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異母姉
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苦しい────
今迄、記憶の中にある私が罹った病気は……腹痛くらいだった。そんな私が熱を出して倒れた。倒れた記憶は無いけど、頭がフラフラして朝食があまり食べられずに残してしまい、父に注意されて──と、そこで記憶が途切れているから、多分そこで気を失って倒れたんだろう。目が覚めると、自分の部屋のベッドの中だった。
体中が熱くて重たくて動けない。息をするたびに、少し喉がヒューヒューと鳴っていて息苦しい。
ーリンディは、いつもこんな苦しい思いをしているの?ー
いつも、熱を出して寝込むリンディが羨ましかった。熱を出すと、母が側に居てくれるし、仕事で忙しい筈の父も早く帰って来るから。でも──熱を出す事が、こんなに苦しくて辛いなんて思わなかった。
「リンディ…ごめんなさい。ズルいとか……羨ましいなんて……言って……ごめんなさい……。リンディの体が……元気に……丈夫になっなら……良いのに………」
ポロポロ泣きながら、心の中でリンディに謝って、リンディが元気になる事を祈った。
『──それが、エヴィの願い?』
「……おかあ……さま?」
とても、優しい声だった。母が、私の側に来てくれたのかと思って、重たい目蓋を開けても、そこには誰も居なかった。
「…おかあさま……」
呼んでも誰も来てくれない。ひょっとしたら、リンディも熱を出しているのかもしれない。
“良い子は我慢しなきやいけない”
私は布団をギュッと握って潜り込んで、そのまま苦しさに耐え続けた。
ピチャリ─
ーあぁ……気持良いー
1人で苦しさを耐えていると、ふとオデコにひんやりとした気持ち良い何かが乗せられた。
「まだ熱いね?大丈夫かなぁ?」
それは、母ではない、聞き慣れない女の子のような声だった。
また、ゆっくりと目蓋を開けると、そこには─
肩下まである金髪に、クリッとした碧眼の女の子が、心配そうな顔をして私の顔を覗き込んでいた。
「……おね……えさま?」
「私の事、覚えてたの?」
忘れていた訳じゃない……。ただ──
この姉とは、母が違う─異母姉。この姉は、私の父と前妻─フリージア様との間に生まれた子だ。そのフリージア様とは政略結婚だったそうだ。フリージア様は、姉─ジェマを生んだ後体調を崩して、そのまま亡くなってしまった。
父は1年間喪に服した後、私の母─ポーリーンと再婚し、双子の私達と弟のサイラスを生んだのだ。
この姉は──
私達はブルーム伯爵邸の本邸に住んでいるが、姉だけは敷地内にある別邸に住んでいる。
『どうして、お姉さまだけちがう所にいるの?』
と、母に一度訊いた事がある。
『私が本当の母親じゃないから、嫌なのかもしれないわね。』
母があまりにも悲しそうな顔をしていたから、私もそれ以上は何も訊けなかったし、言える事もなくて、姉の事はそれきりになっていた。
それでも、別邸とは言え同じ敷地内に住んでいるから、時折遠目ではあるが、姉の姿を目にする事もあった。遠目からでも分かる綺麗な金色の髪が、太陽の光を浴びて更にキラキラと輝いていた。そんな輝いている髪とは違って、姉はいつも寂しそうな顔をしていて、私はそんな姉の事が、少し気になっていたのだ。
気にしていただけで、何もしなかったけど──
「ねえ…さま。ど…して……ここに?」
「ん?どうして?って………。エヴィが寝込んでて……1人だって聞いて……。大丈夫?何か……飲む?飲める?」
“ひとり”
ーそうか。やっぱり、誰も来てはくれなかったんだー
倒れてからどれ位経ったのかも分からない。それでも、眠っている時に、母が来てくれていたかもしれないと思っていた。
「熱い?もっと、冷たいので冷した方が良い?」
今迄殆ど接点の無かった姉が、泣きそうな顔をしながら私に声をかけてくれる。そんな姉が…姉の優しさが嬉しくて泣いてしまうと、更に姉が慌てて私の手をギュッと握ってくれた。
「ねえ…さま。ずっと……側にいてくれる?」
そう言うと、姉は一瞬ビックリしたように大きく目を見開いた後、私の手を更にギュッと握った後「もちろんよ!」と、優しく微笑んでくれた。
❋すみません。このお話とは関係ありませんが、【もふもふ】の閑話を“置き場”に投稿しました。時間があれば、覗いて見て下さい❋
(>﹏<)💦
今迄、記憶の中にある私が罹った病気は……腹痛くらいだった。そんな私が熱を出して倒れた。倒れた記憶は無いけど、頭がフラフラして朝食があまり食べられずに残してしまい、父に注意されて──と、そこで記憶が途切れているから、多分そこで気を失って倒れたんだろう。目が覚めると、自分の部屋のベッドの中だった。
体中が熱くて重たくて動けない。息をするたびに、少し喉がヒューヒューと鳴っていて息苦しい。
ーリンディは、いつもこんな苦しい思いをしているの?ー
いつも、熱を出して寝込むリンディが羨ましかった。熱を出すと、母が側に居てくれるし、仕事で忙しい筈の父も早く帰って来るから。でも──熱を出す事が、こんなに苦しくて辛いなんて思わなかった。
「リンディ…ごめんなさい。ズルいとか……羨ましいなんて……言って……ごめんなさい……。リンディの体が……元気に……丈夫になっなら……良いのに………」
ポロポロ泣きながら、心の中でリンディに謝って、リンディが元気になる事を祈った。
『──それが、エヴィの願い?』
「……おかあ……さま?」
とても、優しい声だった。母が、私の側に来てくれたのかと思って、重たい目蓋を開けても、そこには誰も居なかった。
「…おかあさま……」
呼んでも誰も来てくれない。ひょっとしたら、リンディも熱を出しているのかもしれない。
“良い子は我慢しなきやいけない”
私は布団をギュッと握って潜り込んで、そのまま苦しさに耐え続けた。
ピチャリ─
ーあぁ……気持良いー
1人で苦しさを耐えていると、ふとオデコにひんやりとした気持ち良い何かが乗せられた。
「まだ熱いね?大丈夫かなぁ?」
それは、母ではない、聞き慣れない女の子のような声だった。
また、ゆっくりと目蓋を開けると、そこには─
肩下まである金髪に、クリッとした碧眼の女の子が、心配そうな顔をして私の顔を覗き込んでいた。
「……おね……えさま?」
「私の事、覚えてたの?」
忘れていた訳じゃない……。ただ──
この姉とは、母が違う─異母姉。この姉は、私の父と前妻─フリージア様との間に生まれた子だ。そのフリージア様とは政略結婚だったそうだ。フリージア様は、姉─ジェマを生んだ後体調を崩して、そのまま亡くなってしまった。
父は1年間喪に服した後、私の母─ポーリーンと再婚し、双子の私達と弟のサイラスを生んだのだ。
この姉は──
私達はブルーム伯爵邸の本邸に住んでいるが、姉だけは敷地内にある別邸に住んでいる。
『どうして、お姉さまだけちがう所にいるの?』
と、母に一度訊いた事がある。
『私が本当の母親じゃないから、嫌なのかもしれないわね。』
母があまりにも悲しそうな顔をしていたから、私もそれ以上は何も訊けなかったし、言える事もなくて、姉の事はそれきりになっていた。
それでも、別邸とは言え同じ敷地内に住んでいるから、時折遠目ではあるが、姉の姿を目にする事もあった。遠目からでも分かる綺麗な金色の髪が、太陽の光を浴びて更にキラキラと輝いていた。そんな輝いている髪とは違って、姉はいつも寂しそうな顔をしていて、私はそんな姉の事が、少し気になっていたのだ。
気にしていただけで、何もしなかったけど──
「ねえ…さま。ど…して……ここに?」
「ん?どうして?って………。エヴィが寝込んでて……1人だって聞いて……。大丈夫?何か……飲む?飲める?」
“ひとり”
ーそうか。やっぱり、誰も来てはくれなかったんだー
倒れてからどれ位経ったのかも分からない。それでも、眠っている時に、母が来てくれていたかもしれないと思っていた。
「熱い?もっと、冷たいので冷した方が良い?」
今迄殆ど接点の無かった姉が、泣きそうな顔をしながら私に声をかけてくれる。そんな姉が…姉の優しさが嬉しくて泣いてしまうと、更に姉が慌てて私の手をギュッと握ってくれた。
「ねえ…さま。ずっと……側にいてくれる?」
そう言うと、姉は一瞬ビックリしたように大きく目を見開いた後、私の手を更にギュッと握った後「もちろんよ!」と、優しく微笑んでくれた。
❋すみません。このお話とは関係ありませんが、【もふもふ】の閑話を“置き場”に投稿しました。時間があれば、覗いて見て下さい❋
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