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お祝い
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それから、姉はずっと側に居てくれた。何度かエメリーが来てくれたのは覚えているけど、父と母が来てくれる事はなかった。
『そろそろ…部屋に帰るわね』
3日経って、ようやく熱が下がって体が楽になった頃、姉はそれだけ言うと、私の部屋から出て行ってしまった。
そんな姉に「行かないで」とは言えなかった。
ずっと握ってくれていた左手を見つめる。いつ目が覚めても姉が居た。夢の中でうなされていると『大丈夫だよ』と、優しい声が聞こえた。
「お姉さま……ありがとう……」
私は小さい声で呟いた。
その日の夜─
まだまだ体が怠かったけど、父と母に『家族で一緒にお祝いよ!』と言われ、何の祝い事なのかも分からず、久し振りに5人で夕食をとる事になった。エメリーからは、『無理はしない方が良いですよ』と、心配されたけど、私は『大丈夫』と言って、4人の待つ食堂へと向かった。
「リンディの身体が、光の魔力に耐えれるようになってきてるんですって!昨日の検診で言われたのよ。」
私が食堂に入った瞬間、母が嬉しそうに私に教えてくれた。
「ここ数ヵ月は、特に体調を崩すこともなかったかしな。良かった良かった」
父も嬉しそうに頷いている。
「ねえさま、またいっぱいあそんでね!」
弟も、リンディに嬉しそうに甘えている。
4人はとても嬉しそうだ。
でも、私にとって、その会話は、私の心を抉るのには……十分だった。
その時の食事の味は、よく覚えていない。どれもこれも全てがリンディの好きな物ばかりだった。勿論、私だって嫌いではない。嫌いではないけど、3日間寝込んでいる間に口にしたのは水だけだった。そんなお腹に、急にお肉なんて入れる事はできない。美味しそうにも見えなかった。なんとか食べられたのは、サラダとスープとパンだけ。それでも、気持ちが悪いのを我慢して何とか食べた。
そして、デザートに出て来たのは、ベリーたっぷりのパイ。リンディの一番のお気に入りだ。
ただ、私がベリーが嫌いなだけ。
食事も半分以上食べられず、ベリーパイにも手をつけようとしない私を見た父が─
「エヴィ、何故ちゃんと食べない?今日はお祝いだと言っただろう?お前は、双子の妹のリンディが、元気になる事を祝えないのか?」
口調はキツくなく、寧ろ優しいし位だけど、目は笑ってなくて突き刺すように私を見ている。
「エヴィは、最近はよくエメリーとお菓子作りをしていると言っていたから、お菓子を食べ過ぎたのではないの?ね?そうよね?これからは、気を付けましょうね」
母がそう言って、私のフォロー?をしてくれると、父は少し訝しげにしながらも「仕方無いな。これからは気を付けなさい」と、最後には笑っていた。
ーあぁ、父と母は、私を見てくれてはいなかったのかー
その時、私はストンと何かが腑に落ちた。
私は良い子──
手の掛からない子──
見ていなくても大丈夫な子───
嫌われているわけじゃない。虐げられてもいない。ただ─
私を見ていないだけ──
キュゥッとお腹が痛くなり、目の前がグニャッと歪んだようになり、私はそこで意識を失った。
******
双子の妹のリンディは、光の魔力持ち。
基本、魔力は1人に1つしかないが、希に2つ持つ者も居る。私─エヴィも2つ持っていた。それが──
「魔力が……無くなってる?」
私が倒れた後、そのまま2日眠り続けたそうだ。なかなか目覚めない為、いつもリンディを診てくれている医師が私を診察した結果、私から魔力が無くなっている事が分かった。正しくは、微かに魔力は流れてはいるが、使える程は無い為、使う事はできないだろう─と言う事だった。
「高熱が出たりして、そのまま放っておいたりした時によく起こる事ですが、心当たりは?」
と、その医師が母に訊ねたそうだが『この子は健康で、滅多に熱を出したりしませんから…』と、答えたそうだ。
そして、高熱を出したからなのか、魔力が無くなってしまったからなのか──
ピンクブロンド色の私の髪色が、瞳と同じような琥珀色に変わってしまっていた。
『そろそろ…部屋に帰るわね』
3日経って、ようやく熱が下がって体が楽になった頃、姉はそれだけ言うと、私の部屋から出て行ってしまった。
そんな姉に「行かないで」とは言えなかった。
ずっと握ってくれていた左手を見つめる。いつ目が覚めても姉が居た。夢の中でうなされていると『大丈夫だよ』と、優しい声が聞こえた。
「お姉さま……ありがとう……」
私は小さい声で呟いた。
その日の夜─
まだまだ体が怠かったけど、父と母に『家族で一緒にお祝いよ!』と言われ、何の祝い事なのかも分からず、久し振りに5人で夕食をとる事になった。エメリーからは、『無理はしない方が良いですよ』と、心配されたけど、私は『大丈夫』と言って、4人の待つ食堂へと向かった。
「リンディの身体が、光の魔力に耐えれるようになってきてるんですって!昨日の検診で言われたのよ。」
私が食堂に入った瞬間、母が嬉しそうに私に教えてくれた。
「ここ数ヵ月は、特に体調を崩すこともなかったかしな。良かった良かった」
父も嬉しそうに頷いている。
「ねえさま、またいっぱいあそんでね!」
弟も、リンディに嬉しそうに甘えている。
4人はとても嬉しそうだ。
でも、私にとって、その会話は、私の心を抉るのには……十分だった。
その時の食事の味は、よく覚えていない。どれもこれも全てがリンディの好きな物ばかりだった。勿論、私だって嫌いではない。嫌いではないけど、3日間寝込んでいる間に口にしたのは水だけだった。そんなお腹に、急にお肉なんて入れる事はできない。美味しそうにも見えなかった。なんとか食べられたのは、サラダとスープとパンだけ。それでも、気持ちが悪いのを我慢して何とか食べた。
そして、デザートに出て来たのは、ベリーたっぷりのパイ。リンディの一番のお気に入りだ。
ただ、私がベリーが嫌いなだけ。
食事も半分以上食べられず、ベリーパイにも手をつけようとしない私を見た父が─
「エヴィ、何故ちゃんと食べない?今日はお祝いだと言っただろう?お前は、双子の妹のリンディが、元気になる事を祝えないのか?」
口調はキツくなく、寧ろ優しいし位だけど、目は笑ってなくて突き刺すように私を見ている。
「エヴィは、最近はよくエメリーとお菓子作りをしていると言っていたから、お菓子を食べ過ぎたのではないの?ね?そうよね?これからは、気を付けましょうね」
母がそう言って、私のフォロー?をしてくれると、父は少し訝しげにしながらも「仕方無いな。これからは気を付けなさい」と、最後には笑っていた。
ーあぁ、父と母は、私を見てくれてはいなかったのかー
その時、私はストンと何かが腑に落ちた。
私は良い子──
手の掛からない子──
見ていなくても大丈夫な子───
嫌われているわけじゃない。虐げられてもいない。ただ─
私を見ていないだけ──
キュゥッとお腹が痛くなり、目の前がグニャッと歪んだようになり、私はそこで意識を失った。
******
双子の妹のリンディは、光の魔力持ち。
基本、魔力は1人に1つしかないが、希に2つ持つ者も居る。私─エヴィも2つ持っていた。それが──
「魔力が……無くなってる?」
私が倒れた後、そのまま2日眠り続けたそうだ。なかなか目覚めない為、いつもリンディを診てくれている医師が私を診察した結果、私から魔力が無くなっている事が分かった。正しくは、微かに魔力は流れてはいるが、使える程は無い為、使う事はできないだろう─と言う事だった。
「高熱が出たりして、そのまま放っておいたりした時によく起こる事ですが、心当たりは?」
と、その医師が母に訊ねたそうだが『この子は健康で、滅多に熱を出したりしませんから…』と、答えたそうだ。
そして、高熱を出したからなのか、魔力が無くなってしまったからなのか──
ピンクブロンド色の私の髪色が、瞳と同じような琥珀色に変わってしまっていた。
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