(自称)我儘令嬢の奮闘、後、それは誤算です!

みん

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『あの黒い影は、悪いモノなの』

『アレを祓えるのは、──だけ』

『私はいつも側に居るから──』



そう言った彼女は、少し寂しそうに微笑んだ。




─────






「……エヴィ………」

「──あれ?私………」

「気を失っていたんですよ。少しだけですけどね」

「え?あ、お姉様は──」

と、目の前で寝ている姉を見ると、先程とは違って穏やかな寝顔で、呼吸も落ち着いている。
エメリーとアリスはソファーに座って眠っている。

呼んでくれましたね?」

「ごめんなさい」

姉の眠るベッドサイドに座っている私の横に居るのは“ライラ”。サイラスが生まれる前迄は、私が寂しいなと思った時に、気が付けば側に居てくれた人──だけど、今なら分かる。

ライラは人間ひとではない。

「私、幼い頃の記憶が曖昧で……」

「それは…仕方無い事です。私の存在が、脆いものでしたから」

ーあぁ、やっぱりそうかー

「ライラ、あなたは……」

「私は、“闇”を司る者です。」

“闇”

それは、“光”とは反する魔力ではあるが、決して“悪”と言う訳ではない。“闇があっての光”であり、“光あっての闇”なのだ。

光は、人を物理的にも精神的にも癒す力がある。呪いに関しては、表に出ているモノを浄化できても、根本的なモノを浄化する事迄はできない。

闇は、癒す力は無いが、穢れや影を祓う事ができる。呪いを解く事、返す事もできる。

ライラは、その闇を司る者と言った─闇の精霊──。

「「…………ぷっ───」」

と、2人同時に、思わず吹き出した。

「エヴィ?そろそろ、この畏まった口調、止めていい?」

「ふふっ。勿論。少し……いえ、かなり違和感があるから、止めて欲しいって思っていたところよ」

ライラは、最後に5年程前に見た時と全く変わっていない姿で立っている。長い黒い髪を後ろに一つで纏めていて、眼鏡を掛けている。その眼鏡の奥には、漆黒の闇夜のような黒い瞳がある。服装は、昔も今も、何故かブルーム家の侍女の服を着ている。昔は、そんなライラを見て、本当に我が家の侍女だと思っていた。その割には、口調がだったけど。

「ここは、なのね」

と、ライラは私と姉を見てから呆れたような口調で言う。

「理由は後で訊くけど、エヴィ、私の闇の魔力を受け取ってくれる?」

「────え?」

「だって、エヴィから水と風の魔力が消えてるんだもの。私、心配し過ぎて倒れちゃうかもよ?だから、私が倒れない為にも、私の魔力を受け取ってもらわないとね?」

「えっと……それは、とても嬉しい申し出なんだけど……でも……」

私が闇の魔力持ちだと、父や母が知ったらどうなる?それでも、リンディを優先する?私に手の平を返したような態度になる?どちらになっても、不快感しかない。

「大丈夫よ。闇の魔力はのが得意なの。だから、私の存在も儚い─脆いのよ」

「そうなの?」

「うん。だからね、エヴィが闇の力を持ったところで、誰もその事には気付かない。光の魔力持ちのリンディでさえね」

それには驚いた。光と闇は、いわば持ちつ持たれつみたいな関係ではないんだろうか?なら、お互い分かると思っていたけど…。

「うーん…言い方が悪かったかなぁ?光持ちなら気付いてもおかしくはないんだけど、リンディには、分からないみたい。リンディが、私の存在に事が一度も無かったから」

ーえ?それって大丈夫なの?ー

思わず眉間に皺が寄ってしまった。でも…それなら……

「ライラ、もし、その闇の魔力を受ければ……今回みたいな事がまた起こった時に、またお姉様を助ける事ができる?」

今回の姉の発熱は、ただの病気じゃなかった。あの影のせいだ。のだ。

「勿論、助ける事はできるわ。闇持ちは、悪意や悪しきものが目に視えるから」

ライラは、そう言いながら不敵に笑い、ソッと姉の喉元に手をあてると、僅かに残っていた黒い影が霧散した。

「エヴィは、ジェマを助けたいのね?」
「助けたい──幸せになって欲しいの。お姉様は、私に“嬉しい”や“優しさ”をくれたから」

「──そう。なら、私の闇の魔力はとっても役に立つわよ?その代わり、私をエヴィの側に居させてもらうわよ?もうね、エヴィに呼ばれなかったこの5年?は暇だったのよ」

ー“暇”って…精霊がそんな事言っちゃって良いの?ー

「ふふっ。ライラは、相変わらず変わってるね?」

「そうね、変わってる自覚はあるし、楽しい事は大好きよ?あ、一番好きなのはエヴィだからね?」

「ゔっ……恥ずかしい…けど、ありがとう、ライラ」

「それじゃあ、皆が寝ている間に、サクッとやっちゃうわね」

と、ライラが右手を上げて黒色の光が現れると、私は意識を失った。



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