと交わした結婚の約束は、神聖魔法の使い手である彼女を魔王討伐パーティーに引き入れるためにダグがついた嘘だったのだ。
『お前みたいな、ヤれば魔法を使えなくなる女となんて、誰が結婚するんだよ。神聖魔法を使うことしか取り柄のない役立たずのくせに』
そう書かれた手紙によって捨てらたアウラ。
傷心する彼女に、同じパーティー仲間の盾役マーヴィが、自分の故郷にやってこないかと声をかける。
アウラは心の傷を癒すため、マーヴィとともに彼の故郷へと向かうのだった。
捨てられた主人公がパーティー仲間の盾役と幸せになる、ちょいざまぁありの恋愛ファンタジー長編版。
--注意--
こちらは、以前アップした同タイトル短編作品の長編版です。
一部設定が変更になっていますが、短編版の文章を流用してる部分が多分にあります。
二人の関わりを短編版よりも増しましたので(当社比)、ご興味あれば是非♪
※色々とガバガバです。頭空っぽにしてお読みください。
※力があれば平民が皇帝になれるような世界観です。
冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる
みおな
恋愛
聖女。
女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。
本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。
愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。
記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので
ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。
しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。
異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。
異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。
公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。
『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。
更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。
だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。
ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。
モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて――
奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。
異世界、魔法のある世界です。
色々ゆるゆるです。
恋愛は見ているだけで十分です
みん
恋愛
孤児院育ちのナディアは、前世の記憶を持っていた。その為、今世では恋愛なんてしない!自由に生きる!と、自立した女魔道士の路を歩む為に頑張っている。
そんな日々を送っていたが、また、前世と同じような事が繰り返されそうになり……。
色んな意味で、“じゃない方”なお話です。
“恋愛は、見ているだけで十分よ”と思うナディア。“勿論、溺愛なんて要りませんよ?”
今世のナディアは、一体どうなる??
第一章は、ナディアの前世の話で、少しシリアスになります。
❋相変わらずの、ゆるふわ設定です。
❋主人公以外の視点もあります。
❋気を付けてはいますが、誤字脱字が多いかもしれません。すみません。
❋メンタルも、相変わらず豆腐並みなので、緩い気持ちで読んでいただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる